再会
「おぉ〜これが王都かぁ……!」
軌道上を走る鉄の塊、いわゆる鉄道の旅客列車がトンネルから出た直後に窓から飛び込んできた景色を見て思わずつぶやく。
見渡す限りの建物に所々立っている高い建造物、そして極め付けは遥か遠くに見える、王城とそれに付随する王立学院や図書館などの建築物群。
全てが私たちが住んでいたところとは全く違ったものだった。
「さて、もうそろそろで駅だ。降りる準備をするぞ」
『はーい』
と言っても荷物とかは必要最低限のものばかりだ。
何かいるってなったら収納魔法陣に入れた奴を使うしな。
収納魔法陣とは大昔に失われた技術の一つで、多くのものを魔法陣に収納することの出来る優れもの。
だが失われた技術を扱うものなどいるはずもなく、この世界で使える者は一人とていなかったらしい。
私が使うまでは。
ちなみに父さんと母さん、ルナには収納魔法陣についてはやり方を教えているから使える。
3人とも魔法の扱いが上手だったからすぐに習得した。
だがハルは……まぁまだ小さいしそもそもそれの練習をし始めたのも最近だし、仕方ない。筋が良いしもうそろそろ出来ると思うが。
だからハルの分は私が持っている。
お姉ちゃんは弟には甘いんだよ、これ世の真理。
『はぁ!? 姉貴が入れてって言ったから入れたんじゃんか!』
『私はそんな事言ってませーん! バーカ!」
遠くで姉弟が喧嘩しているのは見なかったことにしよう。
数分して着いた駅で降りた私達は目の前に広がる景色に圧倒されていた。
「すげぇな……これ」
多くの建物が立ち並んでおり、多くの人が行き交っていた。
店もいっぱいあり、目移りしてしまう。
これが王都……聞いていた以上だ。
「よし、じゃぁもう時間もいいぐらいだし、飯でも行こうか」
というわけでまず昼ごはんを食べに向かった。
「あの店まだやってるみたいだし、俺のおすすめの店に行こうか」
どうやら父さんの行きつけの店があるようだ。
駅を出て目の前に広がる大通りの途中で小道へ入り、見えて来たのは少し古ぼけた様子の店だった。
店の扉を開け中に入ると不機嫌そうな顔でタバコを吸っているやや小太り、もじゃもじゃ髭の男が椅子に座って電子端末で何かを読んでいた。
「おっす、オジキ。元気にしてるか?」
「あぁ?誰だお前……って、お前ゼニスか! 久しぶりだなぁ!」
オジキと呼ばれた男が父さんの顔を見た瞬間電子端末をほっぽり投げ、駆け寄る。
「ハハハハ、オジキも元気そうで何よりだ」
久々の再会なのだろう、2人は熱く抱き合った。
母さんが生暖かい目で2人を見ていたが、大丈夫だと思うぞ母さん。父さんにそっちの気はないはずだ。
じゃなきゃ母さんと結婚してないぞ。
「コイツらが俺の家族だ」
「おぉ! フリーナじゃねぇか! 久々だなぁ、いやぁ随分見違えて……」
「いやいや、オジキさんも前とお変わりなく……」
オジキって叔父貴とかじゃなくて、名前かよ。
オジキさんが私たちの方を見て不思議そうな顔をする。
「あ、長女のリーシャです」
「次女のルナです!」
「長男のハルです」
「おう!俺はゼニスのダチのオジキだ。よろしくな。俺のことはオジキって言ってくれ」
「じゃぁオジキ。よろしく」
「適応はや」
などとノリに乗ってくれたりしてくれる。
父さんの知り合いは今のところ10人弱しか知らないが全員良い人ばかりだ。
「うい、じゃぁアレだ。いつもの頼む」
「了解、じゃぁちょっと待っててくれ」
そう言ってオジキはドスドスと音を立てて厨房に入って行った。
父さんがオジキが放り投げてた電子端末を手に取り新聞を読む。
勝手に触って良いのかな……。
「ふむ…………ん?……なんだ王子様と王女様がまた脱走したって話か。いつも通りだな」
いつも通りじゃまずいだろそれは。
「特に何事もなくても平和だな」
「王子と王女が脱走するのが平和なら平和だろうな」
「だな」
それで良いのかハイゼラード王国、とは思うがまぁその程度の事しかニュースにならないというのなら平和なんだろうな。
実際ここ数十年は国家間の戦争らしい戦争も起こしていない平和な国だ。
強いていうなら20年弱前にあったハイゼラード大戦と呼ばれる、領土侵略を図った異種族との争いぐらいだろう。
十分ほどしてオジキが料理を持って来てくれた。
肉がゴロゴロと入ったビーフシチューとパンだ。
「父さんはいつも来る時はこれ食べてるの?」
「いや、来るのは初めてだ」
初めてんなんかいぃ!
『いただきまーす』
パンを千切ってビーフシチューに少し付けて食べる。
味はいかほどに……。
「うまっ」
思わず声に出すほど美味しかった。
見た目の割にやるじゃんオジキさんよ。
鍛冶屋でもやってそうな見た目だってのに出てきた料理のおいしさは今まで食べた物の中でも随一だった。
「見た目の割に美味しいもん作るじゃんって顔だな嬢ちゃん」
バレた。
顔に出ていたか。
「まぁお前昔からその風貌から鍛冶屋だって言われてたもんな。でもたまに鍛冶屋やってんだろ?」
「あぁ、まぁ暇つぶし程度にな」
どうやら昔から言われていた事らしい。
まぁその見た目だからな……。
「にしてもお前急にどうしたんだ?」
「ん、まぁ娘達を学院に通わせるからそれの手続きにね」
「ほぉ〜お前んところも行かせるのか。じゃぁ同い年か」
「オジキのところも行くのか?」
「あぁ、今年で16歳で成人だからな」
「あら、じゃぁこの子達と同じ学年になるのね。もしかしたら良いお友達になるかもね」
どうやらオジキのところの子供も学院に行くようだ。
オジキは魔力は特にないが筋肉はある。
その子供もそういう感じだったりするのだろうか。
「性別はどっちなんだ?」
「息子だ」
「じゃぁもじゃもじゃしてるかもな」
「失礼な」
「「はっはっはっはっは」」
何を言ってるんだコイツらは。
「オジキさんって確かギリギリの成績で入って来たのよねぇ。私、いまだに覚えてるわよ」
「ははは……まぁその時も勉強はからっきしだったし……息子は俺と違って勉強も実技もよく出来る出来た子だから俺みたいにクラスで1番下なんて事はないはずだ……! この前なんか1人でグレートボアを倒してたんだぞ」
「グレート……ボア……あぁ!あれか!アレを1人で倒すとは凄いな!」
父さん、日頃から私たちが竜とかを狩ってるせいで感覚が麻痺してたな……。
あとしたから2番目て。まぁ落ちてないんだから良いんじゃないかな。知らんけど。
「だがうちの娘達はもっと凄いぞ。五年ぐらい前から竜を単独討伐できるんだからな」
「竜を単独討伐だとぉぉ!!??」
オジキが父さんの常識はずれな一言で大声を上げる。
まぁそりゃ驚くわな。
「りゅ、竜って、あ、あの、あの竜か……?」
「そうそうあの竜だ」
「じゃ、じゃぁお前!竜の素材とかは……!」
「ふっふっふ……コレを、見せてくれるなら考えてやらんでもない」
父さんは指で輪っかを作りオジキに見せる。
指で輪っか。つまり誠意だ。
「いくらでも払うぅ!何個か譲ってくれぇぇぇぇぇ!」
「ぐっふっふ、あー!気持ちええー!」
ひどいものを見た。
「こら、アレはリーシャ達が持って来たものなんだから決めるのはリーシャ達でしょ?やるにしてもリーシャ達を話に入れてあげなさい」
「いで」
母さんが父さんをボゴって殴った。
まぁ特に金に執着とかはないし、相場と同じ金額で取り引きすることになった。
そのお金は半分家計に回ることとなる。
うちの家ちょっと危ういんですぅ……。
「にしても父さんとオジキさんって仲良いね」
「そうねぇ、幼馴染って奴よ」
「へぇ、そうなんだ。じゃぁ家が近所とかだったのか」
「そうそう。小さい時からずっと遊んでた仲らしいわよ」
「へ〜」
父さんはそう言った過去の話はあまりしてくれなかったからなぁ。
ハイゼラード大戦、つまり先の大戦以前の話は特に。
その後は少し雑談をしつつみんなでワイワイやっていた。
そして。
「ふぅ……疲れたぁ……あ、オジキさん、まだ店やってます?」
フードを被った青年が入って来た。
金色の髪に青色の目、引き締まった肉体を持つ男だった。
顔はフードに隠れてよく見えない。
そして魔力量がおそらく同年代の者に比べて大きい。
体の軸の置き方も良く達人とまではいかないが剣を扱えそうにも見受ける。
そしてその後ろにいる女は酷く見覚えがあった。
「ん……?あれ、お前……アルか?」
そう、金色の長い髪に青色の目、そしてあの時と同じ黒色のマントを着用してた女、そう。アル・フォン・ハイゼラードだった。




