嵐の前の静けさ
「おはよ〜」
「よ、リーシャ」
教室に入ると、もうすでにみんながいた。
あのあとは特に皆んなも怪我とかは無かったようで、軽く私とマオルナが戦うまでの流れを聞かれたぐらいだったそうだ。
「あ、英雄が来た〜」
「あ?なんだそれ」
キナが変な事を言ってきた。
そんな私が英雄みたいに……。
「そういえばまだ言ってなかったね。今回、20年ぶりに悪魔が現れた、と言う事で本来軍を出して討伐する悪魔を単独で撃破した、という事で君は表彰されることが決まったんだ」
えぇと……はい?
「うん、なんで?」
「そりゃね。悪魔っていうのは下手をすれば国が滅びるような存在だ」
まぁ……そうだね。
「いや……でも私でも倒せたし今までに何回も倒してる父さんと母さんに比べたらそんな話じゃなくないか?」
「まぁリーシャの家はそもそもがおかしいからね、基準が」
「サラッと貶すなや」
「ハハハハ。まぁ実際世の認識とはズレてるんだよ。王国の人間の大半は『悪魔化した生徒を倒した人』であると認識している。つまり結局のところ君たちの両親と一緒だ」
「いやいや、そんなんじゃねぇだろ……」
流石に父さんと母さんと同格にされたくはないな……。
なんか面倒事に巻き込まれそうだし。
「でも実際そうなんだよね。だから君は然るべき報酬が近々払われるはずだよ。君のお父さんみたいな感じになるのか、はたまた別の何かは僕はまだ知らないけどね」
「うへぇ……」
なんか嫌な予感がする。
まぁ別に父さんみたいに叙爵されるとかじゃなければいいか……。
あぁ、でも貴族にはなんかなりたくない、なんとなく。
「同年代なのに俺とはえらい違いだな……はは、すげぇな、リーシャは」
カズが自分との違いに落ち込みながらそう褒めるが私はあんまり喜べない。
てかお前もAクラスの時点で相当優秀な部類なの分かってるか?
「う〜ん……いやでもあんまり納得してない」
「なんで?」
「父さんと母さんに後で聞いたけど悪魔ってもっと強いらしいからな……確かに私って父さんと母さんよりは強いけどさ?対人経験も父さんと母さんの稽古ぐらいしか無いし、そもそもの戦闘経験が段違いだからな……。いきなり同じように表彰云々はあんまりな……」
「あ、やっぱりリーシャって英雄のお二人よりは強いんだ」
「単体だとな」
実際単体だと勝てるっちゃ勝てる。
が父さんと母さんを一緒に相手取ると五分五分と言ったところか。
魔法で色々出来ると思われるかもだが、父さんは魔力はあるけどそれ以上に身体能力全振り。
魔法を使われた上で身体能力によるゴリ押しをしてくる。
だからなんというか行動が読みにくいから大体負ける時は父さんにやられてる。
母さんには負けん。
言うなれば、母さん以上父さん同等、かつ、父さんと母さん未満って感じかな。
「それにしても英雄のお二人から直々に稽古を受けれるなんて羨ましいわね」
「俺もそう思う」
「いやいや、羨ましいとかじゃねぇから……」
私がまだ小さい頃、まだ前世とか考えることもなかった4、5歳の頃だ。
普通そんな小さい子相手に本気で斬りかかる親いますかね。
もはや児童虐待のレベルだと思います。
煽って稽古させてたの私だからなんも言えんけど。
まぁ実際普通の稽古でも厳しいのは厳しい。
父さんも母さんも大体自分に一回攻撃を当てるまでご飯食べれません、なんて鬼畜なことを言ってくるからそれはもう必死で必死で。
今思えばなんでそんな小さい頃から私そんなことしてるんだ?
全部私がやりたいって言った事とは言え正気の沙汰じゃない気がする。
てか絶対正気の沙汰じゃない。
小さい頃の私上昇志向強すぎないか?
「ところでさ、クランは作るのは決まったみたいだけど活動内容とか名前はどうするんだ?」
「あ、そういえばそんなのもあったな……」
マオルナの騒動のせいで思いっきり忘れてた。
「どんな活動内容にするのぉ?」
「うーん……そうだな…………皆が一人で悪魔を倒せるようになるまで稽古するとか」
『え』
なんでそんな「何言ってんだこの狂人は」みたいな顔しやがるんだこいつらは。
私としてはクランに入るってもらうのなら、それぐらいになってもらわないと困る。
「ちょ、ちょっと待ってよ。私たちが一人で悪魔を……?」
「そうそう。私だけじゃもし前の大戦みたいなのが起きた時に対処しきれなかったら困るだろ?ただでさえ平和ボケしてるこの世界でマオルナみたいな奴がそこら中に溢れかえったらどうなるよl
「あー……まぁ言わんとする事は分かるけど……流石に無茶苦茶すぎない!?」
「いやいや、余裕よ。ルナだって私に稽古付けられる前はそれはもう体調も悪いわ弱いわで散々だったからよ」
「ひどくない?」
「事実だろ」
実際ルナは幼少期は壊魂症もあって動く事はほとんど無かった。
治し方を見つけるまで色々やったの思い出すなぁ……。
「で、でももしそれをやったら一人で悪魔を倒せるようになるって事……!?」
「あ〜どうだろうな。今のルナならマオルナの悪魔ぐらいなら余裕じゃね?私はあの時周りが学院だったしある程度みんなが逃げてからじゃないと本気出せなかってのもあるけど、何もない平原とかで戦うようなことがあったらルナでも倒せると思うぞ?
やっぱり周りを壊さないようにするってのあんまり性に合わない。
本当はもっと大規模な魔法で蹴散らしてやりたかったが、そんなことすれば王城が吹き飛ぶ。
流石にそれは悪魔一人に対してはオーバーキルだしな。
「へぇ……夢のある話だね……」
「じゃぁ活動内容はとにかく鍛錬って感じになるのかな?」
「そうだな。問題は名前よ」
「リーシャのドキドキワクワク鍛錬クラン」
「死ねレイン」
「ハハハハ」
なんつー名前のセンスしてるんだよ、マジで。
普通に恥ずかしいし。
「う〜ん……英雄のお二人の娘なんだから……英雄戦闘術研究クランとか」
カズはセンスは良いようだ。
だが英雄っていうのが入ってるのが小っ恥ずかしい。
「じゃぁさ、高等魔法戦闘研究クランとかは?」
「あ〜、それなら良いかも?」
「よし、それにしよう」
「なんでレインが決めるのかなぁ〜? 一応トップは私だかんなぁ〜?」
「でも別に悪くないでしょ?」
「まぁ……悪かないな」
少なくともレインのクソみたいな名前と違って全然良いと思う。
うん。
「さてと、じゃぁそれで提出するか」
「そうだね。ところで入るのってどうしたら良いの?」
「うん……あぁ、これか。ここに名前書くだけで良いみたいだぞ」
提出用紙の1番下に構成員の名前(自筆のみ)欄がある。
てか今更だが構成員ってテロ組織かなんかかな?
「それじゃぁ回して各自書いておけよ〜」
『は〜い』
その後いつも通り授業が終わって、帰る皆の見送りをしている時。
学院の門から出たところを色んな人が待ち構えていた。
「英雄の娘さんの英雄がきたぞー!」
「すみません!王国新聞社のものです!インタビューいいですか!」
「テレビ局にもぜひインタビューを!」
「リーシャさまー!こっち手振ってー!」
速攻で逃げた。
「なんだあれ」
「そりゃ……君一応救国の英雄扱いなんだよ?」
「くっそ……やっぱあの悪魔放置した方が良かったか……?」
「だめでしょ」
明日明後日の休みの日に収れば良いが……。
それでも収まらないならもうちょっと王城に泊めさせてもらおう。
その後、結局1週間近く経っても全く騒動は治らず、今も王城で寝泊まりさせてもらっている。
ちなみにたまに転移して家には帰っているが、セキュリティ上学院内の転移はよろしくないとのことなので、王城にいることにしている。
王城で転移したりすることの方がセキュリティ上問題ありそうなものだが、専用の部屋を離れに置いてもらって、そこにいる衛兵に報告したら転移しても良いようにしてもらった。
あと、何故かは知らないが私が今寝させてもらったりしてる部屋は王城の中でも良い部屋のようで調度品もこの国最高級のものらしい。
庶民感覚の私からすれば、それぞれがどれだけの価値があるのか想像したくない。
なんかめっちゃ高そうというのだけは分かる。
しかもメイドとかの目が異常に生暖かい。
一体なんなのだろうか。
それになんでこんなところで寝させてもらってんだか。
わからないことばかりだ。




