56 今回も残ってしまう者が出てきた
「そう簡単にはいかないか」
特殊な技術を持ってる3人。
その同行者は見つからなかった。
今回は各旅団から送り込まれた者が多かった。
そうでなくても、新人同士で組んでる者も多かった。
なので、どこにも所属してない者が少なかった。
加えて、新人訓練を受けた者は各旅団から声がかかりやすい。
癖の強い能力を持つ3人と一緒にやっていく必要もない。
せめて、探知などを得意とする者が合流してくれればと思ったが。
それもかなわなかった。
ただ、完全に新規加入がいないというわけではない。
いるにはいた。
というより、3人と同じく余ってしまった者がいる。
それがなし崩しで合流してくることになった。
「いないよりは良いんだろうけど」
言ってしまえば、どこにも入れなかった者達である。
そんな者を抱えてどうすのだというものだ。
しかし、贅沢も言ってられない。
何はともあれ、人数だけなら一般的な探索班とほぼ同じになる。
今までに比べれば大きな進歩だ。
もっとも、持ってる技術はなんとも言えないものだ。
3人と同じで、探索に向いてるものではない。
今回もそういう者がやってきた。
「しかし……」
それでもさすがに頭を抱えたくなった。
これまでの経歴というか。
家業の手伝いで身につけた技術というか。
これがまた、あまりにも探索とかけ離れたものだった。
「代書人に工作人か」
代書人は文字が書けない者の代わりに文章を書く者。
工作人は広く浅く物品を製作する者。
どちらも戦闘には全く向かない仕事だ。
「それに、女だもんな」
そこにも嘆きたくなる。
職業を蔑んだり、性別で文句をいうつもりはない。
だが、向いてるかどうかというのは大きい。
文字や文章を書くのが仕事の人。
そして、物を作るのが仕事の人。
さすがに探索や戦闘が主になる探索者に向いてるとは言いがたい。
かてて加えて、女ということで体力面での不安がある。
女探索者もいるにはいるが、どうしても体力での不利は否めない。
レベルが上がればともかく、上がるまでが大変なのだ。
こういう部分が取り残される原因になったと言える。
さすがに各旅団でも受け入れにくかったのだろう。
新人達ならなおさらだ。
戦力に余裕の無い者達が、使えるかどうかも分からない者を受け入れられるわけがない。
下手すれば、迷宮で即死する事になりかねない。
だからどうしても仲間に引き入れることも出来ずにいるのだろう。
仕方のないことだ。
命がけの戦いを強いられるのだ。
不安要素はなるべく削りたいもの。
ただ、登録所はわざとやってる可能性がある。
あえて探索に向かない者をヨシユキのところに送り込んできたと思われる。
理由は簡単、既に似たような人間を3人も引き連れてるからだ。
だったら、似たような者も引き受けるのではないかと。
ていよく押しつけてきたと考える方が自然だろう。
「やってくれるよ」
それぞれの考えや気持ちはよく分かる。
だが、もう少しヨシユキのことも考えてもらいたかった。
何よりも当事者達のことを。
今更言ってもどうにもならないが。
ただ、同性ということで、3人と組むには問題がない。
それが救いと言えば救いである。
問題は、これからどう成長させていくかだ。
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