血ぃすーたろかー8回目
多脚装甲車の中に乗り込むと色々とゴツい機械やモニターが置いてあった。スターターキーがどれか分からんぞ……
3つ有る内の一番前にある席、運転席っぽい場所に座り、周囲をキョロキョロ。座席周りに何か無いのかを探していると取説があった。分厚いマニュアル本だ。
それを引っ張りだすと何やらごちゃごちゃと書いてあった。こう言うのって素人向けに書いてないからな~専門書レベルで専門用語ばかりが並んでいる。
取り敢えず、一ページ目にあった拡張現実で補佐してくれるというデータコードを読み取っておく。新兵訓練用にって奴だな。自分が砲手かドライバーか車長かで動きが変わるので俺は取り敢えずドライバーを選択する。
すると、まずはシートベルトを閉めろとか座席の位置確認をしろと出た。2050年位から人は車の運転をしなくなり、自動運転に任せっきりだ。車の移動に関しても自動運転で人間が操作するのはパトカーか救急車等の緊急車両位である。
故に、シートベルトとか座席調整等という単語知っていても具体的な物は想像できないのである。ぶっちゃけ、俺も最初どうすれば良いのかわからなかったしな。
シートベルトと座席を調整し終えると今度は起動シーケンスに移行するらしい。起動はエンジンスタートボタンを押してコンピューターを立ち上げ、パスコードを入力して本起動するらしい。
パスコードって何やねんと思ったら視界の上に何やらビニールテープでニイタカヤマノボレと書いてある。後ろに数字があるが掠れていた。これがパスコードか?
打ち込むのは四桁の番号らしいが……適当に0000と入れてみると弾かれた。
うーむ、取り敢えず、ノンナに聞いてみるか。
「ノンナ!」
「何!」
「ニイタカヤマノボレの後に続く番号は?」
「1208よ!
真珠湾攻撃の開戦暗号ね!」
へ~スゲーな。流石軍人一族。1208と入れると起動した。運転席には赤とオレンジ、黄色のランプが灯る。そのまま俺の拡張現実にデータが流入してきてあらゆる数値が入り込む。チェックが自動かつ高速行われて30秒ほどするとオールグリーンと表示された。
そして、運転席の明かりが全てライトグリーンに変わり、一瞬で視界が開けた。ガレージの中が一気に俺の視界に入って来たのだ。
まるでガンダムのコクピット内部みたいだった。窓枠のようにフレームがあるだけで、周囲は非常に広い視界が保たれている。脇のコンピューターの前でノンナが此方を見上げて親指を上げているので俺はクラクションを軽く鳴らしてみせた。
「コンピューターは問題無いそうだ。
そっちは?」
「外部からのレーザー走査したけど品質は新品同様ね。
窒素でも充填してたのかしら?って位に本質が均一で驚いたわ!軍用ナノマシン凄いわね!」
おう、そのナノマシンが俺等の体を作っとるんやで~ノンナ。
ガレージの扉を開けろと告げると、ノンナが無理矢理上にこじ開けた。パネェ……で、外には何やら木々の根っこが出ているのでノンナがそれらを背負っていたスレッジハンマーで殴り折ってから地上に続く出口まで移動させる。
途中、黒と黄色のカラーリングをした修理ロボットが数台大急ぎでノンナがこじ開けたシャッターの修理に向かっていた。外に通じるシャッターは修理ロボットが綺麗に補修しているのでこっちはスムーズに開く。警備ロボットからイッテラッシャイマセとメッセージが届き、思わず苦笑した。何じゃそりゃ。
で、外に出るとヘルシング達と合流予定の正門前に向かう。色はオリーブドラブ色と呼ばれる軍用車両特有の深緑色だ。IFFと周囲走査レーダーを起動すると無数の生体反応を感知するのでゴブリンを基準とした大きさに絞ると建物内部に5人、前にノンナを感知し、森の5km四方に数十の野生動物らしき物と村のエルフ達を感知した。
パネェ……
「よっと!」
ノンナが走行中にも関わらず飛び乗ってきたのでノンナに1ページ目に有るデーターコードを内蔵するよう告げる。ノンナは言う通りにして砲手を選択したらしく、砲手席、俺の後ろに移動した。後ろの席はどちらも同じ装置がついており、砲手と射手が兼任出来るように成ってるっぽい。
で、ノンナはこの六脚の蜘蛛の背中に鎮座する100mm短砲身レールガンを動かし始めた。
コイツの武装は背中の100mmレールガンに加え、コクピットの前部にある虫の牙みたいに成っている20mm機関砲、兵員室下部で後方を攻撃できる12.7mm連装重機関銃があるそうだ。
100mm砲は砲手が、20mm機関砲は操縦手が、50口径連装銃は兵員室が操縦できるそうで、20mm機関砲は問題無く空撃ちも大丈夫だった。
ロビー前に着くとそのまま姿勢を下ろす。燃料はナノマシンとヘリウム3による核動力らしく、ヘリウム3に関してはナノマシンが自動で作っているとか。で、そのナノマシンの動力はこの機械の電力。つまり、自給自足してるらしい。
スゲェ……これ、よく爆発しなかったな。
「兵員室を覗いてみるぞ」
「おう!」
ノンナと一緒に後部に移ると、非常に広い伽藍堂だった。
「完全武装の一個小隊を入れれるだけあってめちゃくちゃ広いわね!」
「おう。なぁ、この中に食料と武器弾薬と衣料品生成機入れて、カプセルも4つ入れたら移動拠点になるんじゃね?」
「他にちょっとしたテントとかも入れれば完璧ね!電力供給もコイツから貰えば良いし!」
これで長距離の旅も問題ないな!流石、兵員輸送車!
二人で喜びながら降りるとメメとモラシーがガクブルで神に祈りを上げ、ヘルシングとストーカーが驚愕を通り越した呆れ顔をしていた。
あ、因みにちゃんとしたバイクとかもガレージにはあった。でも、ロマンには勝てなかったんだ……
男は浪漫には弱い生き物なんだ!しょうが無いんや!!
「SFに片足突っ込みすぎね」
「俺もそう思う」
で、背中に諸々の装置を乗せて移動する事を提案したらすんなり可決。全員で急急と装置を持って来た。あと、ガレージにあった普通のバイクも持っていくことになる。軍用バイクでオフロードでも平然と走れるタイプの奴だ。
パーツとかは大丈夫なのか?と思ったが、武器弾薬生成装置が自転車やバイク程度の簡単なパーツなら作れるそうだ。
流石にバイクのエンジンを1から作るのは時間がかかるそうだがね。
取り敢えず、ヤッター!馬とか馬車とか不安しか無い存在よりも頼れる隣人、機械!で、準備に3時間程かかり、結局出発するのは夕方になってしまった。操縦手?勿論俺だよ!
ロボットの操縦とかめっちゃ浪漫。隣には交代要員と言う名の自分も操作したい系男子ストーカー君。砲手席にはノンナが陣取って離れない。で、荷台にはヘルシングがゲイリー達と会話しながら機械の精度を高めていくそうだ。
因みに、内部通信はナノマシンを介した通信機で普通に出来る。あと、目的地を選択したオートパイロットで俺やストーカー君の行う活動とかほぼ無いっぽい。
「しかし、未来の技術は凄いねぇ。たった90年で多脚戦車だよ、ストーカー君」
「そうですね!
本当に凄いです!」
「日本の技術は世界一だな!
ドイツでんアメリカでんに負けず劣らずよ!」
ノンナが自慢気にそう告げる。うむうむ。因みに、村を通ったら怪物が出たと大騒ぎになりそうだった。まぁ、しょうがねぇよな。高さが4メートル近くあるし、蜘蛛みたいに横に広い脚があるからな。例えるならコッペパンの先に5つ1パックの小型薄皮アンパンをくっつけて脚をつけた様な外的に丸っこい謎の生物だからな。
しかもコクピット部分は左右120度と上下60度まで稼働する。座席シートはその動きに合わせて動くので首の動きで酔ったりしないと思う。
激しい動きしたこと無いので詳細は不明。
で、時速30kmのスロースペースで動いているが、十分早いようで時折見掛ける人々は悲鳴を上げたりしている。勿論、此方も踏まないように最大限の配慮をして跨いでいる。
道が暗いのでヘッドライト代わりの探照灯を灯しているが、これまたスゲー明るい。数百m先までふっつーに見える。ワイワイキャッキャとコクピットは騒がしい。対して後ろはどうなのか?と言うと何か学校の国語の授業みたいな事やっていた。
3人に拡張現実が見えるメガネを掛けさせたヘルシングが空中に投影してあるだろう黒板に指さしで言語を教えているようだ。
「そう言えば、ここ1ヶ月間生活してるけどお互いにお互いのこと全然知らないよな。
ノンナは軍人一家の娘だろう?」
「そうよ!」
「俺は普通のリーマン家庭に生まれた平々凡々な大学生よ。
ストーカー君は?」
「僕は生まれつき体が弱かったんですよ。
特殊な遺伝子の病気、筋ジストロフィー症って聞いたこと有りますか?」
俺は有ると答え、ノンナは知らんと答えた。簡単にいえば筋力が段々と衰えていき最終的には自発呼吸が出来なくなったりして死ぬ病気だ。治療法は見付かっていなかったはず。前にテレビで特番やってた。
で、ストーカー君はその病気だった。医者は衰えていく筋肉を細胞の代わりにナノマシンが代用して擬似的な筋肉を創りだして治療するという対症療法的治療を考えたらしく、その実験参加者を募っていたそうだ。で、このまま未来のない状況なら、とストーカー君は志願し親親族を説得してその治療を行ったそうだ。場所は九州だったらしいが、何故か彼処に居た。
ノンナの話では2235年に九州あたりもきな臭くなったから移したんじゃないか?と言う話だ。因みに、治療はまる10年間掛かると予想されていたそうだ。まぁ、起きたら2240年どころか5000年って言うね。
「じゃあ、俺とノンナ以外は基本的に治療目的?」
「多分、そうでしょうね。
僕の時代でも冬眠って結構危険度が高かったから、ヘルシングさんもそうだと思いますよ」
「まぁ、それは追々聞いてみるか」
向こうではどんな授業をしているのかこっそり覗いてみると“オ”と“ウォ”と“ヲ”の違いをやっていた。ゼッテー俺は混ざらんぞ。バカが露呈してノンナの友だちになっちまう。
俺は!絶対に!混ざらんぞー!ジョジョー!!
◇◆◇
それから2日間移動して帝都と呼ばれる名古屋までやって来た。名古屋っつってもガラッと印象が変わって、と言うか街並みに一切の名残がない。有るとすれば名古屋城の跡だ。現在は名古屋城とその近くの市役所一帯を“学校”が専有しているそうだ。
帝都首都は旧行政区分で言う所の天白区とかそこら辺の山辺りらしい。理由は地震で津波に襲われて帝都が壊滅しかけたから。東海トラフ大震災って奴だな。
起こる起こる詐欺と言われて久しいが結局2040年代に起こったもんな。福島原発の震災から30年近く経って居たので対処もバッチリで浜岡原発も直ぐに緊急停止して活動を休止、安全な状態になった状態で、津波に襲われたそうだ。
結局津波に襲われるのかよ!ってツッコミを入れたがぶっちゃけ、防ぎようはないので大事な所は抵抗して被害を減らし、重要じゃない場所は須くかっさらわれたそうな。
「で、金鯱城と謳われた名古屋城は今では日本の城風な要塞っぽい物が出来上がってるのな」
「砲撃戦考えて無いわね!
あの高さなら砲弾で天守閣まるごと落ちるわよ!」
「この時代、火薬の銃はあっても大砲は殆ど進歩してないみたいだからね。
魔術があれば大砲と同等以上の攻撃力が出るっぽいし」
ストーカーの言葉にノンナは大砲の利便性を解き始めたので俺はそれをカット!する。因みに、この国に入る際に事前にゲイリー達が俺達の事を教えて通れるようにしたらしい。衛兵たちは信じてなかったようだが、コイツの姿を見て神に祈ってた。ビビり過ぎワロタ。
まぁ、俺も流石に神に祈ったりはしないけど、かなりビビるわな。
で、そのまま市街地を進行して名古屋城まで。
「良いですか、此処から先は私達が一番偉く、周りの人間は家畜だと言う体で行きますわよ」
そして、ヘルシングがエセ吸血鬼になるための講座を開いた。理由は簡単。俺達が吸血鬼じゃないとゲイリーと文化系学科の人達のクビが飛ぶから。
流石に俺達の言動一つで数十人の人間が路頭に迷うのは忍びない。
「偉そうにしてれば良いのだろう?」
「そうですわ。
それで、我々の中で一番偉いのがツェペシュさん。次に私、ノンナさんとストーカーさんは同列です。つまり、年齢順ですわね」
ノンナの方がストーカーより年下なのだが、コイツ、俺よりも偉そうな言動をするので同列でええやんという俺のアイディア。ヘルシングは不服そうだったがストーカーも問題無いと言うし、ノンナはストーカーよりも強いと訳の分からない持論を展開したので民主主義の大原則、多数決で可決した。
で、会話役はヘルシング、俺は偉そうに踏ん反り返っていれば良い。ノンナとストーカーは俺の後ろに立っているだけ。ノンナは初め嫌がったが、ストーカーが護衛役で軍人志望のノンナなら最適じゃないかと言うと素直に賛成した。
「よし、じゃあ、行くぞ」
「ええ、行きましょう」
多脚装甲車から降りてゲイリー達に案内をさせながら悠然と歩いて行く。学校っていうだけあって魔法学校の生徒達みたいなローブが大量に居た。ハリポタだ、ハリポタ。
で、歩いていると前方から何やらメメ達よりも耳のデカイエルフが歩いて来る。ムチムチボインだ。
「ゲイリー教授!外の怪物は何だ!
それに後ろの者共は誰だ!」
「学園長!」
ゲイリーが俺達に振り返って学園長のトーキン様ですと告げる。
「学園長、彼等が私が今回向かった遺跡で出会った吸血鬼でございます。
彼等は……その、非常に高貴なお方達で……えっと……」
ゲイリーが俺達をチラチラと見ながらヘルプミーと言う顔をしている。俺はヘルシングに計画破綻しそうだぞと告げるとヘルシングが溜息を吐いて前に出た。言語は日本語。
「図が高いぞ、土人共。
ツェペシュ様の御前である」
「な、何を言っているんだ?」
トーキンはヘルシングの言葉に眉を顰めてゲイリーを見る。ゲイリーは持っていた翻訳機で向こうの言語に再生するとトーキンはムッとした様子で前に出た。因みに、彼等の言葉はかなり精度の上がった翻訳ソフトバージョン1.78でほぼ彼等の口調通りに翻訳されている。
俺達は字幕を見ながら会話する事も可能なのだ!
「誰が土人だ!
我々は栄えあるハイエルフのモガッ!?」
トーキンが何やらトーンアップ仕掛けたその瞬間、ヘルシングが持っていた傘の先をトーキンの口に突っ込んだ。何この人怖い!
「ツェペシュ様の御前だと言った筈だぞ、土人?」
ヘルシングさんの冷酷な眼差しに思わず勃起しそうに成った。ドS系ですわ、彼女。きっと、エロいラテックスな衣装着てギャグボール付けたデブで禿なオッサンをグリグリするのが好きなタイプの人間だ。




