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ソビエトロシアは世界を懲罰する

 私の名前はテチだ。テチ・ポッポ・プッカ。アストロリア教の西方軍管区長だ。

 歳は16だが、父親がエルフ故にこの地位にいる。一応、アストロリア教でも有数のプッカ家であるから早くから私に取り入ろうとする司祭共は大勢居る。誰もが私の前に跪き、誰もが私を神の御子と崇める。

 同様に人間であるがエルフに匹敵する魔力を持ち、神の声を聞けるアナスタシアも神の御子と言われている。彼女は私と違って“敬虔な”アストロリアなので純粋に神を信じている。

 最近の悩みはこの低い身長と一向に大きくなる気配を見せない胸だ。エルフも人間も10歳を迎える頃には段々と体が成長していき、理想体型と呼ばれる砂時計体型になるのだが、私は寸胴鍋だ。くびれもなければ出っ張ることすら無い。シルエットだけならば年下の男子と間違われる事間違いない。

 故に私はあの“神”と呼ばれている存在をイマイチ信用することが出来ない。無機質なただただ広い空間に八角形のピカピカ光る球体があり、そこが神託の間として神が降りている場所なのだとか。

 彼処に入ると確かに不気味な声が脳に直接届く。途切れ途切れで弱々しい男とも女とも取れる声で、単語が聞こえるのだ。

 まるで死に損なった病気の年寄りのような弱々しい声が聞こえるのである。そんな奴が神と崇め奉られて居り、エルフは皆容姿に優れ、高い魔力を有しているというが私の何処が容姿に優れているのだというのか!

 故に、私はあの神を信じない。


 しかし、今、私の頭のなかにはそんな病弱そうな神の声とは比べ物にならないほどに鮮明で強烈な声が届いている。体は動かず、それこそ本当に神に体を乗っ取られているかのように私は他の3人の軍管区長とともに目の前の3人に頭を垂れているのだ。

 真っ白い肌をし、真っ赤な目を持つ。後ろにはエルフを超えるエルフ、ハイエルフを従えている。

 私達の前に立つ、白銀の杖を持つ男の声なのだろう。彼の言葉が私の脳に直接届いている。もちろん、何を言っているのか分からない。彼等の言語らし言葉で喋りかけてきているのだ。

 隣に私と同じように這いつくばっているアナスタシアは必死にアストロリアの教えを唱えて居るし、他の連中も口々に神に助けを求めていた。


「あ~あ~……

 我、ッテキ?はぁ?あ、敵、無し。え~……あ、貴方、話す、き、きった?ああ、来た。ソヴィエト、レーニン、スターリン、マルクス、し、しーしー……してる?ん?あ、知ってる。知ってる?」


 男は直接脳内にたどたどしい言葉で話し掛けながら顔を顰めていた。多分、私達の言語を話そうとしているのだろう。

 ターレンの中央広場に総金属製のワイバーンで降りて来た彼等は周囲を取り囲む我軍兵士を平伏させ、ターレン要塞までやって来ると現在、こうして上座を占領、私達の脳内に直接話し掛けて来たのだ。


「ダメだこりゃ。

 何言ってるのかさっぱり分かんねぇよぉ。念仏唱えすぎだろお前等」


 男は杖で肩を叩き、背後に居る真っ白い肌の少女を見た。少女は何を言っているの変わらないが、背負っているトゲ付きの巨大なハンマーを抜いた。男はそんな少女の頭を杖で叩くと少女はハンマーを地面に下ろす。

 本人は軽く置いたつもりなのだろうがその重さでタイルが割れた。

 また、彼等の後ろには金属製の不思議な鎧を纏った兵士が一人何かを話している。この声は神の声に似ていた。


「と、取り敢えず、これ誰に渡せば?」


 ハイエルフは懐から取り出した手紙を男に見せると男は杖で肩を叩きながら我々4人の前にしゃがみ、一人一人検分するかのように顔を覗き込んでくる。最も、3人は皆目を固く瞑り、必死に神に祈っていた。


「お、此奴だけ静かじゃん。

 よーし、パパ、強制土下座解いちゃうぞ~」


 男は何を言ったのか分からないが、楽しそうに告げると指を鳴らす。その瞬間、フッと体が弛緩し、同時に体が動いた。突然の開放、安堵した瞬間、下半身に生暖かい感触がした。


「うわっ!此奴漏らしたわ!」


 少女が私を指差して何か笑っている。見ると私は有ろうことか小便を漏らしていた。


「えぇ!?何で小便漏らす!?

 強制土下座そんなに怖いか?!」


 男は少女の言葉に呼応するように驚いていた。


《ツェペシュ様、突然体が動かなくなり、訳の分からない言語で話しかけられたら誰だって怖いかと》

「そっかー

 何かごめんね?別に怖がらせるつもりは毛頭ないのよ。つーか、マジで何か喋って。言語解析進まないの」


 男は苦笑した様子で私の前にしゃがみ、私の頭をポンポンと軽く撫でた。


「お前の名前は何ですかぁ~っと。

 俺はツェペシュ。あれはノンナ。あっちはハーカーで、あれはアナーキン。

 お前は?」


 どうやら名前を聞いているらしい。


「テチ、テチ・ポッポ・プッカ」

「テチ?

 あー、テチ?」


 男、ツペシだかツェペシは私を指差して尋ねるので、テチテチと頷く。すると少女、ノンナがポッポポッポと笑いだした。名前で笑われたのは始めてだ。

 それからツペシが私の前にしゃがみバシバシ肩を叩きながら分からない言語で何かを告げる。

 それから脇の酒瓶を手に取り匂いを嗅いでからグラスに注ぎそれを私に差し出す。飲めと言うことだろう。


「わ、私に何をする気なの?」

「毒なんか入れてねぇよ。まぁ、飲め飲め」


 何やら手拍子まで始め、ノンデノンデと言い出す。それ似合わせてノンナやハーカーも手を叩き出す。しょうがないので、それを飲むとツペシが笑顔で何かを言い出した。

 暫くそれを聞いているがさっぱり分からない。


《ツェペシュ様、どうやら不振がってるようですよ。ツェペシュ様、お話が下手くそですね》

「うるせーナメロボ」

《ナメロボとは?》

「ナメクジロボ」


 ハーカーはツペシの肩を殴る。それから私の首元に下げている星形の、アストロリアスのペンダントである。


《五芒星ですね。

 陰陽道のシンボルとして使われていますね。ソビエト、共産主義では宗教を禁止しているのでこういう迷信じみた物を、所持していると粛清対象になりそうなものですが》


 ハーカーは私のペンダントを掲げ、周りの連中に告げた。


「ただ単に技術力がないから赤い星を五芒星にしただけでしょ!」


 ノンナはアナスタシアのペンダントを引きちぎるとハーカーに見せ付けた。


《成る程、確かにそうかもしれませんね。

 中を空にすると強度が下がりますから》


 ハーカーとノンナは私の分からない言語で何かを話あってるとツペシがこそこそと私に耳打ちしてくる。


「よぉ、これってこれか?」


 ツペシは私のペンダントと教旗に描いてある星を比べて何かを言っている。


「アストロリアスの星がどうかしたの?」

「アス……何?」

「アストロリアス。我々が信じている教えの象徴、です」


 ツペシはホウホウと頷くと自分の頭や胸を触って胸の前で手を組んで見せる。


「少し違う」


 アストロリアスの祈りを見せる。


「キリスト教じゃねぇのん?」

「キリス?」


 知らない名前だが、どうやら向こうではアストロリアスをキリスと言うらしい。


「まさか……アストロリアス神は我々に彼等と出逢うようにするために、我々を極東に使わせたと言うの?」

「て、テチ軍管区長!

 本当なのですか!?」

「そうに違いない。

 ターレンに居る兵士は勿論、我々すらも抗うことのできない壮大な力を持っているんだ。白い肌、赤い目、人にして人在らざる姿。間違いない」


 と、言うかこれで敵だったら私達は死んでしまう。


「か、神は我々に東を攻めろと言うのではなく、彼等に会えと言うことを言いたかったのか!」

「おぉ?何やら活発に喋り出したぞ」


 アナスタシア達が何やら頭を下げながらお互いに何やら都合の良い解釈を始めた。まるでそれが真実であれと言わんばかりに。

 かく言う私もそうでなくては困るのだ。


《だんだんと言語習得が出来てきましたよ。

 もっと喋らせましょう》


 ハーカーはアナスタシアの体を更に弄って聖書を取り出した。そして、それを開き、冒頭の文章からゆっくりと指でなぞって行く。


《さぁ、読んで下さい。

 此処、言う、希望》


 ハーカーはその無機質な音声でアナスタシアに告げる。アナスタシアは頭を下げたままでそこを読み上げていった。聖書第一節。世界の創造である。

 この星は神が欠伸して出来た涙である。故に海は塩っぱいのだ。次に神はその海に木々を植えるために土を作る。故に木々は土の上にしか育たないのだ。


「野菜ってベルトコンベアーの上で出来るのよ?何馬鹿なこと言ってるの?」

「馬鹿なこと言ってるのはお前だ。

 野菜はベルトコンベアーで作るんじゃねぇ。土の上で作るんだ馬鹿」

《いえ、2290年では北海道や一部地域を除いてほぼ野菜工場で文字通りベルトコンベアー式に野菜を製造しています。ノンナ様はそれしか見たことがないのでしょう》

「……ノンナ。北海道帰ったら俺がお前に小学校の理科教えてやるからな」


 ツペシ達は何やらアナスタシアの話を聞いているのか居ないのかそんな事を話し出す。

 取り敢えず、アナスタシアが世界の創造を読み終える。ハーカーはありがとございますとはっきりと私達にも分かる発音と言語で礼を述べた。


《これで彼等とも会話が出来ますよツェペシュ様》

「よし。

 ハローハロー?私の言葉が理解出来るか?出来るならば右手を上げろ」


 ツペシは指を鳴らすとアナスタシア達がヘタリと地面に伏せる。どうやら動くようになったらしい。


「右手を上げろ。

 右手だ。右と左が分からんのならそう言え」


 ツペシの言葉にアナスタシア達は慌てて分かりますと告げて右手を上げた。


「フム、問題ないようだな。

 さて、我々は貴様等が攻めようとしている海向こうの国の者だ。我々は貴様等下等人種共に最終通告をしに来た。この100万の軍勢でこのまま海を超えて我々の国攻めると言うのであれば空から光の矢を撃ち込む。1発で100万の軍勢を滅ぼす事も可能な矢だ。

 アナーキン、貴様はさっさとその手紙を渡せ」


 アナーキンと呼ばれたハイエルフが慌てて手に握り締めていた手紙を私の前に置く。私はそれを開けて中の手紙を確認するが何て書いてあるのか分からない変な文字が連なっていた。


「……これは?」

「まぁ、読めんだろうな。

 ハーカー、音読してやれ」

《了解しました》


 ハーカーは其処に書かれている内容を音読し始めた。内容的には海向こうの帝国の皇帝が書いた我々に対しての最終通告文である。

 曰く、これ以上我が国と領土に軍勢を近付けるというのであれば、我が国と同盟国である吸血鬼の国は我が軍勢に対して激烈な打撃を与え、滅ぼす手段を取らなくてはいけない。そもそも、戦をするにもそれなりの礼儀というものがあり、我々をその礼儀もなしに行き成り軍を率いて攻めてくるとは蛮族に余りある行いである。もし、言語を持ち、思考をする能力があるのであれば今一度開戦理由と進軍理由を書いた書状を携えた勅使を遣わすのが礼儀である。例え、国が違い言語が違えど、行き成り暴力手段に訴える者は居ないはずだ、と。

 流石にこの言葉にアナスタシア達はムッとした様子だったがノンナが非常に好戦的な笑みで手にしたハンマーを素振りし始めたので誰も口には出さなかった。


《以上がラーキン皇帝の書かれた書状です》


 ハーカーは手紙を私に差し出すので私はそれを受け取り、アナスタシア達にも渡す。


「私は寛大だ。

 礼儀を知らぬ童子が無礼を素直に認め謝罪するのであれば赦す。だが、軍を引かぬというのであれば、私は礼儀を躾けねばならん。

 と、言っても貴様等は我々の力を疑う事もあろう」


 ツペシはそう言うとハーカーに何かを告げる。ハーカーは了解しましたと頷くと、兜の目の当たりが薄く光りだした。

 一体何が起こるのか、我々は内心ビクビクしているとツペシが外に出ようと告げる。

 我々はツペシを先頭に中庭に出る。ツペシとノンナが空を見上げるので我々も空を見上げる。


「5分ほど待ってろ」


 ツペシの言葉通り、我々は暫く空を見上げる。太陽は昇り、雲1つない見事な青空である。そして、そんな青空の中、一直線に白い雲があるではないか。その雲は一筋の光が生み出しており、その光はドンドンと此方に迫ってきている。


「な、何だアレは!?」

「光の、光の矢が降ってくるぞ!?」

「とても大きいです!」


 アナスタシア達は逃げなくては!と言うが突然、ツペシが指を鳴らすと私達の体は動かなくなる。


「何処に行く」


 光の矢はそのまま凄まじい速さで我々の前に迫っていき、中庭に建てられたアストロリア信徒の団結を彫った彫像にぶち当たった。

 凄まじい轟音と共に彫像は砕け散り、周囲に凄まじい土埃が舞い上がる。

 しかし、直ぐにその土煙は風で吹き飛ばされ、彫像があった場所には大きな鉄の円筒形の物が突き刺さっているではないか。


《弾頭を抜いた巡航ミサイルです。

 日本海に展開した護衛艦より発射しました。本来ならば、此処に核弾頭を含めたあらゆる弾頭を乗せることが出来ます。軍を引かぬというのであれば、我々はこれを貴方方の頭上に降らせるだけです》

「そういう事だ。

 軍を引け」


 ツペシの言葉に我々はただただ従うしか無かった。

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残念なお知らせだ

ストックが切れてしまったんだ

次回から更新は不定期に成るだろう



登場人物

・テチ・ポッポ・プッカ

ダウナー系ロリエルフだよ!

周りの大人が媚びへつらってくるから妙にスレた感覚のダウナー系ロリエルフだよ!

好きなモノはボーッとしてる事で嫌いなことは動く事だよ!

アナスタシアが信仰心の固まりで布教積極的に比べてテチは隙あればサボるし、神とか信じてないよ!

でもパッパがエルフで滅茶苦茶権力持ってるから誰も逆らえないんだよ!

外見はノンナと同じぐらいだけどノンナより年上だよ!

でも冬眠時間いれればノンナの方が年上だよ!


消え去った30話(パニッシャー)

卑怯にも悪鬼羅刹の手によって消え去った幻の第三十話が年を超えて蘇ったのである

消え去った幻の三十話の仇を取るべく新しい仲間を引き連れ彼は戻ってきたのだ!

三十話を手に掛けたあの者達に復讐するべく、彼は今復讐の鬼となる!

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