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血ぃすーたろかー34回目

血ぃすーたろかー34回目


 翌朝、朝の9時。伊吹のエンジンが始動する。ヒュォォォンと言う甲高い始動音にトーキン達は何処かにワイバーンかドラゴンが居るのでは?と焦り始めていたが、アホかと笑ってやった。

 そして、エンジンを始動させて15分。暖気を十分にしてからいよいよ出発だ。出発する際には汽笛を鳴らすということでノンナが私がやる!とグイグイ来たので任せることにした。


「絶対長押しするぞ」

「でしょうね」

「適度に止めますよ」


 さぁ、押せとノンナにいうと汽笛ボタンを思いっ切り押す。たっぷ90秒。それ以上はストーカーが後ろから組み伏せるようにして止める。


「よし、出発だ」


 前進!と命令すると船は動き出した。オォとトーキン達が声を上げる。サンサンサンとスクリューが水を裂いていく音が響き渡る。

 15分ほどで湾外に出る。其処から後は自動運転らしい。まぁ、自動運転と言うかスラミネーターに寄る半自動運転なのだがね。


「行程は大凡1日ですわね」

「い、一日ですか!?」


 トーキンが驚いた顔でヘルシングを見る。大洗から札幌までたしか18時間ぐらいで行けたはずだ。


「まぁ、夜には着くって事か。

 向こうに何か通信を入れてるのか?」

「入れてますわ。

 救難電波と降伏文を北海道に向けて出してますわね。返信は有りません。一応この船のコンピューターにあったIFFを作動させて環太平洋艦隊の日本海軍所属である事にしてありますわ」


 へ~よく分からんけどスゲーな。何か環太平洋艦隊って響きがカッコいい。めちゃくちゃ強そう。


「よく分からんが、一応、救命ポッド使えるか確認しとくわ」

「ええ、そうですわね。

 ヘタすると救命ポッドに乗り込む前にレールガンで沈められるかもしれませんけど」


 何それ怖い。


「何それ?」

「沿岸防衛用のレールガンですわ。

 上陸用舟艇を沈めたり敵の強襲揚陸艦を沈めたりするための湾岸に設置されている両用砲ですわね」


 ホラとヘルシングが俺にデータをよこしてくれた。そこを見る限り前にノンナに聞いたレールガンが北海道には設置されているらしい。

 こえー……

 ラーキンが上陸すら出来なかったとか言っていた理由は此奴か。正確無比の射撃でバンバン沈めてくるらしい。青森と一番近い津軽海峡とか普通に陸地届きますやんって話だ。


「レールガンは防御できんの?」

「発射の前に感知できれば防空レーザーで砲弾を撃ち落とせますが、まぁ、人工衛星と連動した砲撃をされると迎撃不可能ですわね」


 どういう事?と尋ねると人工衛星が船の位置座標を教え、湾岸砲がその位置座標に向かって砲撃をするのでタイミングが一切掴めないそうだ。

 恐ろしすぎるわ!それこそ気が付いたら死んでたレベルの話。


「……まぁ、砲撃されないことを神に祈るか」

「ですわね」


 俺は船内探検に行くと言うノンナを見送って一人救命ポッド、まぁ、救命筏とか救命ボートを確かめに行く。マジで怖いからね。

 救命ボートに入り、中を調べる。救命胴衣の他に携行糧食やラジオ等が置いてあった。食べれるん?乾パンぐらいなら食べられないこともなくないけどちょっと止めておいたほうが良いと思う。賞味期限がだいたい3千年程過ぎてるからね。

 そう言えば、アイスクリームの賞味期限って無いって話だけど……北海道に行ったらそれとなく探してみるか。

 彼処なら確実に電力が生きててしかも人が食べて無さそう。いや、分からんけどね。救命ボートを出て、船内を回る。

 ウロウロとしていると食堂と書かれた一室に辿り着いた。食堂にはトーキン達が集まって何やら壁にかけられている日本列島の地図や世界地図を見て唸っていた。

 完成してそのまま放置されていたのだから内装は完璧だ。食料とか真水とかが無いのでこればっかりは外から運んできた現地のものを入れている。

 まぁ、冷蔵庫とかそういう家電っつーかなんつーかは生きているので問題ないのだがね。因みに食料は航海の予定では一週間だったので一週間分あったりする。料理は誰も出来ないのでスラミネーターに料理のデータをインプットしてあり、言えば作ってくれる的な物らしい。正直、不安で成らないがね。


「何をしている、下等人種共」

「ツェペシュ様!

 良かった、少し聞きたいことがありまして」


 トーキンがやったね!と言う顔で俺の前に日本地図と世界地図を広げてみせた。

 何?


「此方、ニャポンの全地図で、此方が世界の地図ですよね?」

「如何にも」

「では、この地図に分けられている赤と青は何の意味があるのでしょうか?

 それと、此処に書かれている言葉の意味を教えて頂けたら嬉しいのですが……」


 世界地図を見ると、日本、アメリカ、オーストラリアにカナダとヨーロッパの有名な国は青色で塗られており、中国とロシアに朝鮮半島は赤色だ。太平洋には大きく《天皇陛下万歳!今度は勝ち馬に乗った筈なのに!》と書かれている。

 多分、この地図を飾った最後の日本人達が書いたんだろう。


「3千年前に世界中で戦争をしていた。

 青は日本の同盟国、赤は敵だ。此処に書かれているのは2千年もの間家系を絶えずに続いて来た皇族を賞賛する文言と世界が滅びる事を嘆いている文だ。

 天皇陛下万歳、今度は勝ち馬に乗った筈なのに、だ」

「て、テンノーヘーカですか」


 よく考えればラーキン家って天皇家レベルの家系じゃんね。


「つまり、貴様等ハイエルフと一緒だな。

 貴様等も二千年程前から家があるのだろう?」

「は、はい。

 父上と母上は既に死亡しておりますが」


 マジで此奴等何なんだろう?ハイエルフとか獣人とか。

 ゲノム兵開発して出来ちゃった系の人間かな?トーキンは相変わらず脇汗びっしょりだし。


「人間で貴様等と同じだけの断絶せずにそれだけの家を持っている貴族は居るのか?」


 俺の言葉にトーキンはいいえと首を振る。三百年持てば良い方で基本的に貴族達はお互いに貶し合っているので今の大貴族と呼ばれる様な連中以外は基本的に新興(ハイエルフ感)ばかりらしい。

 食堂に居るんだからコーヒーとかそういう感じのでも飲もうと思って厨房に入る。厨房にはスラミネーターが数体立っていた。


「コーヒーを淹れろ」


 命令するとスラミネーターの内一体がヤカンに水を入れてコンロに掛ける。そして、湯が沸く間にコーヒー豆を挽きだした。

 俺は取り敢えず、食堂に戻り、腰掛ける。テレビを付けてみるが勿論電波が飛んでいないので見れない。砂嵐だ。

 テレビを切り、ビデオデッキを弄ると映画が入っていたのでそれを付ける。バトルシップだった。2000年代のハリウッド映画を撮り直した奴だ。

 自衛隊時代の海軍が出ている。まぁ、俺からすれば自衛隊が出てるから何も可笑しくはないけどな。

 冒頭の主人公が式典に遅れた辺りで、突然ドーンと砲撃音。俺もビックリ、トーキン達も非常に驚いている。窓から外を眺めると前方に微かに煙が見える。俺はダッシュで甲板に出るとレールガンが動いてるではないか。

 俺は艦橋身を見上げるとヘルシングがノンナ!と叫んでいる。やっぱりノンナか。分かってた。

 取り敢えず、艦橋に飛び上がる。ヘルシングが受話器に向かって何やっているんだと怒鳴りつけている。


「ノンナは何処に居るんだ?」

「CICですわ!

 艦内地図差し上げるので、あのバカタレをCICから叩きだして下さいまし!」


 あ、はい。

 送られてきた地図を見ながらCICに走る。CIC、日本語だと戦闘指揮所と言うらしい。CICは概ね船の中央どまんなかの一番安全な場所に設置されているとか。

 扉を開けて中に入るとノンナがストーカーと一緒に格闘をしている。


「ツェペシュさん!ノンナちゃんがレールガンを試射するって言って!」

「ああ、知ってる。

 ヘルシングが激怒してた」


 ノンナの頭を杖でパカンと叩き、ラリホーを掛ける。北海道に着くまで寝ていて貰おう。ヘルシングにノンナを眠らせたと報告し、俺はCICの砲雷長と書かれている椅子に腰掛ける。

 このどれかのボタン押せばVLSが飛ぶんだろう。


「核ミサイルとか積んでるん?」

「さぁ?ヘルシングさんなら分かるんじゃないですかね?」

『積んでますから絶対に触らないように!』


 おぉ、音声通信ktkr……


「……え、マジで?

 アトミックボーム積んでるん?」

《積んでますわ。

 それと、原爆ではなく水爆ですわ。それはほぼ純粋水爆に近い核爆弾ですわね》

「純粋水爆って何よ」

《爆発に原爆を使わない水素爆弾ですわ。綺麗な水爆って言葉、聞いたことはお有りで?》


 前にテレビかなんかで言ってたような気がしないでもない。


《まぁ、良いですわ。

 ナノマシン制御で核爆発を起こす核弾頭ですわね。広島型原爆の10倍から20倍の威力があるという推算ですので、絶対に触らないように》


 コエーよ!何でそんなもの積んでんだよ!?

 取り敢えず、CICを後にして食堂に戻る。食堂ではちょうどミズーリが出港準備にとりかかっているシーンが流れており、トーキンが全員に翻訳しながら話をしていた。


「面白いか?」

「え、ええ。

 嘗て、この世界でこの様な事が起こっていようとは、思いもよりませんでした」


 ん?


「このアメリカと言う国は非常に強大であったのですね。

 ニャポンも負けては居ませんが」

「……それはフィクションだ。嘘だぞ?

 宇宙人なんぞ未だ嘗て攻めてきたことはないし、ミズーリが宇宙人と戦うためにドリフトターンを決めて40cm砲をぶっ放したなんて事実もない」

「う、嘘なのですか!?」

「ああ、嘘だ。

 もし、映画が事実だとしたら、世界は何度滅びた事になるんだ」


 ゴジラとメカゴジラとキングギドラが大暴れしてウルトラマンに戦隊ヒーローの巨大ロボが戦いまくってるんやぞ。宇宙人とか目じゃねーよ。

 ダイハードとか目じゃねーよ。プリキュアと仮面ライダーが居れば世界は安泰ですわ。


「う、嘘なのですか……

 この、巨大な船も?」

「いや、それは本物だ。

 本物と言うか現実にあった船だ。今、未だあるかは知らんが」


 多分、アリゾナの後ろで沈んでると思う。海外にも行ってみたいよね。

 ヨーロッパとかどうなってるんだろ?白人様が暗黒時代やってるんかな?それとも白人が大正義黒人様を騙くらかして奴隷にしてるのかな?

 いや、もしかしたらエルフとか獣人がわんさかいてスカイリムやっとるかもしれん。日本にだってエルフやら獣人やらが居るんだから。

 つーか、割とまじめに獣人の先祖を見てみたい。いくらなんでも3千年で突然変異はせんやろ。

 トーキンだって脇汗びっしょりするけどぶっちゃけナノマシンが豊富で耳がデケェって言うの以外は普通の人間だし。いや、数百年程生きてるけどさ。それはナノマシンのお陰だろう。

 自己保存機能みたいなのが働いてるんよ。ハイエルフ。紫色レベルのナノマシン保有量なら不老不死で不死身に成れるんだろうけどさ。


「お」


 で、コーヒーを淹れ終わったらしいナノマシンがカップを持って俺のもとに。

 ん~マンダム。


「まぁ、貴様等は絶滅した文化を楽しむが良い」


 DVDはまだまだあるし。

 俺はコーヒーを楽しんだ後、トーキンにDVDデッキの操作方法を教えて艦内を旅する。まぁ、DVDっつーかデータを選んでそれを見るからディスク入れ替えとか無いんだけどね。

 右手に杖を、左手にコーヒーを入れたマグカップを持って地味に搖動している船内を歩く。船長室行こうぜ!俺、船長!

 先程貰った船内地図を頼りに船長室を探し当てる。居住区角の中でも一頭良いところに位置するのが船長室。これは何処の時代でもそうなっている。目指せ士官様。一兵卒から士官に成れば兵隊元帥さ!


「ノックしてもしもーし」


 扉を開けて中に入るが何も無い。当たり前だ。入渠してそのまま三千年間放置されていたんだ。前線に出てたらしいから一応の生活跡があるが、多分、海戦とかはしてないはずだ。

 艦長の帽子や歴代と言うかたった2人の艦長の胸像写真が飾ってあるだけだ。航海日誌と書かれた本が置いてあったのでそれを開いてみるがほぼ真っ白だった。最後のページには国防海軍と日本に栄光あれと書いてあっただけだった。

 航海内容も何処何処から何処何処へ移動したとか避難訓練をしたとか砲撃訓練をしたとか書いてあるだけでやっぱり戦闘記録はない。


「ふ~ん」


 こんな物か。取り敢えず、このフカフカの椅子イイね。

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