表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/50

血ぃすーたろかー28回目

 さて、件のノンナと合流出来たのは更に深層に潜って金パーティーですら一度しか到達したことがないと言われる最深部だ。

 地下には何やら巨大な湖があり、ナノマシン保有量が紫色であった。所謂、地底湖って奴だな。湧き水なのだろうが、アホみたいにナノマシンが入っている理由が分からん。まぁ、その謎の解明は置いておいてまずはノンナを一発げんこつを落とす。


「バカタレ!お前、こんな最深部にまで入って何をしてるんだ!

 夜になったら帰って来なさいって言っただろうが!」

「だって、この子がお母さんの為に最深部にある生命の泉に行くっていうんだもの!」


 ノンナが脇に居た一人の少女を指差した。年齢は11か2位であろう。小学生程でノンナより少し年下に見える。今思えば、ノンナもまだ中学生に成るか成らないか位の年齢なんだよな。よく分からんけど。

 ノンナに地上の責任を全て押し付けるのは簡単だが、それはあまりにも酷な話だ。うーむ、取り敢えず、ノンナを連れて謝ることは確定だ。で、問題はこの少女。少女は手にした瓶をギュッと握りしめて俺とエルフの青年を見ていた。俺達の後ろにはオオムカデと大サソリ。どちらも攻撃をしてこないし、俺が問答無用で殴り掛かってきたノンナを止めた。彼奴に殴られたら此奴等、死ぬでな。

 瓶の中には濃密ナノマシン水が入っている。正直、これ飲むんならポーション濃縮すれば作れるよね。ヘルシングにやり方聞かんといけんけど。まぁ、エエよ。


「そんな水どうするんだ?」

「何でもこれ飲むとどんな病気でも治るらしいわ!」


 んなこたーない。それはただの濃縮ナノマシン水だ。


「ノンナ、その水は俺達の体と一緒でアホのようにナノマシンを含んでるだけであって、それだけじゃ治療は出来んぞ」


 病気や老化はマジで遺伝子レベルからの治療をする必要がある。また、当たり前だが内因性や心因性とか精神障害とかは治療不可能だ。まぁ、ストレスとかそう云うのから来るのはナノマシンが脳に特定の物質の分泌を抑制させたりするのである程度は低減出来るそうだが、結局は対症療法でしか無いので根源を断つ事は不可能なのだ。

 先天性の場合、DNAを正常な物に変換する事も考えられるが、それをやるとぶっちゃけ俺等見たく外見も人相も綺麗さっぱり変わっちまう。

 ヘルシング曰く俺等の外見が変わってしまった大きな理由にナノマシンの保有する“人間”と言う外見をそのまま適用した結果外見が著しく変わったそうだ。

 肌の色や髪の毛、瞳の色も不必要な物を全て排除していき、更には体型や骨格も一番合理的、つまり得をする外見に変化していくのだ。

 もしかすると、俺達は元々あった性格とは違う性格を保有しているのかも知れない。思考パターン等の形成はそいつが生まれ育った環境で育ってくるが其処に全く異質な考え方を保有する思考が入り込んで体を勝手に改造し、そいつらを基盤として作っているのだ。

 俺が本当に元々あった俺だという事はこの場にいる誰も説明が出来ない。俺は俺だという確信はあるが、その確信はナノマシンが与えている虚偽の確信であることは捨てきれないのだ。

 洞窟の比喩だの水槽の脳だのとヘルシングが言っていたが、正直、俺はそんな知識はなかったのでヘルシングという人間は確かな物だと言っておいた。


 話が逸れたな。盛大に逸れた。

 兎も角、病気は外的要因で無ければ治らない。治そうと思うと体を改造するしか無い。そして、そうなると小瓶に入っている程度の水では無駄だし、そもそも治療に関しての絶対的命令権を獲得している人間でなければ行けない。

 治療魔術とかこっちでは言っているが、実際にやってるのは対象者の体にあるナノマシンをハッキングし、それらに負傷した臓器等を急速に修復させているだけなのだ。こっちの人間は体内でナノマシンを生成する能力があり体にもナノマシンがある。

 だが、怪我を治療するにしたってナノマシンの量が少なすぎるから外部から直接取り込んでいる。要は魔術を使うと魔力が減るって言うのは足りない分を自分で補うからであり、俺達はその魔力が潤沢にあり更にはその生成が凄まじく早いので強大な魔力を持っていると言えるのだ。

 過剰生成分は大概に放出されるので、魔力が見える、つまりナノマシンが見える人間には俺等が常に魔力駄々漏れに見えるのである。


「誰が治療するんだ?どう言う病気なのか知っているのか?」


 ノンナは知らないと答えるので少女に聞く。


「分からないです。

 3年ぐらい前から咳をすると血を吐いて、だんだん働けなくなって今じゃベッドから出れないんです……」


 血を吐いて動けないって聞くと日本人的には結核しか想像出来ない。

 結核って感染する奴だよな~


「フム……」


 ヘルシングは知っているんだろうか?いや、彼奴は医者じゃなくて技術者だもんな。知らんだろうな。

 まぁ、この水を飲ませて治らにゃな治らんで不治の病すら治す云々は嘘でしたーって話で終わりだもんな。正直、今回ばかりは助けるにしたって無理がある。俺たちゃ医者じゃねぇ。

 取り敢えず、地上の現状を伝えるとノンナが驚いた顔をした。


「まぁ、今回ばっかりはお前ばかりを怒る訳にはいかん。後で謝罪をしに行くから、お前もそのつもりで居ろ」

「……分かったわ」


 ノンナは脇においてあったハンマーを担ぐと帰るわよと少女に告げた。勿論、歩いて帰るのだが、それは少々ダルい。ノンナも同じ事を思ったらしく、完全に支配下に収めたムカデを見る。

 俺がエルフをノンナが少女を脇に抱え、ムカデの背中に乗る。その際、足裏はムカデの甲殻をナノマシンで接着する。で、ムカデを先頭に地上まで一気にゴーさせる。もう、まなびストレートっすわ。学園でユートピアっすわ。OP聞くと懐かしさで泣きなくりますわ。


「Es rasselten die Ketten!」


 ムカデに乗っていると突然ノンナが歌い始めた。ドイツ語の訳の分からん歌である。何の歌かは知らん。あ、訳が出た。


「Es dröhnt der Motor!

 Panzer rollen in Afrika vor!」


 歌詞なんぞ見ても知らんので取り敢えず、何の歌かを見るとPanzer rollen in Afrika vorと出た。区分はドイツの軍歌。第二次大戦中に謳われた歌で、別名がアフリカ軍団の歌らしい。知らんわ!


「キャタピラは音を立てて進み!

 エンジンは鳴り響く!

 戦車はアフリカを前進す!」


 ノンナが今度は日本語で歌い上げる。


「おい、何の歌だ、それは?」

「アフリカ軍団の歌よ!

 昔の軍歌ね!」


 ノンナ、此処はね。日本なの。中部圏最大の都市、名古屋市の地下街なの。アフリカはね。アフリカ大陸にあるんだよ?此処はアジアね。ユーラシア大陸の隅の隅。

 まぁ、歌ってる内は静かだから良いか。で、行きに3時間ぐらい掛かったけど帰りは1時間ほどだった。その間、ズッとノンナの軍歌を聞いていた。元寇だの雪の進軍だの軍艦行進曲だのと。

 観客はエルフと少女に俺。しかも、同じ歌を2,3度歌いやがる。ジャイアンじゃないだけマシだけどさ。

 地上に出ると、完全に陣地が出来上がっており、スラミネーターを連れた騎士団や学校の連中も居た。


「戻ったぞ」


 出迎えご苦労と言わんばかりに告げるとヘルシングが恭しく頭を下げてお帰りなさいませと告げる。そして、ノンナの側に寄ってガッと頭を押さえるとノンナがギャー!?と叫びながら土下座の体勢に。


「反省なさい!

 全く有ろうことか敵を殲滅せずに地下に進んでいくなんて!後ろから攻撃されたらどうするつもりだったんですの!?

 今回はサイボーグキメラが上に向かったから良い物を!」

「痛い痛い痛い?!

 脳みそが痛いわ!」

「当たり前です!

 貴女の痛覚神経にアクセスして頭痛を引き起こさせているんですから!」


 何それ怖い。

 ノンナとヘルシングがそんな事をやっていると少女が止めて下さいと慌ててノンナの前に立ってヘルシングから庇った。


「わ、私がノンナちゃんに頼んだんです!

 ノンナちゃんは悪く有りません!だ、だから、怒るなら私を怒って下さい!」

「当たり前です!」


 おぉう、此処はしょうが無いわねルートに入るはずが斜め上の当たり前ルートに入ったぞ?

 ヘルシングは其処に正座なさいとクドクド説教を始めた。何でこの人こんなに激おこプンプン丸なの?とストーカーに尋ねると実験の最中に呼び出されたからだと告げる。しかも、今一番良い所!って場面で呼びだされたもんだからモー凄まじい激怒。

 ヘルシングは激怒した。かの邪智暴虐なノンナを許してはおけんレベルで激怒してる。ヘルシングの気迫にその場に居た誰もが口を噤んで説教を見守る。

 俺はストーカーと一緒にギルド長の方に避難しておく。


「今回は私の仲間のせいで悪い事をしたな。

 それで、リストアップは出来ているのか?」

「は、はい!これがそうです!」


 ギルド長から紙を受け取り、ヘルシングが乗ってきたのであろう多脚装甲車に向かう。中に入って紙面情報読み取りで読み取らせ、同時に剣や弓と言った分類で仕分ける。その後、そのデータを元に武器弾薬製造装置にインストールし、その数だけ武器に名前を彫らせて製造開始。

 全部で数百の武器になり、出来上がるのに大体2週間と表示された。材料は今持ってる分で十分に足りる。

 製造開始を押して外に出るとラーキンが寄って来た。


「あーツェペシュ殿」

「何だ」

「その、この騒ぎの原因は貴殿の仲間にあると言う事だが……」

「ふむ、直接の原因はそうであろう。

 その件に関しては我々の非を認めよう」

「そ、そうか。

 それでだな。その……今回の一件、国家を揺るがす大事件になりかねん程の騒ぎだ。貴殿等、各大臣や貴族を前に弁解して貰いたいのだが……」


 可能だろうか?と言う顔は非常に怯えていた。ヘルシングのお説教を見たせいだろう。俺も怖いもん。


「良かろう。

 では貴族を集めろ。弁解とやらをしてやろう」

「は、はい!直ぐに!」


 ラーキンはそう言うと脇に居た騎士に何かを告げて走らせる。

 俺はヘルシングをどうにかしなければ。俺は意を決してヘルシングに話しかける。


「まぁまぁ、その辺にしてやれよ。

 ノンナだって反省してる。次からは全部敵は殲滅するよな?」


 俺の助け舟にノンナは首を大きく縦に振って頷いた。


「人間は失敗して生きていく物だ。特に、ノンナ位の歳の子供はそうだ。

 次、失敗しなければ良い」

「……良いでしょう。今日の所はツェペシュさんの顔に免じて許してあげます。

 次やったら……分かってるでしょうね?」


 ヘルシングがハートマン軍曹のようにビシッとノンナに指を突き付けるとノンナはコクコクと首を縦に振る。あ、そうだ。序にヘルシングにこの女の子の母親を見せてみよう。

 まずはともあれ女の子を家に送って様子を見るか。


「ヘルシング。お前、病気とか分かる?」

「はぁ?

 私、技術屋でしてよ?」

「うん、でも病気とか分かるか?」

「まぁ、一応ある程度の病気のサンプルデータはあるから分かりますが……」

「なら、良い。ついて来い」


 で、少女に家に案内するよう告げる。20分程歩いた所に少女が住んでいるらしいぼろ小屋っぽい家があった。家の中に入ると一人の女がベッドに寝ており、同時に俺の視界に高濃度の結核菌を発見と表示された。


「あら、あの方は結核なのですね。

 私、結核を始めてみましたわ」


 ヘルシングは失礼と言って口元をハンカチで抑えて女の額に手を当てる。そしてあらあらと声を上げた。


「彼女、肺結核ですわ。

 昔は不治の病とか言われてたみたいですけど」

「あ、あの!このお薬で治りますよね!?」


 少女がそう言って出した小瓶を見たヘルシングはそれを鼻で笑う。


「ナノマシンだけでは治る訳無いでしょう。

 ナノマシンに結核菌を駆除するように命令しなくては。まぁ、この方、かなり弱ってるみたいなので体内保有しているナノマシンの量では到底足りませんからそれを飲ませましょう」


 ヘルシングは少女から瓶を受け取り、飲みなさいと告げた。女は取り敢えずそれを飲むと今度はヘルシングが何やら拡張現実で操作してから女の額に手を当てた。


「取り敢えず、暫くはポーションを1日1本飲みなさいな。

 あと、暫くの間、酷い痰を吐くでしょう。水分を摂取して痰を全て吐き出しなさいな。出した痰は出来る限り触れずに焼却処分するように。

 それと、貴女。貴女も結核に成ってるでしょうから貴女にも同じ処置をしますわ」


 ヘルシングは少女の額に手を当てた。

 そして、これで良しと頷いて。終わりましたわと俺を見た。もう終わりなのかよ。スゲーな。


「お前、医者も出来るん?」

「医者、と言うか言ってみれば結核菌が居るから結核に成るだけでナノマシンが結核菌を排除するだけですわ。

 私がしたのはナノマシンに結核菌を排除するように指示を出しただけで。後は当人の気力の問題ですわね」


 治療方法が荒業過ぎねぇか?まぁ、しょうが無いんだろうけど。

 で、後は腫れたり何かかんかで病気になってる場所を治して終わりだそうだ。病原が居なくなれば症状もなくなるはずだろうって言う考え対症療法から原因療法に切り替えたナノマシン戦術である。俺の言ったとおりよね。荒業すぎだけど。


「まぁ、後は栄養のある物を摂取して寝ていれば多分良いでしょう」


 ヘルシングはそういうと終わりましてよと俺に告げるので、俺は議会に向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ