ソビエトロシアは世界を革新する
この肥沃で広大な大地を統治しているのが神の声を聞き、神のご神託を我々にお授け下さる偉大なる指導者である。
神の声は恐れ多くも神を冒涜し、反乱を起こした逆賊共の血によって染まったと言われている赤き広場に面した神殿の最奥でのみ聞くことか可能だそうな。
この神殿をクイントペンタグラムと言う。名前の由来は神殿を囲うようにして建っている5つの塔の最上部に赤い星が輝いているからだ。
そして、この神殿で神の為に働く神官、つまり私のような神を進行する存在をアストロリアと言う。
「この世界は神が起きた際にアクビをした涙から出来上がった。故に、海は塩気を含みしょっぱいのです。
次に、神は木々や緑を植えるために土をお作りになった。故に、木々は土でしか育たないのです。そして、木々を育てるために神は雨を降らせた。故に、時折雨が振るのです。
そして、次に伸び放題になる木々を整えるためにそれらを食べる牛や羊をお作りになった。故に、それらは草を食べるのです」
世界の創造が書かれている聖書を読み上げていく。私の目の前には孤児たちが熱心に世界創造を聞いていた。彼等は戦争や貧困と言った理由から親を亡くしたり、親に売られた子供達なのだ。
「次に、神は増え過ぎた牛や羊を食べる狼や熊をお作りになりました。故に、彼等は動物や人を襲うのです。
そして、最後にそれら全てを管理し、神の代理人として世界を整えるために我々人間をお作りになりました。その中から特に信仰の厚い者は神に一番近い指導者として、神の御声を聞けるのです」
「シスター、俺も神様の声を聞けるようになる?」
孤児の一人が手を挙げて尋ねた。
「勿論です。
しかし、そうなる為にはうんと勉強をし良いことをしなくてはいけません。貴方は昨日の掃除の時間、イワンと一緒に箒で打ち合いをしていたそうですね。そんな事をしているようでは指導者になるどころか、天国にはいけませんよ」
「うっ……ごめんなさいシスター」
「分かれば良いのです。
良いですか。神はすべてを見て居られます。日頃、善い行いをしていればエルフになり、そしてその死後に天国に行けますが、そうでないならば亜人の様に生まれ変わって罰を受けるのですよ」
亜人、犬や猫と言った畜生の様な外見をしている者達だ。愚劣で下品極まりない存在と言っても過言ではない。
対してエルフは純白で美しく、更には魔力も強い。魔力とは神に与えられし力である。亜人は基本的にこの力を使えないし、使える者も中に入るがエルフには劣る。取柄といえば屈強な体と馬鹿力だろう。後は畜生由来の鼻、目、耳の良さ程度だ。
「シスターなぜ亜人は居るんですか?」
「それはですね。慈悲深い神が罪を犯した人間を償わさせる為に亜人として生まれさせているのです。亜人は前世でとんでもない罪を犯した大罪人や神を崇めぬ邪教徒だったからです。
皆さんも敬虔なアストロリアなら亜人には成りません。亜人になりたくなければ皆さんは確りと善行を積むのですよ」
孤児達は私の言葉にハイと元気よく返事をした。
其処に神父様がやって来られる。
「シスター。シスターアナスタシア」
「これは神父様。こんにちは」
孤児達にも挨拶をするよう促すと孤児達は一様に神父様に挨拶をした。神父様もそれに笑顔で答えた。
「さぁ、皆さん。
お部屋に戻って。そろそろお昼ですよ」
「はーい!」
孤児達は我先にと教会の裏に併設されている孤児院に向かって駈け出した。
子供達の姿が完全に見えなくなった所で、私は神父に向き直る。
「神父様、今日は一体どう成されたのですか?」
「御信託があった」
「なんと!」
ご神託。神からのお告げである。偉大なる指導者様が神の声を聞いたのだ。
「神は何と仰せに?」
「極東に進めと仰言ったそうだ。
我等が仰ぎ見る神は極東の蛮族を放逐し、アストロリア教を広めよと仰言った」
「そ、それでは……」
体中の毛が逆立つ。毛穴という毛穴が開き、凄まじい高揚と末恐ろしくなるような幸福感が体中を掛け捲るのがはっきりと分かった。
「ああ、第五次東征軍を組織する。
シスターアナスタシア。貴女は現時刻を持って第五次東征軍モスカウ軍管区長に任命する」
モスカウ軍管区長、即ち東征軍の中枢部隊の指揮官に任命されたのだ。
私は直ぐに神父様の前に跪き手を組んで祈りを捧げる。
「神よ我を守り給え」
「神よ彼の者に幸を与えたもれ」
神に祈りを捧げ、直ぐに教会を管理する大シスターに事情を説明する。すると大シスターは目を見開いてそれから破顔すると大きく胸の前で星を切っておめでとうと告げた。
「シスターアナスタシア。この時の為に、準備は既に出来ています。
さぁ、此方に!」
そして、他のシスター達に連れられて私は教会の中でも特に厳重に封印されている部屋に入る。部屋の中央には胸甲と兜、手甲や具足と言った物が置かれ、それらの後ろには大きな赤い旗の付いた槍が置かれている。
旗には技術を表すとされる金槌に命の糧となる麦を刈り取る鎌を組み合わせ、それを五芒星で囲った物が中央にあり、その下には《СССР》と刺繍されている。これが我らアストロリア教の教旗なのだ。シスター達に手伝って貰いながら甲冑を見につけ、腰には剣を下げる。
そして、旗を手にして外に出ると神父様が乗ってきたのであろう天蓋が無い馬車が用意されていた。
「さぁ、シスターアナスタシア。いえ、聖女アナスタシア。
神のご意思です」
「はい」
私は旗を結ぶ紐を解き放ち、高く旗を掲げる。孤児達やシスター達は一斉にその旗に祈りを捧げ神を称える歌を歌い始めた。私は馬車に乗り、神殿に向かう。赤き旗が我らの御心!この旗が登る時、それ即ち神の教えを世界に広め邪教を懲罰する時なのだ!
自由なる諸教徒の不滅の団結は
アストロリアによって永久に堅められた
万歳、神の意志に築かれし
一つに進む雄邁なるアストロリアスよ!
栄光あれ!我らが自由なるアストロリア
神と友愛の拠るべき神の砦よ
神の旗、アストロリアの旗よ
勝利から勝利へと導きたまえ!
「アストロリア神バンザイ!」
「聖戦だ!聖戦が始まったぞ!」
私が旗を掲げ、馬車が駆けると道行く教徒達は皆一様にして馬車の後を走って付いてくる。聖戦だ。これは聖戦だ。我らが敬愛すべきアストロリアを世界に広め、邪教を放逐する為の、偉大なる、そして大いなる戦いなのだ。
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77年以降を参考にしたよ
あと、田中はタイキック




