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血ぃすーたろかー10回目

 で、簡単にまとめると北海道の地理調査、地質調査、生物調査、植民地化可能か?の調査をするだけらしい。で、どれもこれも北海道の要塞内部に入れれば一発で情報ゲットできるだろうから、調査団と言っても現地人を数名連れて行って彼等が生きるか死ぬかを見届ければ良いだけに近い。

 そして、この説明をするだけで1時間近くかかったのが嘆かわしい。


「貴様等土人にはプレゼンテーション能力が一切無いのがよく分かる話だったな。

 私は寛大だ。故に、貴様の説明については不問とする。これがヘルシングやノンナだと、今頃貴様の首は文字通り胴体と泣き別れしていただろう」


 完全に話飽きて、爪の掃除までしちゃった俺がそう総評。で、そろそろお腹が空いてきた。


「腹が減ったな……」


 ゲイリーを見るとゲイリーは直ぐにトーキンに駆け寄って耳打ちをした。トーキンは直ぐにお食事をお持ちしますと告げる。


「いや、この学校には学食は無いのか?

 私の時代にはあったぞ。学生が一堂に会して食事をし、凄まじい闘いになるのだ」


 あれは愉快であったと笑い、脇にあった動物クッキーを一つ手に取ると齧る。トーキンは勿論有りますと頷き、そちらでお食事をなさるおつもりで?と恐る恐る尋ねるのでそうだと頷いておいた。

 で、俺達はそのまま食堂へ移動する。トーキンが先頭に立ち此方ですとヘコヘコしながら道を案内し他の教員が道中の学生達に脇に控えろ!と凄まじい剣幕で脇に立たせて頭を下げさせる。俺は其処を悠々と通り過ぎ、途中、空き教室とかを覗いたり生徒達が持っている教科書を見せろと手に取ったりして大回りしていく。

 まぁ、事件は其処で起こった。

 俺が中庭に差し掛かった所で一人の女子生徒が柱の影から飛び出てきて俺にぶつかったのである。生徒は何やらぐっしょりと濡れており、非常に生臭かった。トーキンは勿論、他の先生は顔真っ青。俺立ちが羽織っている真っ白いコートは生徒が滴らせていた汚汁で灰色に汚れてしまった。

 コートに関しては日中の日差しから肌を守る為で、パッと見はくっそ暑苦しいけど、その実ナノマシンの体のお陰で涼しい。

 生徒はそのまま尻餅を付いてごめんなさいと慌てて頭を上げる。トーキンや他の教員が大慌てで生徒を隔離し怒鳴りつけ、俺に謝罪をする。俺は少女が飛び出てきた柱奥、数人の生徒達が大慌てで走り去るのを見掛けた。


「土人、何故貴様はその様に生臭く汚れている?」


 俺は女子生徒を叱り付けるトーキンや教員を脇に退けて手を差し出しながら尋ねる。女子生徒は俺の手をとって立ち上がるも、答えようとしない。なのでトーキン達がさっさと答えろと煩いので一番うるさいキンキン声のデブい中年女教師の無駄に盛ってある髪を燃やした。

 そんなに寄って集ってがなり立てたら喋れるものもしゃべれないだろうが!それと、髪がウザい。


「少し黙っていろ、豚が。

 私はお前ではなくこの土人に聞いているのだ」


 俺は空気中の水分を凍らせて集め、それを溶かすようにして少女の頭からぶっ掛けてやる。綺麗な水だよ~君、正直、めっちゃ臭いからね。牛乳を拭いて洗わずに干したような異臭を放ってる。今すぐ綺麗にしないと臭いが染み付くからね、許してね。ちゃんと乾かすし。

 勿論、俺の行動に全員が驚愕し、固まったまま動かない。

 で、俺がただ水をぶっ掛けているだけだと嫌がらせ以外の何物でもないので話を続けてやる。


「話したくなければ別に構わん。貴様等下等な土人共が同胞をイジメあおうと私は一向に構わないのだから。

 許せんのは、私のコートを汚したことだ。この娘をイジメていたアホを今すぐ此処に連れて来い」


 俺はトーキンに告げる。イジメはイカンよね。自殺者が出る前に止めてやるのが大人の役目よ。

 まぁ、それがこの少女のためになるのかどうかは知らんが、イジメを見て見ぬ振りをするのは俺の良心が咎める。やらない偽善よりやる偽善ってロックベル夫妻も言ってたしね!

 で、俺は脇に居た別の教師に少女を着替えさせる様に告げて、食堂に向かうことにした。食べながら話を聞こうじゃないか。

 食堂はめっちゃ混んでいたが、俺のために特別にテーブルが一つ開けられた。食事内容は生徒達と同じで何かの肉のステーキとシチューにパンだ。

 ステーキにシチューってスゲーな。んで、俺がテーブルに着く頃には他の連中も集合していた。どんな状況?と尋ねるとヘルシングは恙無く終了したことを告げ、ノンナとストーカーも面白そうなロボットモドキを見付けたと報告する。多分、そのロボットモドキは魔導甲冑とか言う奴だろうな。

 で、俺の方は?と尋ねられたのでいじめられっ子の話をして救済してやることにしたと告げる。ヘルシングはそれに対して反対意見を表明し、ストーカーは賛成、ノンナはぶん殴っちまえば良いと賛成なのだろうかよく分からない意見を述べた。

 最も、俺もそこまで深入りする予定もないので飯を食いながら軽く事情を聞き、軽い罰を与えれば良いだろう的な話をして終わりにするつもりだ。

 で、俺達が飯を食べ始めた所で女子生徒が乾いた服を着せられて俺達の前に連れて来られ、それに遅れるようにしてトーキンが複数の男女生徒を連れて来た。


「座って食事をするが良い、娘」


 脇に居た教師に女子生徒の分の食事を持って来てやれと告げる。女子生徒は俺達の前にほぼ強制的に座らせれ別の教師が持って来た食事を前に置かれる。

 女子生徒はこれから死ぬんじゃないかと言う土気色の顔をしていた。ヘルシングに関してはもう滅茶苦茶女子生徒を睨みつけてるからね。

 ノンナは我感せずと言う感じで飯をバクバク食ってる。ストーカーは女子生徒を見ながらも食事を優先しているようで話しかけたりはしない。


「娘、貴様の後ろにいる土人共が貴様に汚水を掛けた連中か?」


 俺がサングラスを少しずらして男女の生徒を見る。トーキンはどうなのだ?と女子生徒に再度尋ね、女子生徒はトーキンを振り返り、俺を見ながらそうですと頷いた。


「では、そこの土人共は何故この娘に汚水を掛けた?

 この娘が汚水を被ったせいで、私のコートが汚れてしまったのだぞ?」


 俺が少女をびしょ濡れにさせたついでに水をかけて繊維の隙間に居るナノマシンを操作しシミ抜きを行わせて乾かしたコートを見せる。今は真っ白だけ、さっきはちょっと灰色に汚れていた。

 トーキンはさっさと答えろと少年少女を叱り付ける。すると、一人がオズオズと平民だからと告げた。平民だから、と言う言葉を補足するようにゲイリーがこの学校には平民、貴族、王族が揃って勉学に励んでいますと告げた。

 入学基準は金か知識のどちらかで、貴族達は金に物を言わせて入学させ、単位を買う。農民を含めた平民達は勉学に寄って入学し単位を取得する。

 しかし、世の中は階級社会。平民達は非常に冷遇され貴族達に寄って擦り寄る以外に扱いは下等なものであるそうだ。

 で、イジメっ子達はそれを貴族だから平民に何をしてもよいのだとまで言いやがった。


「ふむ。

 つまり、そこな土人共は自分が貴族で娘が平民だから、という理由でその娘に汚水を掛けた訳か」

「そ、そうなります」


 俺の言葉にトーキンがもう冷や汗ダラダラで頷いた。ハイエルフの脇がびっしょりになってる。


「なら、私が貴様等を“土人だから”と言う理由で殺してもお前達はしょうが無いと言うのだな」


 俺は口元を拭き、立ち上がってからノンナのスレッジハンマーを手に取る。

 主犯格の少年が自分を殺したら親が黙っていないと叫ぶ。トーキンにコイツの親は誰だ?と尋ねると知らん名前が返って来る。まぁ、当たり前だ。

 その貴族はトーキンより偉いのか?と尋ねると階級は下であると答えられた。なので、なら殺して文句を言われてもトーキンがどうにかせよと言いつける。

 俺はスレッジハンマーを片手で振り上げ、少年の股の間、股間の直前に勢い良く叩き付けた。大理石の床がバッゴーンと綺麗に砕け散り、陥没。その音で食堂は綺麗に静まり返り、少年は泡を吹いて気絶、周囲の少年少女達はしめやかに失禁をした。


「フン、豚共が。

 この豚共の首から“私は平民をイジメた馬鹿な貴族です。吸血鬼様に怒られて怖くてお漏らしをしました”と書いた看板を下げてから学園中を一日中歩き回らせろ。

 これから学園内でイジメが起こったら主犯格は全てそうしろ。そして、その娘がイジメられていて助けなかった阿呆共には校内の掃除でもさせておけ。

 それと、トールキン。貴様、学校長でありながら学校内の風紀が乱れていることに気付かんとは何事か?

 学び舎とは、子供の心身を鍛え健やかに育てる場所であると我々の時代は言って来たが、この時代は違うのか?」


 トールキンは国のために尽くす人材を発見し育てるための場所ですと答えるので笑ってやった。


「その国のために尽くす者が国の根幹をなす国民、平民をイジメるアホではこの国の未来はないな」


 俺がそう笑うとヘルシングやストーカーも笑い、ノンナも釣られて笑っていた。おい、ノンナ。お前、何か知らんが取り敢えず笑っとこって言う顔止めろ。バレバレだぞ。

 スレッジハンマーをノンナに返し、座席につく。


「娘よ」

「は、はい!」

「名をなんという」

「に、ニーニャと申します」

「そうか。

 私は寛大だ。今回の一件は不問に付す。が、次また私のコートを汚したらお前を殺す。この学舎に無能は要らんのだろう?」


 そして、気絶しているいじめっ子達を見る。


「その豚共、私なら退学処分にする。

 が、私は寛大だ。先程の実に優しい罰で許してやる。また、このニーニャが私のコートを汚したら連帯責任で貴様等も殺す。そう伝えておけ」


 ニーニャにそう告げて食事を再開。学食は未だ静まり返っていた。

 勿論、気にせず食事をする。


「この食堂は静かで良いところですわ」

「流石国に尽くす者を育てるだけあって一部は豚の様だが基本は出来た土人が多いようだ」


 ヘルシングの皮肉に俺もそう返すと軽く睨まれた。


「おかわり!」

「ノンナちゃん、口の周りに食べ滓が付いてるよ」


 昼食は恙無く進行した。

 午後になり、国王の使いがやって来て皇帝が俺に会いたいと言うのでお前が会いに来いと返したら、すんなり引き下がった。内心ビックビクだったけど特に何か嫌味とか言われることもなく引き下がっていったので胸を撫で下ろす。


「そう言えば、皇帝に貴方の事を有る事無い事言って丸で我々の神であるかのように言ってしまいましたわ」

「え、何それ怖い」

「いえ、つい調子に乗ってしまって」


 午後、食後のお茶をしていると唐突にヘルシングが思い出した様に俺に告げた。因みに、お茶の会場は相変わらず学園長室。もう、此処は俺の部屋で良いですかね?

 あと、結果報告に関してもノンナ達の言った面白い物は魔導甲冑で、中に木偶を入れて動かせば簡易ロボットになるそうだ。

 ヘルシングに関しても皇帝との面会は普通に資金とか出してくれるとのことで終わった。面会の8割が俺達の事を聞かれたそうなのでヘルシングが俺を有る事無い事言ってスゲー色々とヤバい人みたいに言ってしまったらしい。

 俺はヘルシングを一生恨むぜ!


「まぁ、テメェが来いって言ってホイホイ来るような皇帝は居ないだろうから良いけどさ」

「そうですわね」


 俺が紅茶を飲んでいると部屋に顔が真っ青の教師が一人静かにだが、素早く入って来てトーキンに何か耳打ちをする。トーキンの小心者みたいなキョロ充みたいな動作が止まり、今度はプレゼン新社員みたいな顔になった。

 そして、失礼しますと俺達に頭を下げて急いで出て行った。この場には俺達とゲイリーにそのゼミ生二人が残る。


「何かトラブルかしら?」

「どうせ、あの馬鹿親がやって来たんじゃねーのか?」

「それにしたって顔色が悪かったよ」

「どうだって良いわよ!」


 ノンナの一言に全員がそれもそうかと頷いた。暫くすると廊下の方が五月蝿くなり、突然ドアがバンと開く。トーキンが飛び込んできた。脇汗びっしょりの服から別の服に着替えたらしくローブではなく豪華な服になっていた。


「喧しいぞ、トーキン。

 貴様、扉は静かに開けろと言った筈だ」


 ゲイリーが翻訳。トーキンはそのままゲイリーに何か告げる。何言ってるのか分からんが、俺に素早く耳打ちする。


「む?済まん」


 トーキンがそう言うと俺達の座っているソファーに座ろうとする。


「何だ、貴様?」

「予も茶会に入れてくれ」

「何だ、先程はゲイリーの隣に立っていたではないか」


 トーキンが良いではないか良いではないかとそのまま座ってゲイリーに紅茶を淹れさせた所で、再び扉が開く。今度は静かにだが素早くだった。


「こ、皇帝陛下!

 困ります!!」


 入って来たのはトーキンだった。おぉ、トーキンが分身したぞ。


「お!ラーメンが二人いるわ!」

「ラーメンじゃねぇトーキンだ。一言一句あってねぇじゃねぇか」


 ノンナがガタリと立ち上がってトーキンを指差した。


「ああ、皇帝はハイエルフで、日本のハイエルフは皇帝一族なので顔立ちが似ているそうですわ。で、この皇帝と学園長は姉妹だそうですわ」


 ヘルシングがどうでも良いので忘れてましたと告げる。因みに、ラーキンと言うらしい。皇帝ラーキン。苗字は?と尋ねるとハイエルフは日本ではラーキン家(仮)しか居ないので必要ないし、世界人口で見ても態々区分する程家系が分かれているわけでもないのでハイエルフには苗字がないそうだ。

 パネェ。一応、○○ーキンとトーキンやラーキンの一族に名前を付けて統一しているらしい。まぁ、親の代からしか家系図が始まってない。

 一応、先代は2千年前に生まれたそうだ。爺ちゃん居ねぇの!?歴史解明出来そうだったのに……

 因みにハイエルフはもう3人男女の姉弟が居るそうで、一番の長子がこのラーキンらしく皇帝を継いだとか。長男は軍務で一番偉い元帥を、次男は大臣達の総取り纏めを、次女はトーキンで学校をまとめ、三女はニートらしい。

 魔力適性等が高く優秀らしいがサボり魔で部屋に閉じこもって出て来ないとか。一族の恥とまで言われている。どの時代でもニートは蔑まれるんやでぇ~


「それで、何用だ土人」


 取り敢えず、相手が皇帝だろうが何だろうが偉そうにトーキンと外観全く変わらんので問題無い。

 ハイエルフは皆ムチムチボインなのだろうか?グラサンのお陰でおっぱいガン見してもばれないのでラッキーだ。


「会いたいなら来いと言ったのはお前であろう?」

「ツェペシュ様をお前呼ばわりとは、死にたいのか土人?」


 一応、形だけと言う感じでヘルシングが銃口を向ける。因みに、此処らへんの翻訳全部ゲイリーがガクブルしながらやってる。


「フン!殺気を感じない銃なぞ怖くないわ!」


 ラーキンがニヤッと笑うので、ヘルシングは少々呆れた顔をした。

 まぁ、殺す気もないしな。


「羽虫を殺すのに貴様は一々殺気を出すのか?」


 ヘルシング、まさかのカウンターパンチ。もうやめてヘルシング!

 この返しにラーキンも少し表情を引き締めた。着地地点決まってる?この言い争いの?


「予は羽虫相手に警告なんぞせんぞ?」

「これだから土人は困る。

 ツェペシュ様は寛大なお方で有らせられる。貴様等土人と違って直ぐに暴力で解決する事はしないのだ。もし、ここにツェペシュ様が居なければ私はお前を撃ち殺していた」


 此処で再度俺の名前を出すのかいヘルシング!?ヘルシングは最終警告だ、と言わんばかりに親指でハンマーを下ろす。ラーキンは机の下にある己の左手をギュッと握り締めつつ右手で更に掴んで震える拳を隠した。怖いんだろうな~多分、俺も同じ立場だったらめっちゃ怖い。ヘルシング美人だから無表情で告げると滅茶苦茶怖いんだよ。美人は怒ると怖いって言うもんなぁ~

 しょうが無いな~俺が止めるか。

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登場人物


・ニーニャ

いじめられっ子の平民

ノンナよりも頭が良い

ある意味最も運が良く、ある意味最も運が悪い平民代表


・ラーキン

ニャポンの皇帝陛下

トーキンと同じ顔をしてるけど態度がデカイ

序にトーキンよりもおっぱいが気持ち小さい

徳田新之助ばりに市中をぶらつくが、基本的に爺やが有能で5回に4回は失敗する

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