効率の違い
翌日、俺は開店と同時にホームセンターへ足を運んでいた。
「いらっしゃいませ」
店内を歩きながら、昨日のことを思い返す。
砂――まさか、あんな結果になるとは思わなかった。
園芸用の砂は量が少なかった。
今日はもっと大きな袋を買う。
「……これでいいか」
二十キロ入りの川砂。
値段も手頃だ。
これならしばらく困ることはないだろう。
◇
第一ダンジョン。
いつもの入口付近まで進み、人の気配がないことを確認する。
「昨日と同じなら……」
バックに詰めた砂をひとつかみ取る。
ゆっくりと魔力を流し込む。
「【固定ダメージ+1】」
一粒。
二粒。
三粒。
数えるのも途中でやめた。
手の中の砂全体が、ほんのり温かい。
「行くぞ」
前方にはスライムが二体。
大きく腕を振る。
ぱっ、砂が扇状に飛び散る。
ぷるぷるぷるぷるっ! 二体の身体が同時に震え始めた。
数秒後、音もなくスライムは崩れ落ちる。
「二体同時……」
思わず、息を呑む。昨日は一体だけだった。
だが、砂は広がる。
当たった相手すべてに効果があるらしい。当然といえば当然、しかし。
「これなら……!」
◇
その後の探索は驚くほど順調だった。
スライムを見つける。
砂を投げる。倒す。魔石を拾う。
それを何度も繰り返す。
気付けば袋の中には、青い魔石が次々と増えていた。
「こんなに集まるのか……」
昨日とは比べ物にならない。
それでも魔力の消耗は激しい。
砂へ付与するたびに身体が重くなる。
「まだまだ改良が必要だな」
魔力切れになる前に切り上げる。
無理は禁物。
講習で何度も教えられたことだ。
◇
管理施設の換金所。
「スライム魔石二十八個ですね」
職員が慣れた手つきで査定する。
「合計、一万六千八百円になります」
「えっ?」
思わず聞き返した。
「何か問題でも?」
「い、いえ」
昨日まで三千円台だった。
それが今日は一万円を超えている。封筒を受け取りながら、現実味が湧かない。
「一日で、こんなに……」
もちろん、大金持ちには程遠い。
だが、探索者として生活できる可能性が見え始めた。
◇
その頃、第一ダンジョン。
「なあ、今日スライム少なくないか?」
「俺も思った。」
「誰か狩り尽くしたのか?」
首を傾げる探索者たち。
だが、誰も理由は分からない。
まさか一人の初心者が、砂を投げながらスライムを狩り続けているとは、夢にも思わなかった。
◇
帰宅後、テーブルへ今日の収入を並べる。
「一万六千八百円か」
会社員時代の日給を思えば、決して破格ではない。
だが、この金額は自分の力で稼いだものだ。
「……もう少し効率を上げられないかな」
そう呟きながら、袋に残った砂へ視線を向ける。
まだ、このスキルには自分も知らない使い方がある。
そんな気がしてならなかった。




