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8/8

効率の違い

 翌日、俺は開店と同時にホームセンターへ足を運んでいた。


「いらっしゃいませ」


 店内を歩きながら、昨日のことを思い返す。


 砂――まさか、あんな結果になるとは思わなかった。

 園芸用の砂は量が少なかった。


 今日はもっと大きな袋を買う。


「……これでいいか」


 二十キロ入りの川砂。


 値段も手頃だ。


 これならしばらく困ることはないだろう。


 ◇


 第一ダンジョン。


 いつもの入口付近まで進み、人の気配がないことを確認する。


「昨日と同じなら……」


 バックに詰めた砂をひとつかみ取る。


 ゆっくりと魔力を流し込む。


「【固定ダメージ+1】」


 一粒。


 二粒。


 三粒。


 数えるのも途中でやめた。


 手の中の砂全体が、ほんのり温かい。


「行くぞ」


 前方にはスライムが二体。


 大きく腕を振る。


 ぱっ、砂が扇状に飛び散る。


 ぷるぷるぷるぷるっ! 二体の身体が同時に震え始めた。


 数秒後、音もなくスライムは崩れ落ちる。


「二体同時……」


 思わず、息を呑む。昨日は一体だけだった。


 だが、砂は広がる。


 当たった相手すべてに効果があるらしい。当然といえば当然、しかし。


「これなら……!」


 ◇


 その後の探索は驚くほど順調だった。


 スライムを見つける。


 砂を投げる。倒す。魔石を拾う。

 それを何度も繰り返す。


 気付けば袋の中には、青い魔石が次々と増えていた。


「こんなに集まるのか……」


 昨日とは比べ物にならない。


 それでも魔力の消耗は激しい。


 砂へ付与するたびに身体が重くなる。


「まだまだ改良が必要だな」


 魔力切れになる前に切り上げる。


 無理は禁物。


 講習で何度も教えられたことだ。


 ◇


 管理施設の換金所。


「スライム魔石二十八個ですね」


 職員が慣れた手つきで査定する。


「合計、一万六千八百円になります」


「えっ?」


 思わず聞き返した。


「何か問題でも?」


「い、いえ」


 昨日まで三千円台だった。


 それが今日は一万円を超えている。封筒を受け取りながら、現実味が湧かない。


「一日で、こんなに……」


 もちろん、大金持ちには程遠い。

 だが、探索者として生活できる可能性が見え始めた。


 ◇


 その頃、第一ダンジョン。


「なあ、今日スライム少なくないか?」


「俺も思った。」


「誰か狩り尽くしたのか?」


 首を傾げる探索者たち。


 だが、誰も理由は分からない。


 まさか一人の初心者が、砂を投げながらスライムを狩り続けているとは、夢にも思わなかった。


 ◇


 帰宅後、テーブルへ今日の収入を並べる。


「一万六千八百円か」


 会社員時代の日給を思えば、決して破格ではない。


 だが、この金額は自分の力で稼いだものだ。


「……もう少し効率を上げられないかな」


 そう呟きながら、袋に残った砂へ視線を向ける。


 まだ、このスキルには自分も知らない使い方がある。

 そんな気がしてならなかった。


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