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12話 壊された修復者

 ヘニオを捕らえる騎士たちを横目に、三姉弟は三人に駆け寄った。


「アルバ、だいじょうぶ?」


 ノーチェはアルバの顔を覗き込む。彼は金色の目で彼女を見た。


「……ノーチェ。……ごめんね、迷惑かけて」

「……迷惑?」

「……うん。……何もできなくて、ノーチェに助けられてばっかりで」

「……違うよ。アルバがいたから、頑張れたの」

「……ぼくは、きっかけを作っただけだよ」


 アルバはそう言って作り笑いを浮かべた。



「カント?」


 ルナリアが話しかけても、カントはぶつぶつと何かをつぶやき続ける。


「……資産は……。……使用人は……」

「ちょっと!」


 彼女が叫んでようやく、彼はルナリアに視線を向けた。


「……なんですか?」

「あんた、大丈夫なの?」

「……大丈夫ですよ。ちゃんと、僕を排除しますから」

「は?」


 ルナリアはカントを睨みつける。


「……なんで?」

「僕がいない方が貴女のためになるので」

「……あんたがいなくなるの、やなんだけど」


 彼女がそう言っても、カントは金色の目を彼女に向けるだけだった。



 クラロはイルシオンの前にしゃがみ込む。


「……ケガはないか?」

「……うん」

「……遅くなってすまない」

「……うん」


 イルシオンの表情は変わらない。


「……クラロ」

「どうかしたか?」

「……楽しいって、何だっけ」


 彼は目を見開く。しばらく考えて、クラロは口を開いた。


「……宝石の、ケーキがあるんだ」


 彼女は何も言わない。


「……宝石のように見えるのは、特殊な加工をした砂糖だ。美しくカットされた砂糖は光を屈折させ、虹色に輝く。カットには技術がいるから、妖精たちは切磋琢磨しているな。年に一回行われるコンテストでは様々な宝石ケーキが並び、毎年大盛況だ」

「……」


 イルシオンは金色の目で、ただぼんやりとクラロを見つめるだけだった。



◇



 ヘニオに尋問したところ、目が金色に染まりきると、二日間は洗脳状態から抜け出せないことが分かった。


「帰宅は三日後以降が望ましいだろう。現時点で移動は推奨できない。……今回の件は、ポラール王家にも責任がある。城に部屋を用意させる。必要なものがあれば、何でも言ってくれ」

「……ありがと。カント、歩ける?」

「ケガ等はしておりませんので」

「そう。じゃあ、行きましょ」


 ルナリアはカントを連れて客間へと下がる。


「……アルバ、今日はもう休む?」

「……クラロまで迷惑をかけちゃったね」


 ノーチェはアルバの手をそっと握る。だが、彼の表情は晴れなかった。


「……いろいろありがとう。アルバを休ませてくるね」

「ああ。……君を虐げていた使用人は解雇や自主退職させているが、もし何かされたら言ってくれ」

「ありがとう。じゃあ、おやすみ」


 ノーチェはアルバと手をつないだまま客間へと向かった。

 クラロは書斎のデスクを見る。今回の対応を含めた書類がまだ残っていた。


(……部屋で休ませてもいいが……。イルシオンのことが気になって集中を欠きかねない。時々執務の手を止めて様子を見に行く……。だめだな。書斎を離れる頻度が多くなりそうだ。……ならば)


「イルシオン、その……不都合がなければで構わないんだが……。書斎にいてくれないか? 紅茶やお菓子もちゃんと用意させるから」

「分かった」


 イルシオンは淡々と頷く。クラロは「何かあれば、いつでも声をかけてくれて構わない」と言って書類に向き直った。

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