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夏休みの山奥に洋館でタイムスリップしたら、死体が転がってた。〜棋士の紋章と因果の詰み〜  作者: lavie800


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第二十六話

北山乙子が盤上に崩れ落ちた瞬間、洋館を支えていた論理の柱が音を立ててへし折れた。美鶴が指した「人間の一手」は、未来のAIが算出した数億通りの定跡をすべて無効化し、この閉鎖空間の因果律を根底から破壊したのだ。


「認めない。こんな結末、私が書き換えてやる。タキオンさえ、タキオンの力さえ残っていれば!」

狂乱した北山が絶叫する。その瞳には、敗北を認めぬ執念と、どす黒い殺意が渦巻いていた。彼女は懐から、あの凶器のナイフを抜き放つと、迷うことなく美鶴の喉元へ向けて突進した。

「死になさい、三島美鶴。あなたが、私の輝かしい未来を奪ったのよ!」

銀色の刃が、稲妻の光を反射して不気味にきらめく。美鶴は対局の疲労で立ち上がることさえできず、ただ目を見開いて迫り来る死を受け入れようとしていた。

「美鶴!」

私は叫びながら、無意識に傍らの書架に手を伸ばした。そこには、かつてこの館の主である滝音太郎が愛用していたという、古びた練習用の木刀が立てかけられていた。私はそれをひったくるように掴むと、剣道初段の身体に叩き込まれた本能のまま、美鶴と北山の間に割り込んだ。

「どけ、小僧!」

北山がナイフを振り下ろす。私は木刀を正眼に構え、その一撃を紙一重で受け流した。鋭い金属音が響き、木刀の表面に深い傷が刻まれる。私は退かなかった。ここで退けば美鶴が死ぬ。その恐怖が私の理性を焼き切り、全身の細胞を戦闘モードへと叩き起こした。

「北山さん、もう詰んでいるんだ!」

私は大きく踏み込み、木刀を振り下ろした。北山は全裸に近い姿で身を翻すが、情報の歪みのせいかその動きは精彩を欠いている。木刀の重厚な一撃が、北山の持つナイフを弾き飛ばした。ナイフは宙を舞い、広間の床に突き刺さる。

「あああ!」

北山が絶叫したその時、洋館の天井がガラスのように割れ、巨大な緑色の渦が広がり始めた。


そして、崩れゆく天井の向こう側に、あり得ないはずのテロップが流れる。


【2024年:緊急事態】


そこには、パトカーの赤色灯が雨夜を切り裂いて近づいてくるのが見えた。数人の警察官に囲まれ、手錠をかけられている女の姿がある。それは、二〇二四年における北山乙子だった。

彼女は、二十四年前と変わらぬ、しかし醜くい狂気をその瞳に宿していた。彼女は何かを喚き散らしていたが、その声は雨音にかき消されていく。その横には小野丞の姿が見える。彼女もまた、情報を非合法に入手した容疑で逮捕されたようだ。


天井にいる2024年の美鶴が、叫ぶ。

「過去に北山さんと私が指した将棋の一手が、現代の因果を書き換えたのよ。北山さんが隠し続けてきた太郎さんの殺害証拠や内藤さん、宇曽口さんの無念が晴らされたのよ」


天井の2024年の映像は、北山が殺人で逮捕され、小野丞がスパイ容疑で逮捕されたことを示した。しかし、その後、映像が薄緑色に斜線が入ると、解像度が下がり、やがて映像そのものが消え去った。

テロップが消え、天井の画面も消えた。


再び、二〇〇〇年に戻った。目の前の北山は、恐怖に歪む顔とは対照的に、たわわに実ったDカップの乳房を露わにしているが、北山の身体はゆっくりと透き通っていく。小野丞の身体も透き通ってきた。彼女たちの存在そのものが、この二〇〇〇年の時間軸から切り離され、虚数時間の彼方へと吸い込まれていくようだ。やがて、北山と小野丞は、まるで最初から存在していなかったかのように、光の粒子となって霧散した。


「北山さんと小野丞さんの存在が、歴史から消されたのか」


「ソウ、こっちへ! 離れないで!」


美鶴が私を呼ぶ。洋館の床が砂のように崩れ、私たちは底知れぬ深淵へと落下を始めた。私は必死に手を伸ばし、彼女の細い身体を抱き寄せた。

その瞬間、凄まじい熱量が私たちの間を駆け抜けた。

衣服という概念が、時空の摩擦によって焼き切れる。眩い光の中で、私と美鶴は生まれたままの姿で密着し、意識と肉体が一つに溶け合う「情報の融合」のプロセスに入った。

私の胸板に、美鶴の柔らかな乳房が押し付けられる。水に濡れ、熱に浮かされていた彼女の肉体は、今や驚くほど滑らかで、吸い付くような弾力を持って私を受け入れていた。うなじの赤い龍の痣が光り輝き始める。洋館の天井や壁が緑の渦に覆われ始めた。

彼女の桃色の小さな乳首が私の肌に食い込み、そこから彼女の記憶、痛み、そして私への深い愛着が、濁流となって私の脳内に流れ込んでくる。

「ソウ、あなたの体温が、私をここに繋ぎ止めてくれる」

彼女の吐息が私の喉元で熱く弾けた。美鶴の身体が熱を持っている。彼女のしなやかな肢体が私の身体に絡みつき、剥き出しの下腹部が重なり合う。彼女の秘所に蓄えられた、まだ若く柔らかな茂みの感触が、私の太ももを熱く撫で上げる。極限の恐怖と、それを上回る圧倒的な快感が、私たちの魂を一本の因果の糸へと編み上げていく。

天井には再び映像がながれている。二〇〇〇年の夏の風景が、万華鏡のように粉砕されては再構成されていた。北山が殺した太郎の断末魔、内藤の全裸の遺体、宇曽口の珊瑚のような血。それらすべての惨劇が、美鶴が放った「最後の一手」によって、強制的に塗り潰されていく。


「因果の檻を壊すわ。私たちの、本当の現在へ帰るために」


美鶴の瞳が黄金色に輝き、彼女のうなじにある赤龍の紋が、宇宙の誕生のような眩い光を放った。私は彼女の豊かな乳房の感触を全身で受け止め、その柔らかな重みを噛み締める。指先が彼女の背中を、腰を、そして濡れた茂みの奥深くを探るように這った。

黄金の光が臨界点に達し、私たちの意識は完全に融解した。

これがタイムリープの発動条件なねか。


私は意識を失う直前、背後に緑の渦に包まれた二郎、田口、大内の姿を認めた。五人の運命が一つに束ねられ、時空の壁を突き破る衝撃と共に、私たちは漆黒の闇へと堕ちていった。

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