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百合を愛する魔王と欲望を映し出す鏡の補佐官

モエの兄、タクトが召喚されて魔王軍を作るお話です。

暗黒の魔力に満ちた謁見の間……。特別な魔石に100年間魔力を注ぎ続けてようやく執り行うことの出来る召喚の儀式が厳かに行われた。

まばゆい閃光の後、召喚の魔法陣の上に立っていたのは眼鏡をかけたひょろりとした男。

屈強とは言い難く、おおよそ魔王の器ではない。

集まった魔族たちは落胆の表情を浮かべた。

「……なんだ、ここは!?どうなってる??」

眼鏡をかけた瘦身の男、拓人はキョロキョロと辺りを見回す。

「魔王様、私はアージェントと申します。発言する事をお許しください。」

動揺する長老たちを制し、アージェントと名乗った青年は拓人に話しかける。アージェントは他の魔族と比べとても地味だ。頭に2つの角が無ければ人間に見えるだろう。

「ここはセフィーリアのシャドウミア・アレンの城。人間たちは魔王城と呼んでおります。

あなた様は女神イスカルテ様に次の魔王に選ばれ、異世界から召喚されたのでございます。」

「何?魔王だと?ゲームの話か??それともこれは夢か??

ともかく、僕にそんな暇はない!!

僕はこれから『百合園女学園高等部~純潔なる乙女たちの奏鳴曲ソナタ』の続きをやらないといけないんだよ!!

早く家に帰してくれ!!」

拓人は地団太を踏みながら喚き散らす。

しかし、アージェントは表情を変えることなく淡々と続ける。

「魔王様、残念ながら私達の力では魔王様を元の世界にお送りする事は出来ません。

ですが、勇者を倒し、その魔力を得ることが出来たならば元の世界に戻るゲートを開く事も可能かもしれません。」

拓人はしばらく考え、ふんっとふんぞり返り、目の前の魔王軍の幹部たちを指差した。

「全く、とんでも無いことになってしまった……。

なぜこの僕が異世界で魔王なんてしなければならないのだ。

一分一秒たりとも無駄にはできないというのに!!

僕の推し、ゆりソナの咲良(さくら)ちゃんが待っているんだよ!!

それとも何か!?お前たちが美少女百合カップルにでもなって僕を楽しませてくれるとでもいうのか??

あ??どうなんだ!!」

彼は魔族の幹部相手に全く動じることなく、一方的にまくし立てている。

アージェントは理解できない言葉の羅列に戸惑いながらも感心していた。

(この魔族の顔ぶれを恐れないのはどういうことだ?普通の人間ならば卒倒するだろう。

そして全く理解出来ぬ異界の言葉。ユリ??サクラ??何のことだ。どうしてそんなにもそれに情熱が持てる??)

「魔王様、そのゆりソナとやらのお話に大変興味がございます。

どうかわたくしにご教示頂けませんか?」


そして、拓人は『百合園女学園高等部~純潔なる乙女たちの奏鳴曲ソナタ』、通称ゆりソナの事を話し始めた。

ゆりソナの事を話す彼は饒舌で、事細かくゲームの事をアージェントと魔族たちに話した。

アージェントが拓人自身の話を聞くと急にトーンダウンし、彼が拓人という名前で歳は22歳、異世界では家の警備をしていたということしか話さなかった。

(なるほど、タクト様は女性同士の恋愛を大変好んでいらっしゃる……。これはおもしろくなりそうだ……。)

アージェントの瞳がきらりと光る。

アージェントの本体は「人間の欲望を映し出す魔鏡」だ。

ヒト(人間、亜人、魔族も含む)の欲望を覗くことが至高の喜びなのだ。

最近、彼はいささか退屈していた。だがそこに魔王として一人の男が召喚された。

冴えない風貌の弱そうな男。

だがどうしたことだ!

彼は強い欲望を持っている。欲望は魔力の源だ。

彼の欲望をもっと知りたい!!


拓人はドカっと玉座に座り、神経質そうに膝を小刻みに揺らす。

「それにしても、なぜ画面(視界)の8割が、筋骨隆々のおっさん魔族なんだ。

これでは全くやる気が起きん。」

魔族たちは彼の喋る度にどんどん高まっていく魔力の強大さに恐怖し、委縮していた。

周囲が沈黙に包まれる中、高らかな笑い声が響き渡る。

「ふふっ……これは面白い。歴代の魔王は皆、『破壊』や『支配』を望んだ。でもあなたは違う……。

良い方法があります。この魔王軍を解体し、新たな魔王軍を作れば良いのです。

そう、あなたの好きな美少女達の集う軍団を!!」

アージェントの瞳が、鏡面のように怪しく光る。拓人の内に秘められた、狂気的なまでの「百合への渇望」を映し出して。

「タクト様。その歪なまでの純粋な欲望……私の全てを賭けて、叶えて差し上げましょう。

貴方の望む『美少女だけの軍団』を、私がこの手でしつらえます。」


「タクト様、なにも貴方自ら出向かれなくてもよいと思いますが……。」

拓人はアージェントと共に転送陣を使い、魔界の辺境に出向いていた。

拓人の姿は召喚された時とは一変している。

眼鏡を外した彼の顔は思いのほか整っており、漆黒の鎧を身に着けて背には蝙蝠のような翼がある。

姿を変えることを拓人が拒んだので、顔立ちや姿はほとんど変わらないのだが、服装と翼でかなり魔王らしく見えるようになっていた。

「アージェント、魔族の幹部は頭でっかちで僕の美学をまるで理解していない!

いくらうまく化けていても心の奥にある自尊心や驕りというのが透けて見えるのだ。

僕はまっさらな純粋な心を持つ者を配下にしたい。」

「では、私もあなた好みの美少女に変身しましょうか?

私はあなたの理想をよく理解しているつもりですし、変化も得意です。」

アージェントは矢継ぎ早に様々な少女に姿を変えていく。

「や、やめろ!!おまえまで美少女になったら話し辛くなるではないか!!

お前は今の地味な姿のままでいいんだ!!

少女達はあくまで鑑賞するもので、僕は百合に挟まる男というのが一番嫌いなのだ!!!」

「……そういうものなんですね。奥が深いなあ……。」

アージェントは顎に手を当てる。

それから町を転々とし、多くの魔族に会ったが、拓人の望む人材には会えなかった。

「魔族の町と言っても暮らしは人間とあまり変わらないんだな。」

「そうですね、ここ100年間、大きな争いもありませんでしたし、この魔国シャドウミアは法によって統治されています。

魔族といっても皆が暴力的で残忍というわけではありません。

人間とは対立構造にあるので争いが起きてしまいますが。」

「ふーん……。そうなのか……。

皆、争わず仲良く出来ればいいのにな……。」

拓人はそう言うと黙り、考え込んでしまった。


とある町を歩いていた時、二人の魔族が駆け寄り、跪いて拓人に話しかけてきた。

「魔王様!!私はスライムのレナリアと申します。

どうか私を魔王軍に入れてください!!」

「なっ!私が先に言おうと思ってたのに!!

魔王様!!私はサキュバスのルカーチです!

私を配下にしてください!!」

ふたりは押し合って、私が私がと張り合っている。

「ふむ……。二人ともなかなか見所がありそうだ。

そっちのスライムは戦士タイプだな。

もう少し髪を短くして、服は軽鎧でスカートにはフリルを!!

良い感じになってきたぞ!!

そっちのサキュバスはあざと過ぎだ。もっと肌を隠してちょっと恥じらって!!

そして髪はツインテール。そして仕上げに星型のロッドだ!!

あとは……。二人で抱き合ってみてくれ!!」

喧嘩していたスライムとサキュバスだったが、魔王に言われるがまま姿を変化させていき、二人で密着しポーズを決める。

「か、完璧だ!!ぜひ二人とも魔王軍に入ってもらいたい!!」

魔王は膝をつき、二人に手を差し伸べる。

スライムとサキュバスは抱き合ったまま呆然としていたが、みるみる目に涙があふれていく。

「私、力も弱くて誰にも相手にしてくれなかった……。

そんな私を必要としてくれるなんて……。

魔王様!!一生あなたについてゆきます!!」

「私も、サキュバスとしては半端者で魅力がないと馬鹿にされてきました……。

嬉しいです。魔王様に忠誠を誓います……。」

「おお、僕について来てくれるか!!お前たちをわが四天王に迎えよう!!」

そうしてスライムはレナ、サキュバスはルカと呼ばれるようになり、魔王のお気に入りとして四天王入りを果たすことになった。


「もっとだ! もっと属性を詰め込め! 幼馴染、身分差、敵対関係からの和解……! この魔王軍を、全方位どこを向いても『尊い』が溢れる百合の聖域にするんだ!!」

拓人は立ち上がり、興奮気味にアージェントの肩を叩いた。

「御意のままに。……貴方は貴方の欲望が深ければ深いほど美しく輝くのですから。」

アージェントは恭しく一礼する。その鏡のような瞳には、熱弁を振るう拓人の姿と、彼によって「百合の園」へと塗り替えられていく世界の終焉が、美しく映し出されていた。

あまりGLの事を知らないので、ジェミニにいろいろ相談してみました\(^o^)/

便利だな~

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