27/133
その27 朝 夕暮れ
朝
覚めきらぬ意識に
君が代行進曲が
響いてくる
あ
こんな時代になったのか
とうとう
いや違う
スーパーの宣伝だ
そのはずだ
ほら何か言っている
……聞こえない
宣伝文句が
……男の声だ
空を
断続的に射撃する
低く太い
男の声だ……
やがて
曲も声も
遠くなったが
夕暮れ
老人は
窓を見ている
動かぬ足
小さな部屋の中で
終わっていく日々
青味を帯びた瞳に
夕陽に染まる窓が
点っている
窓の向こうを
駆けていくもの
ふしくれた
硬い指のあいだで
煙草が
燃え尽きる




