相対的な価値と負け(2)
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ファミネイ達は戦闘準備をしている際もネットワークを使い、ブリーフィングを行っている。しかも、データでやりとりをしているため、会話よりも多くの情報を用いて、短い時間で簡潔にできる。
司令室から送られてくるデータを元に各員は優位になる武器を選択しているが、困っているのはファイター勢だ。
接近武器はひとまず使用は禁止されては、それを得意とする者達にとっては何を選ぶかが重要になってくる。
皆、銃器の扱いは1通りできるが、その癖を熟知しているわけではない。
光学兵器なら、発射までのチャージ、発射タイミングは実弾とは全く違い。仕様も設計も大きく違ってくる。
実弾はその場合、発射によるタイミングの癖は少ないが、口径による反動の違い、威力、連射性、射程など選択肢時点での違いが多い。
そして、自分の戦闘スタイルも武器に合わせる必要がある。
大体はファイターは接近武器以外の戦闘スタイルは持ち合わせているが、こういった場面でもなければ披露することは少ない。
そして、今回のように死力を尽くす場面では些細なことが命取りになる。無難だけでは物足りないのだ。
一部のファイターは元々銃器を主体とするため、あまり困っていない。だが、その反面この場面ではファイターとしての役割に強い意味が持ってくる。
『こちら、レン。初弾後に正面に切り込みをかけたい』
レンはこの基地での大ベテラン。この場面も何度も経験している。
大軍である敵の分断を目的とすれば、切り込み隊による攪乱は必要であるが、本来その役目を担うファイターは軒並み武器の制限でマルチに転向している。銃器主体とするファイターには本来のファイターとしての役割をこなす必要がある。
『B班クローゼ、行動許可する。後、2名、いや3名はいるな。他に志願する者は』
クローゼは第3部隊長、また、B班全体での長も行う。レンはB班に所属しているため、許可はクローゼに問い合わす必要がある。
そして、この問いかけは当然、A班側にも尋ねられている。
『私、やりたい』
その問いかけに真っ先に乗ったのはレモアだった。
『貴方には無理よ』
と、速攻で否定したのはケイティ、レモアとは同室のA班のベテラン。レモアの技量ではこの場は乗り切れないし、今選択している武器レーザーライフルでは援護すらきつい。
シミュレーションの結果はあまり悪くはないが、ただ負担の部分では適していないことは示されている。つまり、長時間の戦闘には耐えられない。
『ここは私が行こう』
そもそも、ケイティは銃器を得意としたファイターである。こういったことはわりと得意なので名乗らなくとも、お呼びがかかっただろう。
『こちら、グラス。その切り込みに参加したい』
グラスも機動力と手数を重視したファイター。レンにも鍛えられた乱戦時を想定した戦闘スタイル。中堅ながら、この手のスタイルではこの基地でも右に出る者はいないだろう。
『後は誰かいないか』
レン、ケイティ、グラスどれも銃器を得意としたファイターでベテラン勢。これに付いてこられるファイターは銃器に限定すれば少ない。
『なら、ルイス。入れるかしら』
クローゼはルイスに問いかける。ルイスは中堅だが、銃器と接近武器の二刀流を両立させたファイター、本人曰く、竜騎兵。この場面でも、その特徴は十分に生かせるはず。
とはいえ、悪くいえば銃器、接近武器もどっちつかずで極端な特化ではなく、汎用性を重視したモノ。
『……了解。ただし、諸先輩方の足を引っ張らないようにサポートに回らせてもらいます』
そう、癖の強いベテラン勢ではルイスの特徴も癖は強いモノのレベル差は明確である。
ベテラン勢はそのにじみ出す威圧感で新人いびりなどする必要もない。中堅のルイスでもあまり関わりたくはなかった。
だが、シミュレーションそんな感情論は考慮せず、その人員で良好な戦果が得られることを示している。分断による成果はこの戦闘に置いて重要なことが証明されている。
『他に提案はないかしら』
ヴィヴィは尋ねる。序盤の戦闘の流れが固まったことで、他のファイターも武器が選択しやすくなった。だが、中盤ぐらいの流れを固めておきたい。
問題が出てくるのは中盤にかけてのはずだからだ。
『中盤まで爆発系を残しておきたいのですが』
ヴェラは提案する。ヴェラはアタッカーで知能派。戦況の読み解く目は戦闘要員の中でも飛び抜けて高い。
今は爆発系を初手で使い果たすことで想定している。中盤まで残せば、それはかなり使い道がある。ただ、戦闘エリアが混乱しやすく、爆発の影響は味方へもできる可能性も高い。
また、重量的、装弾数的にも中盤まで残しにくい。
『ハンドグレネードでも中盤で補充できれば、十分かと』
『タロスのことも考慮すると、ハンドグレネードでも大きな効果が得られるか。中盤に補充できるように準備をさせておきましょう』
その提案に格納庫ではハンドグレネードが準備される。
『しかし、ヴェラ。その量は持ちすぎよ』
得意とするランチャーだけでなく、ハンドグレネードも多数、銃器としてライフルも持ち合わせ、その上、弾を多めに所持。
『一応、重量的にはまだ持てますが』
ヴェラは他の者の倍近い弾薬を持っている。それでも、問題がないようにアルミカンによる変換をうまく使って調整済み。ヴェラはこういった技能も持ち合わせている。
『エンジニア部門より、現在弾薬のストック分が心もとないため、アルミカンで制作しています。戦闘時、弾薬の補充が間に合わない可能性もありますので、終盤は接近武器、光学兵器での対応を願います』
爆発系が序盤の主体となるため、既に用意されている弾薬、火薬類は少なくなっている。
まだ倉庫にはアルミカンで変換されたモノがあるが、かなりの量が必要となり、展開に対しても時間が必要となる。下手をすれば、派手に使い切って終盤弾薬切れとなる可能性が現時点ではあり得る話になってきている。
いかに序盤、中盤で有効打である爆発系でタロスを倒しきれるかが、この戦闘で重要になってくる。
『司令室からは何か情報、提案はないかしら』
『防衛機能はできるだけ維持してくれると助かります。とはいえ、こちらでも維持する戦術が導けないのですが』
司令室も被害を押さえるために必死である。
『防衛機能の前で、我々が囮になる手はどうでしょうか』
ヴェラはアイデアを提案する。
『効果は多少期待できますが、攻撃目標がファミネイにシフトするだけでリスクに比べるとあまり評価できませんね』
ヴェラの提案に対して、シミュレーションの結果がそうであった。
『いかに広域に分断させて、攪乱するのがベターのようね。それで割り出してみて』
クローゼの方はこう提案する。
『こちらもあまり結果は変わりませんが、これ以上は良い手はないと思われます』
『でしょうね』
ヴィヴィはそう漏らす。自身も今回が初めてではないから、よく知っている。この戦闘では少々の数の多い少ないやアイデアでどうこうならない。
ひとまずは無難にこなすしかない。
『せっかくの出番を奪われた気分』
レモアはそう言う。派手さを好むファミネイにとって戦闘で目立つことも決して、嫌いなことではない。だが、ことこの大規模戦闘においては経験者は誰も苦労しても、派手さを求めない。
派手さを求めた、その結末を知っているからだ。
『あまり、前に出ようとはしないことよ。すぐやられてしまうから』
A班のミヤコはレモアにそう語る。自身も大規模戦闘は3度目ではあるが、やはり怖いという感情はある。それでも初めて経験する者達への配慮は忘れてはいけない。
『ここはお姉さん達の方が前へ出ていかないとね』
ミヤコの友人であるナギもそう語る。2人ともマルチのため、戦闘に置いてそれなりに前に出る機会も多い。だから、戦闘時のリスクはかなり分かっているつもりだ。
『まあ、ベテラン勢ほど前に出て行けないけどね』
そうミヤコは語る通り、前へと出れば死がかなりの確率で待っている。
『2人とも我々の上司はアキラ殿になったわ。どちらにしろ、先ほどの提案はアキラ殿の確認無しでは許可されなかったでしょうね』
ルリカは伝達された情報を確認していた。
『大丈夫でしょうか』
カレンはそう漏らす。
『こないだの、アキラを前にしての勢いがあれば大丈夫よ』
レモアはそう言って、カレンをからかう。
『各自、準備はできている』
ネットワークでの会話は数分とかかっておらず、これでも一部を抜粋しただけ。
それに装備の準備、確認も実際に体を動かし用意していた。既に武装も展開済みの者も多い。
敵にしても、目の前に近づいている。
『さあ、そろそろ出陣よ』
格納庫のリフトは地上へと上がり始めていた。地上に出れば、バカピックをすぐに目視で確認できるだろう。
現時点でのシミュレーションの戦果は死亡は5、6名、負傷者15名前後。それは皆にとって周知の事実であるのに、みんな明るく出撃をしようとしている。
その犠牲者に誰もが当てはまるというのに。




