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重機兵少女ホラィ・ト・スフィ  作者: ツカモト シュン
第2幕 ライトダーク
50/58

相対的な価値と負け(3)


   3


 結果は激戦であった。


 シミュレーション通り、死者を出し、負傷者を多く出す壮絶なモノであった。


   4


「それで、被害状況は……」


 司令室でただ黙って状況をモニターしていたハヤミは渋い顔で尋ねた。


 戦闘自体はやってきた48体をすべて倒して、その後の援軍の様子もない。一応、戦闘は終わったと見ていいだろう。


「戦闘参加のファミネイは死亡4名、戦闘不能11名。負傷、精神的、消耗率の激しい者に関してはこれからですが」


 戦闘開始前のシミュレーションよりは一応、善戦した結果ではある。


 それでも死者、戦闘不能が出て、控えていたC班も入れ替えで対応。戦闘要員のほとんどがこの戦闘に参加した。そして、今現在の片付けまで含めれば戦闘要因以外の者含めて基地内の全員が参加している。


「戦闘に出た半数は被害が出たか。治療は既に行っていると思うが、生存を優先に行え、これ以上、死なせる」


 当然、それは医療班も分かっていること。今も必死に彼女達の戦いは続いている。


「幸い、基地内のファミネイに死亡者はおりませんが、軽傷の者は何名かは出ています」


「そうか」


 状況を聞いて、ハヤミの渋い顔は変わらない。そして、引き続き状況が報告される。


「基地内の被害は軽微ですが、防衛設備を含め地上の舗装部分は大半やられています。また、地下1階部分も軽微なのですが、フレームのゆがみなどで修復には少し手間がかかりそうです」


 散々の結果であるが、まだ基地機能としては防衛設備以外は被害がなかったため、問題があるレベルには到達していない。


「……後、援軍の気配は今の所ありません」


 そもそも、いつも防衛にすぎない戦いでバカピック戦力をどれほど削ったのか分からない。恐らく、1週間もしない内には少数であれ攻めてくるだろう。


 むしろ、敵はこれを機に攻めれば、向こうの勝利は手堅い。それなのに、人類の敵から援軍の様子はない。


 これほどの被害を出しておきながら、奴らのユニークさは健在である。


 ひとまず、ハヤミはため息を出す。もはや、涙も涸れ、ため息すら吐き疲れた。意図してため息を出さないと、あきれの方が先に出てしまう。


「では、C班を引き続き待機とし、A班、B班は休憩を取るように」


 夜勤明けと戦闘も参加したC班ではあるが、戦闘の主を担い、心身とも疲れが強いA班、B班は満身創痍。身体が無事でも、ショックを受けた者も多くいる。


 C班はまだ負傷者はおらず、直接的にショックを受けている者も少ない。引き続き待機させたとしても愚痴で済む。それで済むのなら、この場は安いモノである。


「ひとまず、アキラ。3名を無事に生き延びさせたな。それで十分だ」


ハヤミはただ、後ろで見ていたアキラに声をかけた。戦闘が始まったからは一度として声をかけることは暇はなかった。


 カレンらに関しても、無事生存をしていた。もっとも、新人で大規模戦闘初体験では周りもサポートに徹しさせて、生存を優先させていた。その経験が後に生きてくるのだから、今は役立たずであっても、後々はおつりが来るぐらいの価値になる。


 それでも楽をさせてもらうほど暇で気楽な戦闘ではなかったが。


「どうであれ、最良、最善ではなく、結果に対して許容できれば十分だ」


しかし、その言葉にアキラは納得していない。まだ、被害が押さえる手があったのではないかと考えているからだ。


「当然、納得がいかないか」


 それもそうだ。被害は少ない方がいい。それができるなら、それがベストだ。


 だが、多少の被害で事が済み、その後の補充も問題もなければ、それもまたベストといえる。


 人工生命体であるファミネイの運用とは後者にある。安いコストで使い潰し、交換するコストも優しい。少女達の被害などささやかなモノである。


 これはハヤミも関わった運用だが、実際、都市にとっての方案である。自分達にいろいろと都合がいいからだ。


 それはハヤミには嫌というほど、身にしみた経験だが、アキラにはそんな裏があることも知らない。まだ、若く、この仕事も何も知らないから当然だ。


「まあ、確かにそうだ。だが、私がこのような態度を取るのも、この過程、結末を何度と体験しているからだ」


 実際、ため息すら出なくなっている有様。


 それを経験で理解するにはアキラにはまだ若すぎる。だから、言葉でフォローが必要となる。


「1つ言えば、私の最善と都市の最良がこれであること。お前が考えるベストは違うにしろ、それは私や都市の許容できることでなければならない。お前だけの許容できる考えでは駄目なのだ」


 アキラはそう言われると反論はできない。新人で右も左も分からないアキラにとっても、人類を守る任務が与えられている。それはファミネイを守ることではないと分かっている。


 そう、分かっていることだ。


 それでも最もより良い方法があるのではないかと頭がよぎる。


 ハヤミにもその気持ちはとうに忘れたが、その考えはいまだ思っていること。だから、悩んでいるアキラを見て、そんなことを考えていることなど手に取るように分かる。


 だが、手持ちの状況ではこれが精一杯、多少改善してもほんの少し良くなる程度だ。


「相対的な価値で、最善、最良ならたとえ負けであっても問題ないのだ」


 基地は守られ、都市に被害無し。被害となったファミネイの補充も資源的に痛くない話。


 壊れた基地もアルミカンの修復で可能。人類側はわずかな労力を犠牲にして防衛を成功させた。


 都市にとっても、ほぼ資源を減らすことなく、わずかであっても人類の生存が確立した事実は喜ばしいことである。


「……ただ、相も変わらず、守備側だけに戦果はないがな」


 たとえ、戦術的な負けだとしても、都市の相対的な判断では問題無しである。だが、それは戦いに置いて特に意味のないことである。


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