表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
重機兵少女ホラィ・ト・スフィ  作者: ツカモト シュン
第2幕 ライトダーク
42/58

白ウサギの午後 『ルリカ』パート(2)

 動力室を出て階段を上がると、そこはエンジニア達の使用する部屋が並んでいる。


「ここはエンジニア部門のフロアとなります。地下2階にも同様に存在しています」


 開発室だったり、研究室だったりと様々な部門事に部屋が分かれている。


 とはいえ、その部屋、部屋に様々な設備や工作機械があるわけではなく、開発ツールのみで仕事をこなすことができる。


 それを可能としているのもアルミカンである。設計図だけで自由自在に作り出すことができるからだ。


 アルミカンで唯一できないのは、バカピックの残骸を元通りにすることだ。


 エンジニア達はバカピックの残骸から、その技術などを研究しているが、お手上げ状態で、構造も原理も正確に把握していない。


 だから、アルミカンは使えない。


 ゆえに残骸は直に触れて、ばらして解体して、構造を調べて、破片から推測して、かさばって邪魔となれば素材としている。


 これはなかなかな重労働である。


「出入りは特に管理されている訳ではありませんが、部門が違うため、私達では歓迎されたり、されなかったりとしますので、詳細な案内に関しては省かせて頂きます」


 基地内の組織関係に関していえば、みんな仲良くやっている。とはいえ、いがみ合いが決してないわけでもない。


 やはり、部門も違えばお互いの意見が存在してくるため、どうしても負担を負う箇所が出てくる。


 組織とはそういった存在なのは、この時代になっても変わらない。


「その代わり、後でエンジニア部門の組織図と現状に関して資料を送っていただくように連絡しておきます」


 ルリカはそう語るが、これに関しても先ほどの話になる。ルリカの立場ではその資料を集めるのも簡単にすむ話とはいいにくい。


「行くにしても、お願い事は厳禁です。もしお願いをするのなら、その前にお菓子等を差し入れして受け取った後でするといいです」


 この発言にエンジニアに限った話ではない。少女達の性質をそんなモノである。どうしてもおいしいモノをもらってしまっては、それを拒否は難しい。


 実際、先ほどの資料の話もルリカはこの手で乗り切ろうとしている。


「一応、地下3階には格納庫で使われる部品の倉庫もありますが、ちょっと奥へ行くと散らかっており、危ないのでこちらも案内は省きます」


 アルミカンは収納にも使える。ただ、その際にはエネルギーを使う。


 スペースが確保されている格納庫ではすぐ使うモノはそのままの状態で保管されている。


 また、先ほども触れたがバカピックの残骸も研究、解体して素材とするため、そのままの状態で一時保管される。そのため、倉庫内は散らかりやすい。


 逆に食料などは多く保管しておきたいことや保存目的でアルミカンによる変換で小さくして管理されている。ただ、あくまで小さくするだけで質量が大きく減ることはない。


 アルミカンはそこまで法則を無視した技術ではない。


「それ以外では居住フロアもありますが、こちらも特に説明は不要と思います」


 実際、多くの部屋がある移住フロアを1つ、1つ見て回る訳にもいかないし、歓迎されたとして部屋の中に案内されても時間がいくら合っても足りない。


 これに関しては地図で事が足りる。


「さて、この基地で主となる箇所は残りは格納庫ぐらいですが、先ほど戦闘もありましたので格納庫自体には今、立ち寄らない方がいいですね」


 これに関してはアキラも納得していた。自分が目立つ存在であると理解しているからだ。そして、戦闘後という独特の雰囲気が混ざると余計に危険なのは目に見えている。


「どうしても、我々は目新しいことは敏感ですから」


 ルリカもそれに関しては否定しようがない、少女のさがである。


「ひとまず、地下1階へ移動しましょう。上から格納庫全体を見える場所もありますので」


 そういって、再び階段を歩き始める。


 * * *


 地下1階は基本、誰も寄りつかない。戦闘時は被害が想定されるため、待避させられるからだ。


 倉庫代わりにしても、重要性の薄いモノばかり。食料などは置かれることは当然ない。


 そんな地下1階には数少ない意義のある部屋がある。格納庫を覗ける部屋だ。


 格納庫は地上を行き来するリフトがあるため、地下1、2階の吹き抜けとなっている。


 そんな構造から見学用に作られた格納庫を覗ける、ある種の観覧場が作られていた。


 基地の完成した当初は見学する人物もいたが、次第にありふれた日常となったため、物珍しさで来る者もなく、今ではその用途で使われることはなかった。


 だから、格納庫にいる少女達はこちらの存在に視覚からは気づいていない。誰かいると思っていないからだ。また、窓には角度もあり、下からこちらを視認することも難しい。


 ゆえに少女達の素が見ることができる。


 新人のアキラにとって、説明の場にとっておきである。


 そんな部屋を前にしてルリカは部屋に誰かいることを感じ取った。それは気配から察したが、情報としては誰かは示されてはいない。情報が隠されているのだ。


 情報を秘匿する者は多くはない。何しろ、いざとなれば、他の手で明らかにすることは容易だし、現にこうして気配を感じ取っているのだから。


 とはいえ、部屋に誰かいるにしても特に危険なことはないため、ルリカは部屋を開けて確認する。


 部屋の中にいるのはレモアだった。


「奇遇ね」


 レモアは居場所を再び秘匿していたため、この出会いは偶然ではある。ただ、レモアからすれば、こちらに向かってくること自体は気がついていたことだろうが。


「何をしているの」


 ルリカはレモアに尋ねる。ただ、まともな答えは期待していない。


「さっきまで地下1階にいたのだけれど、戦闘が始まったからいったん待避して、戻ってきただけよ」


 その返答自体は正直なモノであるが、いささか奇抜な点もある。


 確かに先ほどまで戦闘が行われていたため、地下1階からの退避が命令されていた。それが解除されて、また地下1階に戻る理由は薄い。


 それを平然とするのは、誰もいないだけに人目に付かないことを利用して、そのメリットを利用する限られた者達だけ。


 つまりはサボりである。


「そう」


 レモアは怠けることの許された非番であるのに、サボりなどせず、堂々としていられるのに地下1階で用があるとはよほどの変わり者である。


「それより、格納庫の説明でしょう。私に構わず、どうぞ」


 ルリカはひとまず、その言葉通りレモアの存在を無視して、説明を再開する。


「格納庫のことはご存じと思いますが、我々、戦闘要員の出撃場所となります。ただ、格納庫本来の意味としての武器、装備の整備や点検よりは地上との連絡橋としての意味が強いですね」


 そういった点を考慮すると、この基地の格納庫は意味合い、構造的にも大昔の航空母艦に似ている。


「整備はアルミカンで行えば、広い場所を必要としませんので」


 実際、戦闘の終えた少女達の武器はエンジニア達が回収して、アルミカンでのチェックを行い、問題があればアルミカンにて修復をする。


 武器をばらして、点検する必要がないため、大きなスペースは不要である。


 弾に関してもアルミカンで補充を行うが、ただ、弾薬等は消耗品のため、基地の備蓄から使われていく。


 また、アルミカンはエネルギーを使うため、無傷に越したことはない。


 今回はあくまで爆発による脅しのため、無傷で住んだが、ただ、爆薬等の消費は痛い。


 何しろ、爆薬の材料の多くは自然資源であるため、行動範囲の限られた今の人類には貴重品。いろいろと代用品と地下という土地で生産は行っている。


 アキラは窓から下の様子を眺める。少女達は集まって、何かしている。ただ、集まっているだけで動きがないため、アキラには何をしているのか分からない。


「今は何をしているのですか」


「戦闘後のデブリーフィングの最中ですね」


 ルリカはそう答える。動きがないのも無理がない、コアを介してネットワーク上で戦闘データを元に話し合っているからだ。そのため、データ上で話し合っている。


 そばにいるエンジニアもデバイスを介して、その話に参加している。また、情報もモニターとして宙に映し出されてはいるが、ここからでは見えにくく、内容までは把握することは困難であった。


 端から見れば、ただ集まっているだけで何をしているか分からない。


「さて、ここまでで何か質問はありますか」


 アキラは首を横に振る。


「我々もただ基地の機能を説明しましたが、その実態や日常というのはまだ経験不足ではあります。そんな我々に説明というのは、言葉通り、言葉足らずな箇所が多かったと思います。何かあれば、後でも良いのでご質問ください」


 ルリカは淡々と説明をしていった。さて、アキラとルリカはこう接していた訳だが、実際にも淡々なモノで、特別どうこうということはなかった。


 確かにカレンの場合はバレバレであったが。


 ルリカにとって、アキラは自分の上司であり、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、指示に従い、それを支えるだけである。


 だから、それ以上もなければ、それ以下にもならない。淡々と進めるだけであった。


 そんなルリカだが、レモアに関しては日頃の行い、現時点でも多少読めない行動だけにこの後の案内に不安要素しかなかった。


「しかし、レモア。貴方が何を案内するのか、気になるのだけど」


 だから、アキラを前にしても口に出して聞いた。


「ああ、そのこと。このフロアはまだでしょう。それに私の自室もまだだし」


 レモアは何のためらいもなく、そう答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ