ウェポン・オブ・ロマンチック(2)
レモアの思いつきによる『接近と射撃を両立した武器構想』は多くのエンジニア達を巻き込んで、いろいろなプランが出されることになった。それらのプランをレモア本人、また機動力を駆使する戦闘要員のファミネイらにも意見を聞き、反映させていった。
その中でも好評かつコストバランスに優れた、3つのプランを検証のために試作された。
『プラン1:レーザー2連装ライフル』
単純に2個付けることで火力増加を考えた案。ただ、実行に当たり全体のバランスを考え、1基のレーザー威力は押さえられ、2基同時で発射することでようやく真価を発揮する。
それでも現行のレーザーライフルの1.5倍強程度でしかなく、エネルギーもかなり食う結果に。重量も機動力に影響が出ないようには努力したが結構重い。計画段階では3連装以上も検討されたが、現実的には2連装止まり。
使い勝手の良いアイデアなのだが、形にしていく中で高機動のコンセプトより重装に近い格好になってしまった。今後、詰めるとしたら後方支援向きの方がいいかもしれない。
『プラン2:ワイヤー付きレーザーブレイド』
鎖鎌からアイデアを得た、変わり種ではあるが、近接、中距離を両立した武器としては割と成功しているため、採用された。
ただ、軌道を巧みにコントロールするには使い手の技量が必要にはなってくる。また、サイドアームの位置づけだけに大きな威力は期待はできない。それでも開発は容易だったことと使いこなせば面白い武器ということで採用された。
『プラン3:レーザーライフル・アンダーバレルサブマシンガン(以下バレルSMG)』
レーザー2連装ライフルとコンセプトはかぶり、また当初の遠近両用からも矛盾する射撃×射撃。だが、以外に計画段階ではこれが好評であった。
レーザーのメリットは弾薬コストがほぼゼロ。また、威力、照準など空間の影響をほぼ受けない。威力制御が容易などメリットが多い。
ただ、デメリットも場合にもよるが多い。対レーザーの装甲では効き目は薄い。また、発射時エネルギー消費するため、コアに負荷が掛かる。コアはすべての機器と連結しているため、連発をすれば機能低下に繋がる。
そのため、レーザー兵器のみの部隊編成は基本的にない。武器は多様でないと戦闘時は詰んでしまうからだ。
このレーザーライフル・バレルSMGはお互いのメリット、デメリットを打ち消し、同時発射により火力の増強もできる。レーザー2連装ライフルのデメリットを補った形である。
また、全体にいえることだがグレネードランチャーを付ける案はコンセプト外として出ていない。爆発系はある程度、離れて使わないと自爆するためだ。近距離で扱うモノではない。
同様に古来より運用されたアンダーバレルショットガンも案として出ていたが、バーピック戦を想定すると使えないため却下された。
何しろ図体がバーピックの図体はでかいため、ショットガンで撃たなくとも大体狙っていれば石を投げても当たるからである。当然、回避行動は取るため、たとえではあるが。
また、ショットガンでの射程は短い上に、威力が拡散するため、バーピック相手ではダメージは期待できない。それでもショットガンを使うのであれば、それは戦闘以外のツールとして使うぐらいしか今では用途がない。
「地味ーに無難な感じになったわね」
レモアは出来上がったプランを見てそう語る。レモア自身、この話を持ち上げた時は、こうロマンある話だったはずだったのだが。
「いろいろな人の意見も反映しましたから、現実的な形にまとまりました」
「いや、そうではないでしょう。剣からぱっかと分かれて強力なレーザーを撃ったりするような。そう、ロマンのある武器がコンセプトだったのに」
それに初めから話に付き合っていたエンジニアも困り顔である。
「考えてみると部隊であれば、お互いが補いますから、そんな武器よりも現実的に使える武器の発想にアイデアがシフトしたのかもしれませんね」
機動力を生かす武器から、近接、射撃のできる武器となり、それが多人数の考えた結果、エンジニアがいう流れとなったのだろう。
「そもそも、そんなロマン武器があって、1人で対応できていれば、今バーピックはいませんよ」
そんな物語にあるような完全無欠な武器であれば、物語同様悪役は一掃されている。それは残念ながら今のところできていない。
「取りあえず、せっかくプランを形にしたので検証だけは付き合ってください。司令にも話は通してあるので、ここで逃げられませんよ」
いろいろと面倒なことになったとレモアは思った。
もっとも、試作されたといっても設計図までの話。ここからシミュレータで検証することで問題点や精度を上げていく。その際のシミュレータはファミネイともリンクして行われる。
この場合、それを行うのはレモアとなる。
以下がシミュレータによるテスト結果となる。
『プラン1:レーザー2連装ライフル』
良好ではあるのだが、エネルギー消費がひどく、使用後のエネルギー立ち直りを考えると機動力を生かしての使い方は不向きと分かった。
結局、試作段階でも思っていた重装案としては使えるとして事ははっきりとしたので、このプランは時間があれば進めることになった。
『プラン2:ワイヤー付きレーザーブレイド』
これも決しては悪くはないのだが、訓練なしでは命中率が悪い上、高機動で駆使するにはさらに困難。効率よく使うには先端に推進力を持たして、補正をかけることが必要そうである。
鎖鎌自体、近接武器に対する武器だったので、現在の戦法ではその運用自体を根本と見直す必要がある。
それでもいろいろと面白そうな武器であることは今後の兵器運用と開発に決して無駄にならないと司令に提案することになった。一応、こちらも時間に支障がなければこのプランは進めて良いという結果になった。
『プラン3:レーザーライフル・バレルSMG』
こちらは問題はなかった。ただ、元からサブマシンガンの有効射程は近距離であり、効果は発揮するには接近するしかなかった。
このコンセプトは元々、レモアが思っていたことだからレモア自身には問題がなかった。
ただ、近接するリスクを考えると万人向けのプランではなく、そこを補ってアサルトライフルに置き換えてもコストと重量増なるだけ。また、それでは当初のコンセプトからも外れる。
意外にありと思っていたが、特化しすぎたプランという結果になった。そもそも、聞いていた相手が機動力を得意とするファミネイ達だから、当然でもあるのだが。
それでもレモアは割と気に入ったので実戦で使ってみたいと提案。だが、すぐに司令からは却下された。
理由は2個の武器を1個の武器とする必要もなく、やるなら両手で使えばいいこと。それに関しては拒否されていないので、今度の実戦で両手を使ってやってみようとレモアは思っていた。