ファミネイの入浴事情
本エピソードは入浴シーンのみです。
カレンらは先の戦闘も終えて、シャワーを浴びにやってきた。
基本的にシャワー室は戦闘が終わると混むことがあるが、今は3人だけの貸し切りである。
「意外に面倒くさがりのレモアに限って、入浴派なのね」
シャワー室には20台のシャワーヘッドが簡易的な壁とともに用意されている。
また、奥には数名が入るには十分な浴槽がある。
「どうも、水の中に入るのは苦手で」
カレンにしろ、ファミネイは水に入る、また濡れること自体は苦手な者が多い。そのため、入浴をするのは少数派なため、浴槽は大きいモノも用意されておらず、シャワーヘッドの方が多くセットされている。
また、風と光などで汚れを取る、水を使わないシャワーも存在する。こちらの利用者も多い。
「とはいえ、地上に上がるとどうしても汚れるからね」
ルリカは丹念に地上で付いた土汚れを洗う。最もボディスーツで覆われているため、主な汚れは顔とスーツ内の汗になるが。
「シャワーでないと汚れが落としきれないのが、毎度ながら酷ね」
水を使わないシャワーはあくまで日常生活での体内に付着する汚れに対して使われるだけに、戦闘などの酷な環境下では水を使うシャワーが汚れを落とす点では手っ取り早い。
逆にレモアの方は汚れを落とした後、すぐさま浴槽に入り込んで、鼻歌の1つも披露させながらリラックスしている。
当然、ここはシャワー室。
少女達はいつものボディスーツを脱いでいる。
それでも首元のコアだけは体の一部であるため、取り外されてはいない。
戦闘要員でなければ、コアはアクセサリー同様、身に付けるだけで済むが、戦闘を行う者達のコアは各種観測機器とそれを管理する情報機器に自身との接続が必要となるため、本当によほどのことがない限りコアは外されることはない。
そのため、コアには防水加工は当然されている。もっとも、コアの核融合炉を元にした技術であり、防水どころか、並大抵の爆発では壊れることはないのだが。
「それにしても、どうしてこうも差があるのかな」
カレンは何も身に付けていない、自身のフラットな体を見ながら、そう口にする。
他のファミネイと比べての身長差だけではなく、体格など差も含めてのことだ。
「別にいいじゃない。体格差なんて、そんなに関係ないことだし」
ルリカはそう語る。
確かにカレンは背が低い。
その差はファミネイの制作過程にある。実際に生を受けてからの成長もあるため、背の低さぐらいはもう数年も経てば、カレンの悩みも改善されるはずであろう。
「別にここが、どうだからといって関係ないことよ」
ルリカはカレンの手を掴み、自分の乳房をカレンに触れさせて、そう語る。決して、大きくはないが、それでもきちんと主張するモノであるため、しっかりとした感覚がカレンに感じさせた。
ちなみにファミネイの乳首は痕跡器官である。
もう一度言う、ファミネイの乳首は痕跡器官である。
では、なぜ痕跡器官なのか。これは後々、詳細を語ることになるだろうが、この言葉だけで完結している部分もある。
どうしても気になるという諸兄姉は、痕跡器官と乳首について調べてみるといい。
「まあ、そうだけれど」
それでもカレンにはルリカのこの行為自体がコンプレックスになりそうであるが。
「取りあえず、食堂でおいしいモノでも食べましょう。食事は成長に欠かせないものよ」
その背の低さで意味する所は、肉体の成長を期待しているからだ。
わざわざ、背の低いファミネイを作る意味は制作者の趣味ではなく、多様性を考えてのことだ。どうしても、肉体的な成長がないと、性能としてもどうしても頭打ちになりやすい傾向がある。逆にいえば、成長しているレモアやルリカは安定した性能を出しやすいことにはなる。
カレンの場合はその逆で今後の期待を込められている。
現状、カレン、ルリカ、レモアの性能は個々で差はあるモノのトータル的には差はない。だが、成長度という+アルファを考慮すれば、カレンの性能は後々ではルリカ、レモアを超えるかもしれない。
ただ、そのためには成長することが前提となるため、成長できなければそれは期待できない。つまり、成長という要素はプラスになるかマイナスになるか分からず、時間も要す要素である。
それをリスクと取るか、将来の利益になるかは使う側の判断にかかってくる。
「はやく、大きくなりたい」
カレンは自らの想いをただ、そう思うのであった。
* * *
一方レモアは。
浴槽はしっかり壁で仕切られ、その熱気を逃がさないようにされている。そのため、シャワー室での光景は見えていない。
シャワーでは味わえない、体を温めるお湯は入浴の特権である。
レモアはこの感覚が好きではあるが、入浴後の髪の手入れは面倒である。その上、長髪でくせ毛体質。
「幸せね」
レモアは肩までつかっている。だが、髪は束ねることなく、そのままである。もっとも、土汚れの付いたため、シャワーを浴び際には髪は洗っているため、今更どうでもいいのだが。
水面から両手を出す。
レモアは水を退くその柔肌を眺めながら、思いにふける。
今回は顔だけにわずかな擦り傷を負っただけであるが、以前の戦闘ではそれなりに傷を負っている。
それでもこの柔肌である。傷の治療をしたが、後も残らず回復するのは医療の発達のおかげ。ただ、そのことが余計に自分が作り物の命だとつくづく感じてしまう。
何せ、人間であれば普通に生きていれば、負わない傷を被って、それを無理矢理治すのである。
そう考えれば、この柔肌を呪いたくもなるが……。
ただ、お湯の中にいると、そんな思い出した感情もどうでも良くなる。
「まあ、いいか。その程度のことなんて」
どうせまた明日になったら、同じ様にケガをするかもしれない。
そんな日常茶飯事を呪っても、今はこうしてお湯に入れる幸せに浸っていようとレモアは考えた。
* * *
ルリカはただ、濡れた体を早く乾かしたかった。
のんびりと更新していきます。