第3話 秋子の正体1
バイトも終わり、秋子は家に返ってきた。一人暮らしの一軒家である。10歳より始めた一人暮らしも15歳の高校生になれば慣れたものである。
2DKの平屋建ての家である。前に一度彰子が訪ねてきたことがあったが、その時はあまりの貧しさに泣いて私の家に来てと頼まれた。(なだめ、断るのにかなりの労力を要した。)
乙女チックに飾られた寝室に入ると、秋子は制服を脱ぎだした。そして、ブラを外すと決して大きいとは言わない美乳をビリビリと剥がし始める。そして、ショーツを脱ぎ、全裸になった彼女の股には本来、女にあるはずのないものがぶら下がっていた。秋子はそのまま制服をかけるとシャワールームへと消えていく。
やがて、肌を上気させた彼はシャワールームから出てきて、用意してあった男物の服を着たところで、携帯に着信があることに気がついた。彰子からの電話であり、秋子は慌てて電話をかけた。
「秋子?ごめんまだバイトだった?」
「ううん、ちょうど帰ってきてシャワーを浴びていたの。どうかしたの彰子?」
別に夜、彰子から電話がかかってくるのは珍しいことではない。時には、女の子らしく他愛のない話で盛り上がることもある。だから、秋子のその言葉も、特に意図したわけじゃなく、話を促すためであった。
「そう、聞いてよ!隆ったらね、あのあとまた馬鹿なことをしたのよ。」
総じて、その他愛のない話は智隆の話がメインであった。なんだかんだで、彰子は智隆のことを意識していて、あたふたとするその姿を秋子は可愛いと微笑ましく見ていた。
「ところで、今度の週末、秋子は暇?」
微笑ましく思っていたところに、急に話題が変わり秋子は我に返った。
「え、ええ。特にアルバイトも入れていないから、予定は開いているのだけれども?」
入学式で初めて出会ってから、秋子と彰子は十年来の友のように仲がいい。しかし、まだ出会って2ヶ月。休日以外で会うということもなかった。
「実はね。忠恵と礼部の人たちが、私と隆をもっと仲良くさせようと、旅行を企画しているの。前に行った時にそのまま、初夜を迎えさせられそうになって、危うく逃げたのよ。わ、私たちにはまだ早いってね。で、今回も同じ目に遭いそうで。年齢的にも逃げられそうにないし、同性の秋子がいればうまい口実になるのよ!」
名家は大変だなと他人ごとのように思いながら、どうしようかと秋子は思案した。
「でも、彰子は隆くんのことが好きなんだから、このまま既成事実を作っちゃってもいいんじゃないかしら?私、おじゃま虫にはなりたくないもの。」
わざと、おどけて言ってみると、彰子の慌てた声が返ってきた。
「だから、私は隆のことなんとも。ただ単に親の決めた許嫁ってことだけで、そんな。仕方なく、そう仕方なくよ。」
「ふ~ん。じゃあ隆くんは私がもらっちゃってもいいかな?昼間だって彼、彰子より私のようなのがいいって言ってたし。」
「うう~。秋子はずるい。私の気持ちを知っているくせにそんな意地悪言うんだから。」
彰子の拗ねたような声が聞こえてくると、秋子はくすくすと笑い出した。
「ええ、彰子の気持ちは知っているわよ。そして、それを応援しようとしている私の気持ちも彰子は知っているわよね?」
「あ、秋子のいじわる。いいの!私と隆はゆっくり進んでいくんだから。」
開き直る彰子に秋子は羨ましさにも似た感情を抱いた。正体を隠して女として通う自分に。
「とにかく解ったわ。週末は予定を開けておく。詳しい話は明日学校で聞かせてね。そうだ、お金はいくらくらい掛かるの?」
貧乏暮らしの秋子にはお金の話はかなりの死活問題となる、とりあえずは。
「いいの、いいの。うちのお父様達が勝手に企画した旅行だから、お金は気にしないで!でも、良かった。これで夜は秋子とパジャマパーティーとでも言えば、無事に乗り切れる。夜はいっぱいお話しましょうね、秋子。では、おやすみなさい。」
「ふふ、そうね。楽しみにしているわ。おやすみなさい、彰子。」
電話を切り、ふうっと一息ついた秋子は、電話先の彰子の事を思い出して、再び笑がこぼれた。
「彰子は、相変わらずなのね。隆くんはいい男性なんだから、しっかり捕まえとかないと他に取られちゃうかもなんだから、・・・。って、僕は男だ!電話口ではしょうがないけど、1人でいるのになぜ女言葉になるんだ!僕は決して女装が趣味ではなく、これは仕方なくだなあ!」
4月より、とある事情で女装して通わなければならなくなった秋子。当然秋子も偽名である。
「とにかく、日常において女装をしなければならないが、それ以外の時間は、しっかりと男の格好をしよと試み決める秋子であった




