第三十八話 ゲーム仲間が増えた日
夕食後、椅子でくつろいでいると、後ろからましろに体を揺さぶられた。
「そろそろゲームしよっ!」
いつものゲームのお誘い。
だけど、今日はいつもとは違った。
「そのゲームってのは、今度久遠様と一緒に遊ぶやつだよな?」
紅蓮が興味津々といった様子で聞いてきた。
「うん! そうだよ!」
「それなら俺もやってみたい」
「わ、私もやってみたいです!」
「私ももちろん参加します!」
紅蓮と紅麗、それに芙蓉さんまで名乗りを上げた。
彼らにとって、久遠副隊長と遊ぶ約束をしたゲームだ。
興味が湧くのも当然か。
「よし、とりあえずリビング集合!」
紅蓮と紅麗は初めてだろうけど、芙蓉さんはどうなんだろうな。
まあ、初心者でも楽しめるものは多くある。たぶん大丈夫だろう。
さて、紅蓮たちはゲームにハマってくれるかな?
リビングに向かうと、嬉しいことにゲーム機は四台集まった。
俺とましろ、焔乃宮、そして芙蓉さんの分だ。
正直、芙蓉さんが持っていたのは嬉しい誤算だった。
これで遊べるゲームの幅が広がった。
それにしても、芙蓉さんは緑色が好きっぽい。
コントローラーだけじゃなく、本体まで、緑色でコーティングしているっぽい。
「これがゲーム機か……」
紅蓮は興味深そうにゲーム機を見つめていた。
「今日は『世界中のアソビ対戦』をやろうか。いろんなゲームが入っているから、初めてでも遊びやすいしな」
「どのゲームにする?」
ましろが首を傾げる。
「まずはババ抜きをやってみようか。ルールも簡単だし」
まあ、これならゲームでやらなくても良いんだけどな。
だけど、せっかくだしゲーム機というのを体験させてやりたい。
「わかった!」
ましろは慣れた手つきでゲームを起動し始めた。
「焔乃宮、悪いんだけど紅蓮のフォローを頼めるか? 俺は紅麗のフォローに回るから」
紅蓮に教えると、変に意地を張りそうだしな。
「わかりました」
ゲームのセッティングを済ませ、紅麗にコントローラーを渡す。
「よ、よろしくお願いします」
「おう。よろしくな」
紅麗はびくびくしながらコントローラーを受け取った。
「そんなに緊張しなくていいぞ。これはあくまでも“遊び“なんだから。楽しまないとな」
「は、はい!」
「ちなみにババ抜きのルールはわかるか?」
「い、いえ……」
まあ、当然か。昨日まで竜だったわけだし。
「じゃあ簡単に教えるな」
「お願いします!」
その後、簡単にルールを説明して、対戦が始まった。
紅麗は初手で三つペアが揃い、残り七枚。
ましろと芙蓉さんも同じぐらい。紅蓮だけが一人、手札をたくさん抱えていた。
「ソーマさん! ババがありません!」
紅麗は嬉しそうに報告してくれる。
「よかったじゃないか」
と言ってはみたものの、
「でも、それはあんまり言わない方がいいぞ。誰がババを持ってるのかを考えるのも、このゲームの面白いところだからな」
「……っ! そうなのですね! 奥が深いです!」
キラキラした目で見つめられ、思わず頭を掻いてしまう。
……ちょっと格好つけてみるか。
「周りを見てみるんだ」
「?」
「ほら、紅蓮の顔。なんか困ってそうだろ?」
「……ほんとだ!」
「もしかしたら、ババを持ってるかもしれない」
手札も一番多いしな。
「お、俺はババなんて持ってない!」
……軽くかまをかけてみたけど、本当に持っていそうだ。
紅麗も気づいたらしい。
目が合うと、二人でくすっと笑ってしまった。
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気づけば、何度もババ抜きを繰り返していた。
「ましろ、また一番!」
「絶対、おかしいです! 私、ババ抜きで負けたことないのに!」
結局、最初に上がるのは、毎回ましろだった。
まさかの一度もババを引かないという、とんでもない強運である。
一方、芙蓉さんは毎回最下位だった。
……本当に弱いのか、それとも初心者の二人に花を持たせていたのか。
その辺りは最後までわからなかったけど。
「面白かったか?」
「はい! とても面白かったです!」
「それはよかった」
紅麗は少し恥ずかしそうに、上目遣いでこちらを見つめる。
「その……私もゲーム機、欲しいです……」
「うっ……」
その一言は予想以上に効いた。
「……俺も欲しい!」
紅蓮もすぐに続いた。
ゲーム機二台くらいなら買えるだけの給料はもらっている。
だけど、腕を組んで少し悩んだふりをする。
そして、二人を交互に見てから、
「仕方ない。買ってあげよう」
まあ、この家にいたらゲーム機がないと不便だろう。
「ありがとうございます!」
紅麗は嬉しそうにそう言ってくれた。
「もー! 紅蓮もお礼を言わないと!」
「……ありがと」
ツンデレか。
「その代わり、ちゃんと仕事手伝ってくれよ」
「はい!」
「……ああ」
二人の返事を聞き、俺は満足して頷いた。
「よし、じゃあ明日も早いし、そろそろ寝るか」
「うん!」
ましろがいつものように俺の部屋に行こうとする。
「ましろ、今日は紅麗と一緒に寝るんじゃないのか?」
「うん。ねるよ?」
「それなのに、俺のところで寝る気なのか?」
「うん。そうだよ?」
どうやら、俺の部屋で寝るのは確定らしい。
「クレイ、まくら持ってきてね!」
「わ、わかりました!」
さて、どうしたものか。
俺の予想だと、紅蓮も来そうなんだよな。そうなると、流石にあのベットで四人はきつい。
仕方ない……。
俺はましろの部屋に行き、新品同様の布団を持って、自分の部屋に戻った。
ましろと紅麗は、俺の分の場所をちゃんと空けてベッドに入っていた。
だけど、今日は久々に床で寝る。
「えー! ソーマ、ベットでねないの?」
「まあ、今日はなんとなく床で寝たい気分なんだ」
「じゃあ、ましろもゆかでねる!」
紅麗の方を見ると、心配そうな顔をしている。
「今日は紅麗と寝るって約束しただろ?」
「……わかった」
結局、ましろと紅麗がベッドを、俺が床で落ち着いた。
これで、紅蓮が来ても大丈夫かな。
「よし、寝るぞ。おやすみ」
「おやすみー!」「おやすみなさい」
電気を消した。
どれぐらい経っただろう。
紅蓮がこっそり部屋に入ってきて、そのままベッドへ。
やっぱり、紅蓮も怖かったようだ。
一応、部屋に入りやすいようにドアは軽く開けておいた。
ベッドでは、ましろと紅麗、そして紅蓮が静かな寝息を立てている。
……まあ、たまには床も悪くないな。
そう思いながら、俺もゆっくりと目を閉じた。




