第42話◆アタシの信心とは別のお話
ついに王宮跡のボス戦です!
ここはイケイケのアイちゃんに頑張ってもらいましょう!!
セイヤがおっきくて豪華な扉を両手で思いっきり開けて、アタシたちは隊列を乱さないように中へと乗り込んだ。
「ここが、"王の間"か……。」
「セイヤくん、"女王の間"だよw」
緊張感を崩さずに、セイヤとユミィが軽口を交わした。
広さはちょっと大きめのホールくらいで、きっと昔はキラキラしてたんだろうなって壁は木の根っこやツタで侵食されている。
でも、入口の扉から真正面まで真っ赤な絨毯が一直線に伸びていて、先に3段くらい段差があって突き当たりに玉座っていうのかな?
女王サマが座ってたんだろうなっていう大きなイスが でん! と置いてあった。
「みんな、油断すんなよ……。」
セイヤがアタシたちに注意をうながす。
でも。
なんだろう?
この空間はとても清浄な空気というか、教会の中みたいに神聖な"なにか"で満ちていた。
アタシは神職に就いてるから余計そういうのに敏感なのかもしれない。
むしろ、心地いいまであるかも。
逆にクリストフさんはやっぱ不死者だからなのか、少し顔をしかめていた。
「―――――!」
その時、玉座のやや手前に黄金色の光が立ちのぼり、淡い柱をかたちづくった。
「……まさか、、、」
思わず言葉に出た。
その光は少しずつ、人型のかたちを形成し始めていた。
その人型は、若草色の法衣を身にまとい、背中から大きな白い翼を生やし始める。
片手には大きな錫杖を持ち、頭上には規則的に先端を四方八方に伸ばした光輪を浮かべている。
光の柱から実体化したそれは、
どう見ても"天使"だった―――――
「下位1級天使、権天使だ……!」
クリストフさんがうめいた。
ダンジョンに出てくる魔物は、通常の雑魚もボスもどちらも例に漏れず、ダンジョン内の魔素から形成される。
意志も曖昧で魂も入ってるんだか入ってないんだかわからない。
だから目の前に現れたこのボスモンスターの権天使も、女神さまの使徒とかじゃなくて純粋な魔物だってことはわかる。
うん。
頭では、わかってるんだけど……っっ。
それでも、目の前に姿を現した権天使の、威厳に満ちた佇まいと厳かな迫力に、神職のアタシは思わず息を呑んでしまった。
「―――天使ならば私の弱体化で―――グッッ!?」
クリストフさんが言葉の途中で、すさまじい閃光のあとにもんどりうって吹っ飛んだ。
「……えっ?」
「ちょっ!クリストフさんっっ!??」
アタシの目には見えなかった。
権天使の錫杖から放たれた神聖魔法がクリストフさんを直撃したっぽい。
その攻撃は聖属性だからアタシたち人間種やエルフにはほとんど効果ないけど、吸血鬼のクリストフさんにとってはとんでもないダメージのはずだ。
おまけにクリストフさんは不死者だから、アタシの神聖術じゃ治療出来ない…………!
「……よくもっ!!!」
クリストフさんがやられて、ユミィがすごい剣幕で弓矢を放った。
「……!!」
その矢は権天使の左肩に刺さり、天使が少しよろめく。
「地精霊、アースバレットだ!」
ナーシュの指示で岩つぶてを地精霊が放つ。
何発もの岩つぶてを食らって、権天使はさらに苦しそうにのけぞった。
「どうやらコイツは物理攻撃に弱いかもしんねぇ!
オレたちも行くぞレイト!
あとアイは【防魔壁】だ!」
「了解! 行くわ!」
「おけ!」
セイヤの指示でアタシとレイトは行動に移す。
その間、ユミィは次の矢を準備してるし、ナーシュは火精霊を引っ込めて天使に対して有利属性の闇精霊を召喚している。
撃ち抜かれたクリストフさんは心配だけど、アタシたちだってだいぶ場数を踏んで来ているんだ。
なんとかこのまま立て直して――――
その時、権天使が両手を広げて、大きく厳かな声で歌い始めた………………。
「………………!!?」
「ううっ……!」
「~~~~ッッ!!」
こ、これが、天使の特有スキル、、、
【ダイレクトボイス】…………!!
歌声に乗った聖属性の衝撃波が容赦なく襲いかかり、アタシ以外のみんなが全員弾き飛ばされた。
「……っ!」
アタシはまだ聖属性耐性があるから(これでも神職ですから!)まだ「あ、痛い」くらいで済んだけど、セイヤもユミィも、レイトもナーシュもけっこうなダメージに見える……。
ナーシュが召喚した闇精霊なんかは1発で消し飛んでた。
くっ、、、
こんな時に【慈愛】のスキルが使えたら……!
女神官から格闘僧に転職した時に喪失してしまったスキルだけど、また使用出来る職業に就けば使えるのかもしれないけど、、、
「【範囲治療】【範囲治療】【上級治療】!」
【慈愛】にはおよばないけど、みんなのダメージの同時回復は【範囲治療】で代用して、みんなの盾になってくれたセイヤには【上級治療】を唱える。
なんとか素早く仲間たちに神聖術の回復魔法をかけて応急処置をすませると、アタシは権天使に向き直った。
「……まさか、
アタシが天使サマに手をあげるなんて、ね……。」
実際、目の前にいる天使サマは本物じゃない。
ダンジョンの魔素で作られた、ダンジョンのギミックみたいなもんだ。
だからアタシがこれをぶちのめしたって、アタシの信心・信仰心は少しも揺るがない!
「――フッ」
軽く息を吐いて、一気に敵との間合いを詰める。
「!!??」
一瞬たじろいだ権天使は反射的に錫杖をアタシに向かって振り下ろしてくる。
(読めてるっつーの)
それをアタシは半身ほど左に避けて、同時に右拳を天使の胴体に突き刺す。
格闘スキル【カウンター】。
相手の攻撃の勢いをそのまま利用して、倍近いダメージを相手に叩き込むスキルだ。
おまけに格闘僧は、素手 (グローブなど含む)の時には攻撃力が1.5倍に跳ね上がる【剛拳】スキル(パッシブ)も備えている。
「~~~~!!!!」
権天使の能面みたいだった顔面が苦痛で歪んだ。
そこにアタシは間髪入れずに【マシンガンジャブ】を繰り出し、のけぞった天使に【サマーソルトキック】をお見舞いした。
ドガァァン!!
ぶっ飛んで玉座に激突する権天使。
「……!!!!」
アタシが不死者じゃない生身の人間ってことで、神聖術ではなく風魔術の【風刃】で反撃してきた。
「こんなのっ」
でもアタシは【防魔壁】で魔法防御を高めている。
何発かもらったって、こんなんかすり傷だ。
「せー……の!」
ドンッ!ドドンッッ!!
再び間合いを詰めると、【掌底】からの【正拳突き】のワン・ツーコンボをお見舞いする。
「…………ッッッ!!!!!」
たまらず両膝をつく権天使。
さらにそこへ、、、
「【ブレイクアロー】」
【集中】で研ぎ澄まされたユミィの射撃が天使の胸元に突き刺さり、、、
「【流し斬り】っ!!」
体勢を立て直して戦線に復帰してきたセイヤの一撃が背後から炸裂する。
そこに、、、
「【剣閃】!!!」
とどめ!と言わんばかりの、レイトの強力な一撃が権天使の胴体を貫いた。
「やった!!」
思わず声が出ちゃった。
これ、わりと楽勝で行けるんじゃ??
なんて思ったところに、権天使は錫杖をかざした。
すると天使はキラキラした光に包まれた。
「……【治療】か……!」
権天使は神聖術を唱えて、自分のダメージを回復し始めた。
レイトが剣閃で開けたお腹の傷もみるみるふさがっていく。
「気にすんな! こいつの回復を上回るダメージを
与え続けるぞ!!」
「おけ!」「りょ!」「任せてセイヤ!」
それでもリーダーの指示でアタシたちアタッカーは続けて天使に攻撃をたたみかけた。
そして確実に天使は深刻なダメージを受けていた。
―――行ける!
アタシは一気に勝負を決めるつもりで権天使へダッシュした。
「バッ、バカッ!突っ込み過ぎだアイッ!」
セイヤがアタシになんか叫んだ気がした。
同時に、権天使の口から、無機質な言葉が発せられた。
その時アタシは「あ、こいつしゃべれたんだ」なんて呑気な事を考えていた。
『ダメージ70%突破。
深刻なダメージを受けました。
脅威殲滅を最優先します。
これより【殲滅形態】に移行します。』
やばい。
作者がアイちゃんを可愛がってるのがバレてしまうw
(2026/03/29)




