二人で帰宅
部屋を出る前に魔道具を付け直して、リゼの姿は再び人間の平民の姿へと戻る。部屋をでるとセドリックに抱えられて離宮へと戻ってきた。
「セドリック、もしかして魔道具を外した姿、見たことある?」
「どうして?」
「見ても驚かなかったから」
「あー…、実はね。初めてここに来た時にね。こっそり見ちゃったんだ。魔道具をつけてるなと思って。試しに一つ外したんだ。ごめんね」
「なんで今まで言わなかったの?」
「隠したがってるみたいだったから。別に僕にとって大事なのはリゼがそばにいることだからね。誰であるかは一番じゃないから。リゼだって、僕がもしも今更竜人じゃなくて魔族でした、っていっても困らないでしょう?」
それは確かに、と思う。
「陛下たちの前ではあえて言わなかったんだけど、私の手配書が出回っているのは知ってる?」
「……一応、見たことはあるよ。でも確かリゼのご両親が正式に声明を出していたよね。手配書は偽物で、リゼは魔族の国にいるって」
「うん、そう。合ってる。私の体質を知ってて、私のことを探している人がいるの。だから偽物の手配書が出回ってて、私は身を隠しながら生活してたの」
「もしかして、そのリゼを探している人はリゼの、他人に触れられない原因にも関係あったりする……?」
少し迷って、リゼは頷いた。
「いつか、いつか話すから。今はこれ以上聞かないで」
やっぱりまだジョエルについて話せない。いつか、もう少し、心の準備ができたら。
セドリックは怒るだろうか、そう思って表情を伺うと目が合って、優しく笑ってくれた。大丈夫だよ、と言って抱きしめ直す。
「リゼ、明日公爵邸に帰ろっか。二人でのんびりしよう」
「いいの?」
「いいよ。もともとその予定だったんだ。今日リゼが話してくれた内容と、あらかじめシドたちから聞いた内容に相違なければ休暇くれって言っておいたんだ。兄上が長く眠っていた間に僕は必要以上に働いたからね。番のために休んだって誰も僕らを責めないよ」
「そか」
「エレインたちの処分も二人に任せてある。残党がまだいるだろうから正式な処分が決まるまで時間はかかるだろうけど。陛下と王子に、そして王弟の番の毒殺に関与したんだ。エレイン本人は処刑がほぼ確定している。逃げ出せないように力も奪ってある。もうリゼの前には現れないから安心して」
「うん、わかった」
二人はその日早めの夕食、入浴を済ませ床に入った。
視界の中にセドリックがいる。リゼはその状況がすごく嬉しかった。
事件が起こる前の不安定な精神は、ここ数日セドリックと常に一緒に過ごすことによって落ち着いてきていた。
セドリックは症状が落ち着くことを名残惜しそうにしているようだったが。
毎日一緒に眠り、番の匂いを嗅げる。それがリゼにとってこの上なく幸せだった。
***
「……セドリック、もしかしてまた改装したの?」
「少しだけだよ」
宣言通り朝一番に公爵邸へと戻ってきた。
目の前には相変わらず大きな公爵邸。邸は変わっていない。変わったのは外壁。
リゼが最後に見た時よりもずっと塀が高くなっている気がする。
「セドリック」
「リゼ、許して、不安なんだよ」
そう言われてしまったら受け入れることしかできない。
「監獄よりも塀が高いよ……」
リゼは仕方なく笑った。
「中に入ろう。リゼの部屋も修理してあるから」
「そういえば物を壊してごめんなさい」
「気にしないで。この敷地内でリゼが壊しちゃいけないものなんてないよ」
それはどうなんだろうと思ったが言わないでおく。
屋敷に入ると、セドリックはリゼを抱えて寝室へと向かった。
ーーどちらかといえば起きたばかりなのに寝室へ?
「今日はここで二人きりで過ごそうと思ってさ。寝室だけど、この部屋にはなんでも揃ってるからね。二人きりで過ごすならここが一番いい。リゼ、まだ少し不安定でしょう?僕もリゼのことが心配だし。お互い安心できるまで二人きりで過ごそう」
「すごい」
「リゼ、何がしたい?リゼのやりたいこと全部やろうよ」
そう言ってくれるセドリックの表情が本当に優しくて。
リゼは思わずセドリックに抱きついた。
「ずっとくっついてる」
答えるとセドリックは満面の笑みで答えた。
第一章はここで終わりです。第二章までお待ちください〜〜!




