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人間と偽って暮らすトラウマ持ちの魔女、番の竜人に拐われましたがそれなりに幸せです  作者: 立花 みどり
第一章

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今後のこと


「僕はまた王城に戻らなければいけないんだけど、その前に今後の動き方を共有しておきたい」

 

 部屋にはリズ、セドリック、シド、レイン、フィンがいる。


「そのうちロイドは倒れる可能性が高い。エレイン派の動きが想定より大胆だ。リゼに毒を盛ったこともそうだし。予想よりなりふり構わないし味方が多い。逆にこっちは向こうを責める理由が今はない。ロイドの毒殺未遂もリゼの毒殺未遂も、証拠に欠ける。おそらくあちら側に魔法に長けたものがいる。長期戦になりそうだ」


 部屋の空気は重苦しい。


「もしロイドが倒れた場合、次に狙われるのは確実にリゼだ。ロイドが倒れたら速やかに結界を第五段階まで引き上げろ」

「わかりました」

「第五段階?」


 リゼが訊ねる。


「この家には結界を張ってある。通常は第三段階で、こちらが指定した者を弾くようになってる。第四段階はそれに加えて悪意を持っている物を弾く。第五段階は、こちらが指定した人間以外入れない。一番厳重な結界だよ。どんなに優れた魔法使いでも、解こうとすれば数年はかかると思う。それくらい複雑な結界が用意してあるんだ」

「籠城するってこと?」

「そうなるね」

「ですが、セドリック様、そうなると……」


 珍しくレインが口を挟んだ。


「そうだね。番狂いを狙うだろうね。リゼは番狂いって知ってる?」

「少しだけ」

 

 セドリックは命に関わることだから念の為、と丁寧に説明した。


 番狂いとは運命の番にだけ起こる病。番と長期間物理的に離れ離れになることで起こる。例外は番が死んだ場合のみ。だけどその死が他殺だった場合は番狂いが起こることもある。

 番に会えない辛さで体調あるいは精神が狂い、最終的に衰弱して種族によってはそのまま死ぬ。どこがどれくらい狂うかは種族と本人の資質により異なる。数百年会えなくても耐えられることもあれば一週間で狂い始めることもある。

 特に竜人は長い寿命と強靭な肉体により数年耐えられることが多く、逆に人間は最も早く狂うと言われている。どんなに番を認識する器官が弱くとも、番狂いは発症すると言われている。


「つまり、セドリックの頑丈さと私の弱さを利用して、番狂いを起こしてしまおうってこと?」

「……そうなる」


 ふむ。


 ここにいる自分以外はリゼのことを人間だと思っている。そのため物理的に離れればすぐに狂うと思っているはずだ。だけどきっと実際には少なくとも数年は持つはずだ。本当の種族は魔女だから。

 

 運命の番同士である両親が番狂いを起こしそうになったことを一度だけ見たことがある。確か5年離れ離れだったはずだ。しかも魔族である父親が先に狂った。となると魔女であるリゼはもう少し耐えられる可能性が高い。だから本来はそこまで緊急のことではない。


 けど、ここで今人間ではないことを明かしてしまうのはなんとなく悪手な気がする。たとえ信頼できる人だけとは言え、どこから漏れるかわからない。ので黙っておく。


「何か策はあるかな、こっそり会うとか?」

「それしかない。でも僕とリゼは正式に番の儀式を終えていないから、リゼが死ぬまでは行かないはずだ。そしてそれを向こうは知らない」

「番の儀式……?」

「あー……正式にお互いを番として契りを交わすことだよ。僕とリゼはまだ肉体的には結ばれていないから……」


 曰く、運命の番は出会うだけでなく、正式にお互いを結びつける儀式のようなものがあるらしい。竜族の場合、番同士で肉体的につながることで正式な番となるらしい。そういえば両親もそんなことを言っていたな、と思い出す。魔女は『家族たち』に番として紹介すること、だったと思う。セドリックのことはまだ家族の誰にも話していないので、リゼ側も儀式の条件を満たしていない。


 一般的な言い回しに例えるならば、今のセドリックとリゼはただの恋人であり、婚約や結婚のような手続きを踏んでいない状態のようなものということだ。

 

 儀式を通して番同士は正式にお互いを運命の番と定義する。そこまで行くと、番狂いによって死ぬこともあるらしい。儀式を終えていない場合は定義されていないので多少の番狂いにはなるものの死ぬまではいかない。なんとも複雑で変なシステムだ。


「リゼの体質のこともあるからね。慎重になっていたのが幸いした形だね。番として出会ってしまっているから、多少の番狂いは起こるかもしれないけど死ぬことはないはずだ。

 おそらく向こうはまさか契りをかわしてないとは思ってないだろう。普通はありえないことだから。城に戻ったら僕がリゼの番狂いを心配する噂を流しておこう。

 向こうが狂って死ぬと思って油断している間にカタをつけるしかないな。ロイドと陛下を毒殺しようとした証拠を集めるしかない。それができなければある程度武力で争うしかない。国が荒れるから避けたいけど」

「ロイド様と私が狙われているなら、手を下される瞬間を掴むのが一番手っ取り早いよね?」

「ああ、だからロイドの周りには記録の魔道具をこれでもかと設置してある。ロイドが倒れたらリゼは籠城。その間になんとしてでも証拠を揃えて畳み掛ける。賭けになりそうだ」


 果たしてそんなにうまく行くだろうか。

 リゼは少しだけ不安になる。


 でも現状それ以上のいい案は思い浮かばなかった。


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