変化の始まり
セドリックは全然帰ってこなかった。
正確にはリゼが起きている時間には帰ってこなかった。
何度かこっそり一瞬帰宅して、リゼの眠る寝台に潜り込み少しだけ一緒に眠ってまた登城、ということをしていたらしい。
使用人に口止めまでして。
朝起きるとセドリックの濃い匂いがベッドに残っていて、屋敷中の人間に聞いたところレインが白状したのだった。
「なんでこっそり帰ってくるのよ」
呟くけど返事はない。
起こしてくれればいいのに。会いたいのに。
リゼは拗ねていた。セドリックに会えない間、セドリックへの気持ちはすっかり成長していた。
そんな中、ピネの番が体調を崩し、しばらくお休みすることになった。
「すみません、こんなときに。患者が暴れて怪我をしちゃったみたいで。しばらく介助が必要そうなんです……」
謝りつながらもピネはそわそわと落ち着きがなく、今すぐにでも番のそばに行きたいんだろうということがわかった。
「大丈夫、そばにいてあげて。元気になったらまたお願いね。はい、今すぐ帰って、心配で落ち着かないんでしょ」
「……はい!ありがとうございます」
「気持ちはわからなくもないから。じゃあ、またね」
ピネは申し訳なさそうにしつつ午前中には退勤して行った。
後でレインに聞いたけど、ピネの番は肋骨と左足を骨折しているらしい。重症じゃん。ピネには是非とも看病してきてほしいと思う。
番と会えない辛さを今実感しているから。ゆっくり過ごしてきてほしい。
「ピネたち夫婦は現在は公爵邸で住み込みで働いていますから、どうしてもピネに会いたくなったら言ってください。私が案内します」
レインが気遣ってくれる。
「住み込みなの?」
「はい、リゼ様のおそばに仕えるものは基本的に住み込みですね。公爵邸には結界があってこの中で暮らす方がむしろ安全ですから。政敵などが使用人を脅して従わせる、という方法を取りづらくするために、家族と一緒に住み込みを推奨されています」
「すごく、厳重なんだね……」
「リゼ様を守ると言うことにおいて、手は抜けませんから」
そう言ってレインは苦笑した。




