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人間と偽って暮らすトラウマ持ちの魔女、番の竜人に拐われましたがそれなりに幸せです  作者: 立花 みどり
第一章

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ジョエルの夢


 ーーその日久々にリゼはあの時の夢を見た。


『リゼ、リゼ、やっと二人になれたね。愛してる。ずっと一緒にいよう』

『リゼと番になりたいんだ。だから我慢してね』

『すごい、すごいよ!リゼは本当に何をしても死なないんだ。いいなあ、僕も一緒の身体になったら永遠に生きられたりするのかな?それとも不死なだけで不老なわけじゃないのかな』

『お嬢様、今日は血をいただきます』

 

 ーーやめて、やめて……。


『血をいただきます。ジョエル様の許可は出ています』

『……やめて』

『それは聞けないお願いです』


 ーーはやく終わって


『リゼの血を使った薬なんて、反対したんだけどこれも実験だって聞かなくてさあ。金が手に入るから渋々了承したよ。なんでかなあ、リゼと一緒にいたいだけなのにお金がかかるんだ。まあ薬を使ったやつは後から始末すればいいよね。リゼの血なんて。その味を知ってていいのは僕だけだよ』


 ーー他人を傷つけないで


『なあに。僕がいるのに僕以外のやつのことを気にかけるの。気に食わないなあ。はあ、なんでリゼと番になれないんだろう。おかしいなあ。僕はこんなにリゼを番に望んでるのに。どうして番の証が出ないんだ?』


 ーー私は番になんてなりたくない


『リゼ、今日も試そうね。番になれるまで、ずうっと、死ぬまで』

 

 ーーやめて、

 ーーやめて



「やめて!!!!いや!!!」 

「リゼ!」

「いや!!離して!!!やめて!!!!!!」

「リゼ!!!僕だ、セドリックだ!」


 ぎゅううと抱きしめられると同時に、肺いっぱいに安心する匂いが入ってくる。その匂いを嗅いで、セドリックのことを思い出す。


 ーーああ、ここはあの地下じゃない。目の前にいるのはジョエルじゃない。


 はあ、はあ、リゼは息を落ち着ける。

 ああ、夢だったんだ。

 わかっていても体はこわばり、目から涙がぼろぼろと勝手に出てくる。止められない。


「怖かったね、大丈夫だよ」


 囁くように言いながら、セドリックはリゼの頭を優しく撫でる。


「ごめん、セドリック、寝てたのに起こしちゃった……」


 毎朝早く起きて仕事に行ってしまう自分を気遣う言葉に、セドリックは苦しそうに顔を顰めた。


「そんなことは気にしなくていい。むしろいつでも起こしていいから。リゼが辛い時に呑気に寝てる番になんてなりたくない」

 

 ふうふう、と息がが乱れる。何年経ってもあの日のことを忘れられない自分が嫌になる。約100年が経っても記憶は鮮明だ。

 ここにジョエルはいない。ここにジョエルはこない。

 そうやって自分にいい聞かせる。


「セドリック、お願い。折れてもいいから思い切り抱きしめて、それから背中を撫でてほしい……」


 胸に顔を埋めて頼む

 セドリックは弱々しい声に胸が苦しくなる


 折れないように、でも強く、抱きしめる。隙間がなくなるように体を密着させる。そして背中を優しくさすってやる。


 ーーもっと、もっと欲張って助けを求めてくれたらいいのに。、


 そう思うけど、リゼが心を開くのはきっとまだまだ先だろう。

 出会ってまだ日が浅いし、セドリックほど番を認識できないから。


 わかっている。それでも、もっと、もっともっと自分に依存して、自分がいなくては生きられなくなって、全てを頼って、縋ってほしいのに。

 腕の中のリゼは黙って俯き、静かに涙を流して耐えていた。

 

 彼はそれがとても苦しかった。


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