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イケメンに隠れた西田くん  作者: 理春


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最終話

学祭が終わって、少しずつ秋めいて来た外を歩くと、金木犀の香りを感じ始めていた。

リサと付き合い始めて2カ月弱経とうとしている。

思えば3回生になった春に、同棲していた沙奈と別れようと決意して、咲夜に相談して・・・半ば無理やりに自分の気持ちを告げて、別れを承諾してもらった。

それから何度か沙奈とは顔を合わせてしまったけど、お互い色んな意味で心残りがあったせいか、あっけらかんと会話することも出来ず、半年ほどの月日じゃ俺たちの気まずさを緩和してくれなかった。

それだけお互い真剣な付き合いをしてきたから、とも言えるけど・・・

沙奈が幸せになれる誰かと出会ってほしい。そう願うばかりだった。


別れた春から夏の終わりまでに、心境の変化が人間関係にまで比例して、俺は二回恋をした。


桐谷を好きになる自分なんて、想像もし得なかった。

ただ本当に、咲夜に指摘された通り、友情と愛情の境界線が曖昧な俺は、男性も好きになることはあるんだなと、自分がバイセクシャルであると気付かされた。


桐谷への気持ちがうっすら消えつつありながらも、仲良くしてくれていたリサを、今度は少しずつ好きになっていった。

リサは俺と似たような価値観を持ちながらも、実はかなりリアリストだと思う。

元々賢いからかもしれないけど、白黒ハッキリしてて、いざというときは自分の気持ちをきちんと言葉に出来る子。

見た目は人魚みたいに綺麗で、彼女に微笑まれたら誰もが好きになるんじゃないかと思うくらい、天性の可愛らしさを感じる。

他人の機微に敏感な彼女は、きっと俺の沙奈や桐谷への未練を、感じ取っていることと思う。

時間が経って遠い記憶になれば、それは苦い思い出にすらならないかもしれない。


本当の所、俺は脳内で思っていることを、日常的にかなり我慢して取り繕っている方で・・・

「は?ふざけんなよ。」とか「意味わかんねぇよクソが」とか「うっざ・・・」とか、内心思ってることもある。

角が立つし、そこまで言うことでもないから口には出さない。皆そうだと思う。

そういう気持ちを押し殺した上で、どう立ち回ったらいいかを考え続けることは、中高生の頃からやってきたことで、これから社会人として生きていく上でもそうしていくと思う。

自分の味方を多く持てる環境で生きていきたいし、そういう場所を慎重に選んでいきたい。


今はとても大事な時期なのはわかっていて・・・でも実は就職した後も、大事な時期の連続かもしれない。

忙しくすることは悪いことではないけど、体調や周りの環境を蔑ろにはしたくない。

リサと一緒に居られなくなる未来は嫌だし、関係性を上手くやっていく努力は、生きている限り繰り返さないと、大切な人を無くす一方になる。

自分の手に余る人数じゃなく、大事な友達と、一緒に生きていきたいリサを、抱えていける自分でありたい。


選択と決意の連続で、覚悟は後からついてくるくらいなもんで、俺は何一つ人より優れた自慢はないと思ってた。

でも色んな経験の中で、見出した取り得が、「人の期待に応えようと努力出来ること」だった。

想像しか出来ないことであっても、人の気持ちに寄り添いたいっていう想いだったり、相手を知って相手の色んなことが分かるから、期待していることもわかる。

必ずしも毎回そういう取り得が、自分にとって正しいとは限らないけど・・・

桐谷に言われた通り、相手に合わせるより、自分が自然体でいられる場所を持った方がいいという助言は、今も俺の心に息づいてる。

だからリサと一緒に居たいと、今も思ってるんだ。


ハロウィン前の週末、リサに時間を取ってもらって、初めて実家に彼女を連れて行く、というイベントを巻き起こした。

父さんも母さんも歓迎してくれて、他愛ない話をしながら、リサが気を遣い過ぎる状況を避けつつ、楽しい時間を過ごせたと思う。

将来も考えてる・・・みたいな匂わせたことを少し言うと、嬉しそうにしてくれるリサと、「ほほ~ん」とニヤつく母の顔が忘れられない。

父さんは美人なリサに話しかけられる度に、緊張しながら受け答えしていて、何とも自分との血を感じずにはいられなかった。


自分の中で、リサが大半を占めるようになってきている。

心配性だったり気遣い屋だったりする彼女が、俺に悪い印象を与えないために、焼きもちを抑えたりしてることにたまに気付く。

優しくて真っすぐ気持ちを向けてくれる彼女の、真っすぐな「好き」を受け止めて、それを返せる自分でい続けることは出来るだろうか。

自分のことを好きな人が、いつまでもずっと好きでいてくれるなんて、そんな都合のいいことはありはしない。

それは血がつながった身内であっても同じこと。


他人との細く繋がれた関係の糸は、何かのきっかけですぐ切れてしまうから、俺はそれが怖くて期待に応えようとするんだと思う。


寂しくて虚しい自分を、もう自覚したくないから

俺はこの先も必死に努力するだろう。

何にせよ、前よりも少しずつましな自分になっていけている自覚があった。


冬になったらリサとたくさん行きたい所がある。

翔がいつか話してくれていた、スノボをしにゲレンデに行くのも悪くない。

イベントは盛沢山で、楽しいと思える時間を、楽しいものにするかどうかは自分自身だ。


そんなことを思いながら、まだ11月初頭だと言うのに、リサと他愛ないメッセージのやり取りをしながら、去年のクリスマスの話題になっていた。

すると彼女は「去年は友達とクリパして、友達のコス衣装を借りてサンタ服着たよ♪」と、その時の写真まで送ってくれた。


「・・・・うっわ・・・・リサかわい・・・ってかえっろ・・・」


写真の中で一際輝く自分の恋人に、また心臓を掴み取られるのだった。


ご愛読ありがとうございました。

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