第2話 謁見
少しの間を置き、アヴロースは数段跳ねた声を上げた。
「も、も、も、もしかして……彼のこと好きだったりするのかしら!?」
…………。
「へっ!?いや、あのっ……」
意図せぬ返答にメリーさんは顔を歪める。
「きゃーっ!いやいや、何それ素敵~っ!私メリーさんになる子はほとんど恨み辛みを抱いて、直接手を下そうとする気の強い子たちって聞いてたのよ!?まさか愛の告白のためだなんて――クリティカルヒットよトキメキが凄いわっ!」
薄暗い公衆電話の中、ひっきりなしに聞こえてくる弾んだ声にメリーさんは頬を赤く染める。
羞恥心で肩を振るわせる姿は、見た目より少し大人な反応に思う。生きていれば16歳の彼女は、せいぜい6・7歳の見た目をしていた。
「でもとっても言いづらいのだけれど……彼、死んじゃったのよね」
「は……?」
唐突に告げられた言葉が心の中で木霊する。
(……死んだ?誰が?え、いつどうして?じゃあ私は……)
たった一言だ。彼女が伝えたいのは一言。
10年間待ち続け、小さな願いすら叶えられない。
成仏できないことへの恐怖、死してなお思い通りにならない人生への怒り。そんな感情は彼女の胸には一片も無い。
囚われて何もできずにいた。
(将来への明るい展望なんて何もない私を助けてくれた彼が、こんなに若く死んでしまった?)
ひたすら強大な悲しみが感情を蝕む。だがその思いをぶつける相手すら、どこにもいはしない。
怪異は存在目的を失ったとき、自我を放棄した化け物に変質する。
「……から、……たもい……かいに……しょう!」
胸中で渦巻く荒波に飲み込まれそうになったとき、不意に光る何かに意識を掴まれた。
「大丈夫よ。ゆっくりと私の声に耳を傾けて?あなたも彼も終わってない。世界を見守る優しくて美しい女神様が甘酸っぱい二人に祝福を授けてあげるんだからっ!」
ポフッと聞こえたのは胸を叩く音だろうか。
「きゃっ、何コレ!?」
メリーさんの足元が光りだす。
「大丈夫よ~!私に全部まっかせなさい!」
――目の前には、大きな4対の翼を広げる夕焼け色の神を靡かせる女性がいた。
「わ、ぁ……!」
言葉が出なかった。
決して長くはない人生を終えた彼女だが、仮に天寿を全うしても辿り着けない美がそこにある。
恐怖や悲しみ以外で腰が抜ける事に驚く。
眼前の美しさに目を離せずに見惚れている。
少女は今、どんな表情を覗かせているのだろうか。
書いてみると以外とまとまらないもの




