新たな街
街までの道中の間に、軽く自己紹介をすませる。
アリアと名乗る女性で、銀色に輝き腰まである髪が特徴的だ。
キリッとした顔つきに似合い、如何にも女騎士を彷彿させる佇まいである。
「ウォン!(主人!我も!)」
「おおっ、そうじゃったな。此奴はオルトスといい、儂の相棒じゃ」
「従魔ということですか……あっ、敬語になってしまった」
「ほほっ、別に無理はせんで良い」
儂は堅苦しいのは好かんので、もっと砕けた感じで良いと伝えた。
アリア殿の年齢は20歳とのことじゃが、儂は別に気にしない。
むしろ今の見た目の場合、儂とほぼ変わらないしのう。
「こ、これも、シグルド殿が大人っぽいのがいけない。しかも、口調までまるで祖父と話しているかのようだ」
「それは悪かったのう。じゃが、儂はこの口調に慣れてしまっているのだ」
「雰囲気も同世代とは思えないですし……敬語で良いですか?」
「うむ、そこは好きにせい」
そこで、アリア殿の視線がオルトスに向かう。
「ところで、オルトスはシルバーウルフでしょうか?」
「うむ、シルバーウルフの成体じゃな」
「それを従魔にしてしまうとは、オークを倒した手際といい……相当な実力者とお見受けします。先程は新人冒険者と言いましたが、ランクは聞いても?」
「鉄級じゃよ」
「鉄級!? いや、鉄級でもオークは倒せるとは思いますが……あそこまで鮮やかにはいきません。その前は、何か戦いを生業に?」
……さて、どうするかのう。
流石に魔王退治をしていたとは言えんし。
いや、それに参加していれば強さを誤魔化せるか。
北の大地は魔王に支配され、冒険者ギルドの支部なども無くなっていたしな。
儂の沈黙を受け取ってか、アリア殿が頭を下げてくる。
「詮索しすぎて申し訳ない」
「いや、気にせんで良い。あんまり吹聴せんで欲しいが、魔王軍との戦いに従事していたのだ」
「なるほど! それならば納得がいきます! まさか、歴戦の勇者に会えるなんて……あれ? シグルドといえば、魔王を倒した英雄……同じ名前ですね」
「別に珍しい名前ではないじゃろ。強いて言えば、両親がシグルド卿に憧れてつけたくらいか」
「確かにそうですね。その、よろしければお話を聞いても?」
「儂で言える範囲でよければ構わんよ」
「あ、ありがとうございます!」
そうして、道中の間に魔王軍との戦いを語る。
儂視点というより、ユーリスなどから聞いた話が大半だが。
アリア殿は目を輝かせ、儂の話に聞き入るのだった。
◇
そして一時間ほどで、それなりに大きな城壁を持つ街に到着する。
アリア殿によればザイードの街といい、我が国の西の国境付近にある大きな街らしい。
資源がある森なども近く、それ故に商人や冒険者などでそれなりに栄えているとか。
門に近づくと、案の定オルトスが兵士達に止められる。
「シ、シルバーウルフ!?」
「なんと立派な個体だ……!」
「ウォン……(我、あんなのと一緒……)」
オルトスの尻尾がしょんぼりするのもいつも通りじゃな。
更に街に入るたびに驚かれて、いつも入るのに時間がかかる。
これでフェンリルだとバレた日にはどうなることやら。
「お主達、こちらの従魔なら安心していい」
「これはアリアさん!」
「一人で出て行ったので心配しましたぞ」
「す、すまない……そうか、ありがとう」
そう言い、何やら気まずそうにする。
なるほど、別に人間関係が悪いわけではなさそうじゃない。
ひとまずアリア殿のおかげで、すんなり門をくぐることができた。
無論儂の冒険者カードと、オルトスの腕にある従魔の印があるのが一番の要因じゃ。
「アリア殿、感謝する」
「ウォン!(いつもより早かったのだ!)」
「いえ、これくらい大したことではないので。なので、きちんとお礼をさせて頂きたい。何か、知りたいこととかありますか?」
「そうじゃな……周りが静かで、うまい飯が食える宿があったら嬉しいわい」
「……ふふ、おかしな殿方だ」
すると、花が咲いたように微笑む。
不覚にも、儂は見惚れてしまう。
名前といい……多分、若き頃のユリア様に似ているからだろう。




