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僕らが子供だった頃  作者: ひおむし
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後輩をスカウト

「ぐぇっ、ちょ、何すか護衛先輩っ」

「悪いな、たった今から護衛先輩は負け犬から王子の犬にジョブチェンジだ」

「犬なのは良いんですかっ。つか、護衛先輩はともかく、俺は別にいいでしょっ。二人で明るい未来計画建てれば良いじゃないですかっ」

「そうは言っても、同室者が平民だけだと流石に貴族から不満が出る。高位すぎず低位すぎない伯爵家で、なおかつラインフェルト家は数少ない中立派だ。しかも本人が去年まで外国を放浪してたなら、派閥との関係性も薄いしちょうどいい」

「そうやって人を都合の良い男扱いしてっ」

 リクにしっかりと首ごと抱え込まれた状態でもキシャーッと吠えるのをやめないランベルトに、アルフレートは『そんないいもんじゃねえだろ』という言葉は呑み込んだ。

「あのな、ラインフェルト。お前、本当にイヤなのか? 俺と同室ってことはこの部屋に住めるんだぞ」

「……っ」

 アルフレートの言葉に、ラインフェルトはぐっと言葉を閉ざした。嫌いな食べ物を無理やり口に突っ込まれたような顔をするランベルトに、リクが不思議そうに部屋を見回す。

 ダンスが踊れそうな広さに大きなベランダ。高い天井は長身のリクでも圧迫感を感じない。部屋の真ん中で自分たちが今腰掛けているソファは、リクが今まで寝たどんなベッドよりも寝心地が良さそうだ。右側の壁にある扉の向こうには、キレイなベッドが3つお行儀よく並んでいたし、左側の壁にも扉が付いている。

 流石は王族専用の特別室と思わせる豪華さだが、今のアルフレートの言葉にはそれ以外の含みを感じられた。

「本来なら寮生は4人部屋、良くて3人部屋だ。上級生になれば2人部屋になるが、広さはここの半分もない」

「……」

「気づいているだろうが、この部屋は壁も床も天井も、勿論家具も全てが耐魔性素材でできている。おまけに防音も完璧だ」

「……っっ」

「古代魔導学が普及しないのは、取得するのに手間がかかるから。そしてその理由の一つが、古代魔道具の発動は失敗すると魔力が周囲に飛び散るからだ」

「……」

 リクの腕の中でむう、とへの字に口を引き結んだランベルトの顔を、アルフレードが覗き込む。

「お前、この部屋以外のどこで研究ができるんだ」

「……部屋が良くても、王子と魔力無しの先輩が同室者じゃ、どのみち研究なんて出来ないでしょ」

「そっちにウォークインクローゼット用の小部屋があるが、そこなら好きに使える許可はとった」

「ぐっ」

 左側のドアを指して言い切るアルフレートに、潰れた声を上げるランベルト。リクは腕を外さないまま『うぉーくいんくろーぜっとってなんだ』と首を傾げていた。

「なぁランベルト。言っておくが、ここ以外の部屋で研究なんてまず無理だぞ。学院内の耐魔性の部屋は全て現代魔法が独占してるからな。お前、卒業まで研究しないでいられるのか? 物心ついた頃からプロの古代魔道士の助手を務めてるお前が?」

「……勝手に名前で呼ばんでください」

「いいじゃないか、仲良くしよう。俺もアルでいいぞ」

「ぜってー嫌です」

「何かあったら俺の名前出してもらっていいから」

 その後もアルフレートのセールストークは続き、途中からリクは飽きてランベルトの髪をもさもさ掻き回し始めた。


「……俺、側近だの従者だの本当無理ですよ」

「だろうな。初対面でもわかる驚きの適正のなさだ」

「おい後輩餡パン買ってこいやとか言われたら鶯パン買ってくるタイプです」

「ウグイスパンってなんだ。欲しかったら自分で買う」

「友達といる時とか声かけないで。部屋の外ではちょっと離れて歩いてください」

「思春期の娘みたいな事を言うな」

「権力で好きにしたからって心まで自由に出来ると思わないでよねっ」

「自由にしてるのはお前だろっ」



 ランベルトの頭が鳥の巣になった頃、ようやく同室の申請書にランベルトとリクの名前が書かれた。



鶯パンってもしかしてローカルパン……?

うぐいす餡(小豆じゃなくて青エンドウで作った餡)の餡パンです。


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ウグイス餡美味しいですよね!
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