1 ハレイシャと吟遊詩人
文明もそれほど発達せず、魔法も廃れてしまった時代。その時代に長い冬が迫っていたが、それはまた別のお話。長い冬が迫る直前、東の大陸をめぐる一団があった。人ではもうなく、そして、魔物にさえなりきれない中途半端な不死人、ゾンビたちの物語である。
1 ハレイシャと吟遊詩人
その日は雪が降り積もった。冬がやってきたのだ。でも、それはあまり嬉しい事ではなかった。みんな、また冬が長く続くのではないか、ととても不安になっていたのだ。私は冬が長く続き、春が来なくなったときのことをあまり覚えていない。二年前のことらしいけど、私はそれほど大きくなかったのだ。
「ハレイシャ。寒いから早くお入り。」
ママは私に言った。
私の名前は叔母さんと同じ名前らしい。ずっと遠くに住んでいる勇者様なのだそうだ。私は会ったことがないし、叔母さんは冬が長く続いた頃から姿を見せなくなったそうだった。勇者のお役目についているとママは言っているけど、私にはよく分からないのだった。
「ママ、酒場に行っていい?」
「あまり邪魔してはダメよ。」
その酒場は近所にあって、ママのお兄さんがやっているお店だ。私の名前の由来になった人はママのお姉さんなのか、妹なのか分からない。あまりハレイシャさんの話はしてくれないし、私が尋ねると、お兄さんもママもなんだか悲しそうな顔をするのだ。
私は酒場にたどり着く。今は酒なんて飲んでる暇じゃないので、あまり人は来ない。一か月前、この町に嵐がやってきた。この大陸中を駆け巡る、不死の軍と呼ばれるものだ。誰も正体は分からないし、正体を知ったものは必ず生きて帰っては来ない。そんな恐ろしい人たちの大群がこの町を通過したものだから、町はもう、滅茶苦茶だった。みんな必死で建物を立て直して、屋根を作ろうとしているけれど、雪が降っているのでうまく進まない。
不死の軍が通り抜けた次の日、この町におかしな人が来た。別にママに聞くとそれほどおかしくないみたいだけど、私にとってはとてもおかしな人だった。夜だけ酒場に現れて、小さなハープを弾きながらお話をするのだ。ママはその人を吟遊詩人と呼んでいた。酒場でお話をしながら世界を旅する人らしい。私はそのおかしな人が珍しくって、最近、酒場でお話を聞くようになった。今日もその人はいた。
「お兄さん。お話を聞かせて。」
吟遊詩人のお兄さんはあまり話さない人だった。帽子を深くかぶって、顔はよく見えない。ハープを弾くためなのかいつも白い手袋をしていた。
「いいよ。ハレイシャちゃん。この前はどこまで話したかな?」
「スライムから逃げたところ。」
「ああ。なるほど。じゃあ、北の戦場へと向かうお話だね。」
お兄さんは不思議なお話をしてくれた。それはゾンビという日光が嫌いな人間が活躍するお話だった。
「さあ、新しい物語の始まり始まり。時はほんの少し昔、誰もがそれほど続くとは思っても見なかった、長い冬の始まりの時――」
お兄さんは歌うように語った。私はワクワクを押さえるので必死で、椅子の上でうずうずしていた。
一作目は一月ごろに連載終了とさせていただいたのだが、異世界ものゆえか、ネーミングゆえか、今もなおPVが増えているのである。ちょっと驚きです。そういう人気?的なものや、プロットが大体固まったというのもあって、現状で完成していた部分を掲載させていただく。一か月以上前に書いたものですので、うん、私が想像していたものと少し違うかも。
また、前作の無印のわかりづらかったところも随時編集させていただく。ワードでは太字にできたのに、このサイトじゃ無理だものなあ。
二作目はどうしてGなのか。それもおいおい判明していく、とは思えない。勘のいい人なら気が付くであろうし、気が付かなくてもある程度予想するだろう。でも、すんごくしょうもない理由なんすわ。
今作では荒野編、不帰の森編、北都編を予定していて、現在荒野編のプロットだけが固まった。
テーマは『ゾンビでも恋がしたい』だが、このメンバーで恋ってのもなあ。