44,大太刀使い
お久しぶりです!
全然ストックはたまっていませんが、とりあえずちょっとだけ投稿します!
男たちは、次々と倒れる仲間に動揺しているようで、まともに武器を構えて警戒している奴の方が少ないという、質の悪さが伺えるものだった。
「てめぇら何やって――――うべらっ」
先程のイキり君が下りてきたのでついでに気絶させておいた。
どうにも面白い声を出してくれたものだ。
「――っと」
遂に、俺の攻撃を躱すものが現れた。
というか、今まであんなに適当にやってたのに通用していたのが可笑しいんだけどな。
俺の適当な攻撃を躱したのは、隻眼の厳つい偉丈夫で、何処となく死線を潜り抜けてきたような雰囲気がある。
男は大太刀を佩いており、静かに立つその姿は猛者を連想させる。
恐らく、ガルムと同じくらいか、下手したらガルムより強いかもしれない。
「……妙な輩だ」
他の男どもを殲滅したのちにその男の正面に戻吾ると、男はポツリと呟いた。
「気配が一切せなんだ。だが、そこに居よう……」
のち、目を俺がいるあたりに向けると、眼光鋭く続ける。
「強き者には、名乗るとしよう。吾の名はゼクト。【千刀】のゼクトよ。汝が名は」
「……ベル。他に名乗る名は無い」
無視してもよかったのだろうが、雰囲気に合わせ、名乗っておく。
「強き者と戦うこそ、我が望み。いざ、尋常に――――――」
剣気と、呼ぶのだろうか。
ゼクトが大太刀に手を置いた時に、うなじにチリチリとしたものが走る。
僅かに腰を下ろして、その場で目を閉じるゼクト。
今遠くから魔法を打てば勝てるのかもしれないが、どうせなら何をするのか見てみたい。
俺は、ゼクトの技を見ることにして、避けることに意識を割く。
「―――――――勝負」
「――っと」
かなりの速度で振るわれた居合は、広範囲を薙ぎ払った。
どうやら俺の姿を掴むことが出来ていないようで、点ではなく面で攻撃することにしたようだ。
勿論避けたが、風圧で散らばっていた武器やら人やらが吹き飛んだ。
当たったら痛そうだ。
「手ごたえが無い……やはり気配が無いのは強い、な」
ポツリと呟いたゼクト。
その後ろ姿に近づき、剣を振るう。
「む」
しかし、何かを感じ取ったのか、突然大太刀を振り上げると頭上にかざし、防御の構えを取った。
「……危ういな。攻撃時にも一切の気配が感じられぬ」
しかし、何とか俺の攻撃を捌いたものの、俺が本気でないことを理解しているのか、表情は厳しいままだった。
その後、何合か打ち合う。
この、ゼクトとかいう男、かなり剣の腕前があるようで、俺の不意打ちを――何とか、だが――凌いでいる。
力を込めて振っても、衝撃をうまい事吸収されて、大したダメージが入っていないのを分からされる。
「姿が見えぬというのは、此処までやり難いものなのだな。……見事なまでの気配隠しよ」
「……どうも」
褒められたようなので、取りあえず礼を言っておく。
「強き者には、相応の態度を示さねばならぬ。我が秘技、その身に刻もうぞ」
そう告げたゼクトが、再び居合の姿勢に戻った。
だが、その身から放出された純粋な剣気は、先程の比ではなかった。
何処か殺気じみた剣気は、気絶から立ち直りかけていた周りの男たちを再び昏倒させる。
段々と高まりゆく剣気の中、ゼクトの動きを注視する。
「奥義――――百花繚乱」
その瞬間、嵐が吹き荒れた。
全方向を切り刻んだ大太刀は、再び鞘に吸い込まれていく。壁や床、荷物が悉く切り刻まれる。
部屋という監獄全体を攻撃範囲にした、全方向攻撃。俺の命を刈り取ることを目的にした、不可避の一撃。
だが。
「――如何様に避けた?」
「さてな」
答えは単純だ。
ただ見て避けた。
それだけだ。
ただ、わざわざ言うことも無い。
「本来は対多数用なれば、血の花が多数咲き誇るが故につけられた名であったが……ただ一人を斬ることもできぬとは……吾もまだ未熟よ」
「……かなりの腕前だとは思うがな」
「――そうか」
本心を告げたもの、大して嬉しくもなさそうなゼクト。
対して、興が乗ってきた俺は、少々遊び始めてしまった。
「だから、俺も見せなければな」
俺は、気配を元に戻す。
僅かに目を見開いたゼクトは気にかけず、無銘ノ剣を構える。
今までの様子見の攻撃ではなく、本気の攻撃を打ち込む。
「――――――疾ッ!」
「――――ぬッ!」
気迫と共に踏み込み、上段から剣を振り下ろす。
驚きの色を顔に出しながらも、冷静に剣を翳して捌くゼクト。
だが、甘い。
数度の打ち込みで、ゼクトが若干左側からの攻撃の時に過剰に反応している癖は見抜いた。
正面から打ち込み、剣を弾くのと同時に、踏み込みの勢いそのまま鞘でゼクトの腹を打ち据えるべく、左手を振る。
ゼクトが俺の右手の剣を払う勢いを利用して、次の動作の準備。
そして、右手で俺の剣を防ぎ、左手に意識を割こうとしていたゼクトの意識の隙を狙い――。
右足を軸にして左足を回し、後ろ回し蹴りをゼクトの頭左部に叩きこんだ。
「ぐぅ……!」
「――――――ハァッ!」
そのまま左足を振り抜きながら回転し、再び正面にゼクトをとらえると、回転の勢いをのせて弾かれていた右手――無名ノ剣を左から薙ぎ払う。
執拗に左を狙うのは勿論、ゼクトの左目が無いからだ。
視界が全てではないものの、人間の外界感知は多くが視界に頼っていることは否定できない。
隻眼という大きなハンデ、使わないという選択肢はないだろう。
靴に仕込まれた鉛――に似た何か――を強かと頭に食らい、軽い脳震盪を起こしたらしいゼクトは、僅かに俺の剣への対処が遅れる。
その隙があれば、十分。
爆発を起こして急激に加速した俺の剣は、ゼクトの首筋に真っすぐに吸い込まれて行って――――。
「……何故」
薄皮一枚を切り裂いたところで、停止した。
死を覚悟していたのか、不思議そうにゼクトが呟く。
「……なんでだろうな」
特に理由もなかった。
しいて言うなら、殺す必要を感じなかった。
「まあ良い、吾の負けだ。好きにするがよかろ」
「なあ、なんでお前は【灰鼠】に居るんだ?」
だから、そう尋ねたのは気まぐれだった。
「……む?吾は犯罪組織には特に所属しておらぬのだが」
「――ん?じゃあなんで此処に居るんだ?」
不思議そうに首を傾げたゼクトだったが、疑問なのは俺の方だ。
「……とある人物から、話を聞いたのだ。此処に来れば、強き者と闘える、と」
「ガッチガチの戦闘狂かよ……」
しかし、疑問は残る。
誰がゼクトを唆した?
何のために?
まず、俺を狙ったものだったのか?
だとしたら、何故俺が来ることを知っていた?
何故俺を狙った?
いくつもの疑問が噴出する。
だが、目の前の人物を質問攻めにしたところで、答えは返ってきまい。
ただの強い奴という言葉につられてやってきた戦闘狂の様だからな。
……とりあえず、制圧も完了したことだし、帰るとするか。
最後のほうは、ゼクトと戦うことが目的になっていたような気もするが、気にしないことにする。
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ちょっと投稿したらまたしばらく休みます……。
m(_ _)m




