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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第27話 初陣前夜

 私に続き、森川さんまで退職という状況になった今の職場。

 森川さんも引き継ぎで忙しい。


 森川さんは特に重宝されていた人間だから空いた穴はでかいし、女子社員からの人気も高かったからモチベが下がっている。


 でも、仕方ない。

 もう後戻りはできない。

 次が地獄であろうと──


 ◇


 勇凛くんは本社での研修がスタートした。

 大学に行く日以外は会社。

 心配で心配でメッセージを送って安否確認をしていた。


『勇凛くん大丈夫??』


 返信が返ってくるのは昼休憩。


『大丈夫です。覚えることが多いですが、頑張ります』


 ため息がでる。


「母親みたいだな」


 なぜか間近にいた森川さんがトーク画面を覗いていた。


「わ!プライバシーの侵害ですよ!」


「まぁ、他の内定者もいるかもしれないし、一人ではないよ。たぶん」


「ところで、森川さんは勇哉さんとはどうなんですか?」


「とりあえず、おだてて適当にあしらっている。呼び出しが多いが……。まぁ向こうのおごりだから」


 森川さん……気の毒すぎる。

 あの人の気まぐれにつきあうなんて。


「でも、一般人じゃ行けない場所にも連れていかれるから、割と面白かったりはする」


「そうなんですね……」


「それより、もうすぐだろ。社長秘書みたいなもんだから、今より見た目気合いれないとな」


 う……。

 そう言われるとプレッシャーが。

 でもその通り。


「色々服とか探してきます……」


 入社前からコストかかってめんどくさい!


 ◇


 仕事帰り。


 百貨店の割と高めのアパレルショップにいた。

 高い……貯金が。

 私が悶々としながら商品を見ていると


「何をしている」


 ──この声は


 振り返ると、そこには勇輝さんと……謎の女性。

 女の人は彼の腕にべったりとしがみついていて、奥さんだとは到底思えない。

 そして彼女に睨まれる。


「見ての通り、服を見ているんです。今後のために」


「言っておくが、勤務中の服はもう用意してある」


「え?」


「私と同行することもあるから、見た目だけでも相応な姿をしてもらわないと困る」


 そう言って、彼は女と行ってしまった。


 相応……ですか。

 仕事だけじゃダメってことか。


 用事がなくなってしまったから百貨店から出ると、勇凛くんから連絡が。


『連絡遅くなりました。今終わりました。七海さんはどうですか?』


 勇凛くん……。


『今大吉百貨店にいるよ』


『俺もそっちに行ってもいいですか?』


 仕事終わりの勇凛くん。

 スーツの勇凛くん。

 見たい!


『うん。待ってるね』


 ──しばらく近くのカフェにいると


「七海さん!」


 スーツ姿の爽やかな勇凛くん。

 スーツの勇凛君を見るのは二回目。

 やっぱり似合ってるしかっこいい。


 生きててよかった。

 嫌な気持ちがその瞬間ふっとんだ。


「お待たせしました。あの……一緒に近くでご飯食べませんか?」


 仕事終わりのデート。

 いや、仕事帰りに会うのは今に始まったわけじゃないけど、オフィスラブっぽい。


 にやにやしている怪しい三十路女であった。


 ◇


「何か食べたいものありますか?」


「勇凛くんは?」


「俺は……和食がいいです」


「うん!じゃあそうしよう!」


 私たちは和食レストランに行った。


「勇凛くん、今はどんなことしてるの?」


「社会人の基本的なマナーですね……。あとは兄から渡された課題が」


 課題……?


「え、どんな?」


「会議の議事録作成です」


「え!?」


 まだ正式入社もしていない勇凛くんにそんなことを!?

 鬼!悪魔!


「勇凛君……無理しないでね」


「ありがとうございます」


 その笑顔が健気だった。


「私も頑張るよ」


「七海さんも無理しないで下さいね」


 あの男が無理をさせないわけがない。

 どんな屈辱を味わっても成し遂げてやる。


「勇凛くんはいつ引っ越しなの……?」


「来週ですね」


 私たちの思い出がある場所。

 寂しく感じる。


「今から来ますか?」


「え、いいの……?」


「はい」


 その後私たちは勇凛くんの家に向かった。


 ◇


 勇凛くんの部屋は段ボールがあって、部屋のものがだいぶ整理されていた。


「なんか寂しいな」


「そうですね」


 その時、目に入った。


 ──人生ゲーム


「勇凛くん!人生ゲームやろう!」


「あ、いいですよ」


 私が入院していた時以来結局やってなかった。


 前と同じコマを使って、ルーレットを回して進む。


 あの時を思い出す。

 まだ結婚の実感も湧かなかったし、むしろやめようともしていた。

 今は、結婚してよかったって思える。


「あ……」


 私が止まったところに書いてあったのは、『こどもが生まれた』。

 あの時は、産もうなんて微塵も思ってなかった。


 でも──


「私、こどもほしいかも」


 そう思えた。

 勇凛くんとの間に。

 今は厳しいけど。


「沢山じゃなくていいので、俺もほしいです」


 二人で見つめ合って、少し笑顔になった。


 そのあとも人生ゲームを続けて、無事に二人ともゴールした。


 山あり谷あり。

 でもきっとゴールにたどりつける。

 そう信じた。


 ◇


 そしてとうとうその日がきた。


「川崎さん、元気でね~!」


 今の会社の最終出勤日。

 色んな社員に声をかけられた。


「お世話になりました」


 そういって挨拶巡り。

 すると視線を感じた。


 森川さん。


「なんかあったら連絡して。俺はまだかかるけど、繋がりはあるからさ」


「はい……。ありがとうございます。心強いです」


 森川さんには申し訳なさでいっぱいだけど、すごく助かる。


「じゃあ、またあそこで……」


 そして私はこの会社を去った。


 平凡なOL卒業。

 次は大企業の副社長秘書。


 気合を入れた。

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