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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第28話 初陣

 ──初陣前日の夜


 姉から電話がかかってきた。


『あれからどう〜?』


 姉ちゃんが私をあの頃の平凡な私に戻してくれる……。


「姉ちゃん……私、林ホールディングスに入社することになったんだ……」


『え、転職?大企業じゃん。よかったね〜』


「実は……勇凛くんはその会社の社長の息子だったの……』


『は?』


 今まで聞いた中で一番大きな『は?』である。


「実は……副社長のお兄さんに結婚反対されて、二人であそこに入社する流れになったの……」


『なぜ??』


「お兄さんの秘書になって、私が有能だって証明しないと認めないって感じ」


『秘書!?結婚してからそんなことになるって。やっぱ結婚までの順序はちゃんとするべきだったね……。今言っても仕方ないけど』


「ハイ……」


 ぐうの音もでない。


『そんな無理する必要あるの?そんな扱いうけて。もう手を引いたら?』


 わかってる。その方が楽。


 ──でも


「勇凛くんと一緒にいたいんだよ〜〜〜!」


 号泣。


『そうか……“勇凛くん ”はどうなの?今』


「他の会社の内定取り消されて、強制的にあの会社に入社になって、研修中」


『えぐ。……とりあえず二人でやってみて、しんどかったら話し合って決めるしかないね……』


「うん……。ねえちゃん、話聞いてくれてありがとう」


『心配だわー。また教えてね』


 電話を終えた。

 少しスッキリした。


 その時、スマホに通知が来た。


『明日、何かあったらすぐに連絡ください。心配です』


 私を心配してくれる人がいる。

 その人たちのためにも頑張ろうと思えた。


 ◇


 ──朝


 私は早朝から起きて、全身を林ホールディングス社員にできるだけ相応する格好にした……つもり。


 緊張する!!

 あまり眠れなかったし、心臓はずっと強く早く鳴っている。


 よし!!


 私は時間になって家を出た。


 ◇


 会社最寄駅の出口。

 勇凛くんが立っていた。


「七海さん、おはようございます」

「おはよう!」


 空元気。


 勇凛くんと会社まで向かう。


「不安です……」


 勇凛くんの方が緊張しているのではないか……?


「大丈夫。私、これでも社畜として何年間もやってきたから!」


「また倒れたらと思うと……」


 それはなんとも言えない。


 でも。


「倒れても私は辞めない。折れない」


 勇凛くんが手をそっと握ってくれた。


「二人で乗り越えましょう」


 朝日が私達を照らす。


 そしてビルのエントランスに入った。


 エリート社員がどんどんビルに吸い込まれる。


 私は受付に直行した。


「林七海です。副社長につないでください」


 受付嬢は内線を繋いで話していた。


「28階の会議室へどうぞ」


 私と勇凛くんはエレベーターに向かった。


 途中の階で降りる勇凛くん。


「七海さん……気をつけてください」


「うん」


 後ろ髪を引かれるように、私たちは別れた。


 そして28階。

 静けさに包まれたフロア。

 会議室に向かった。


 会議室の前で深呼吸。

 ノックをする。


「入れ」


 重くのしかかる声が聞こえる。

 ゆっくり開けると、勇輝さんが上座で腕を組んで座っている。


「今日からよろしく」


 口元は微笑んでいるのに、目は鋭い。


「はい。よろしくお願いします」


 睨み合う。

 勇輝さんは紙袋を差し出してきた。


「これに着替えなさい」


 紙袋に書かれている文字。

 ハイブランドのものだ。


「どこで着替えればいいでしょうか」


「私はこれから自室に戻るからここで着替えなさい。着替えたら、29階に来るように。あと、この書類に記入して」


 入社書類……。


 彼は会議室から出て行って、私はすぐに着替えた。


 新しい自分。

 社畜の時とは違う。

 目標のために、大切な人のために働く。


 ◇


 着替えて会議室から出ると──


 待ち伏せていた厄災。


「あ!七海ちゃん!何その服、いい感じじゃん。これから宜しくね」


「よろしくお願いします……」


 追い討ちをかけるように現れる。


「これから毎日会えるねー。仕事帰りとか遊びに行こうよ。俺今日空いてるからさ」


 煩いんじゃ。


「人妻なんで、お断りします」


 無視して副社長のところへ。

 またエレベーターを上がる。

 29階。

 社員の声が聞こえる。

 そちらの方向へ行こうとすると


「君の仕事場はこっち」


 勇輝さんが待ち構えていた。

 勇輝さんの後についていくと、たどり着いたのは『秘書課』とプレートに書いてある。


 勇輝さんがその扉を開けると──


 誰もいない。

 デスクは沢山あるのに。

 どういうこと……?

 私が戸惑っていると──


「秘書課の社員は全員別の部署に配属させた」


 え……?


 恐る恐る彼の顔を見る。

 少し口角が上がっている。


「秘書課はこれから君一人だ」


 とんでもない試練がさっそくのしかかってきた。

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