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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第23話 愚痴

 ──翌日


 私の目は真っ赤に腫れていた。

 昨日家に帰ってから大泣きしてしまった。

 悔しくて。

 目をある程度冷やしてから出社した。


 しかし──


「何その目……」


 森川さんが私の顔を見て驚いている。

 大きなマスクを買ってなるべく顔を隠していたのにバレた。


「色々あるんですよ……」


「またかよ」


 お前に私の気持ちがわかるか!

 私は無視してデスクに戻って引き継ぎ書を作った。


 ◇


 仕事が終わってビルから出ると──

 なぜか森川さんが待ち伏せていた。


「何してるんですか」


「聞いてあげようと思って」


「いいですよ。別に」


「川崎さんさー。もう俺たちバラバラになるわけじゃん?」


「そうですけど……」


「腹割って話そうよ」


 もう話すことなんてないし、この人の気持ちは前聞いたし。


「信用してよ」


「そんなこと言われても……」


「奢るから」


「………」


 ◇


「私悔しくて悔しくて!あんなやつの秘書とか絶対やりたくない!!」


「うん……」


 飲み屋で森川さんと話してるうちに、だんだん怒りが湧いてきて、ずーっと森川さんに愚痴っていた。


「クソだと思いませんか?あんなのが副社長とか、日本も終わりですよ!」


「仕事とプライベートは別だと思うけどな……」


「はい!?」


「なんでもない」


「でも、何もなくてよかったな。昨日」


「はい。本当、なにごとかと思いましたよ」


「あのさ……。そんなに辛いなら、もうやめろよ」


「え?」


「あの会社の御曹司とガチでやり合うなんてバカだよ」


「は!?」


 ヒートアップしていく私を客が見ている。

 見かねた森川さんに外に出された。


 夜風が肌に当たって少し冷静になった。


「スミマセンでした」


 森川さんはため息をついた。


「スマホかして」


「え?なんでですか?」


「確認したいことがある」


 確認……?


「すぐ返してくださいね」


 森川さんは私のスマホを受け取るなりどこかに電話をかけた。


「え、誰に電話してるんですか!?」


 勝手に何してるのこの人!

 私が取り返そうとしても身長差で届かない。


「あ、旦那さん?奥さんが手に負えないから迎えに来てくれる?」


 ──まさか


「なに勇凛くんに電話かけてるんですか!!」


 今日は勇凛くんバイト最後の日なのに!

 通話が終わると森川さんはスマホを返した。


「夫婦で話し合えよ。ちゃんと」


 この人に話すんじゃなかった!

 その時頭に森川さんの手が乗った。


「自分大事にしろよ」


 そう言って行ってしまった。


 ◇


 すぐに勇凛くんから電話がかかってきた。


『七海さん大丈夫ですか!?』


 勇凛くんの声──

 昨日電話できなかったから一日ぶり。

 涙が出た。


「勇凛くんごめんね……」


『え、なにがですか?とりあえず今すぐ行くんで待っててください!』


 ──しばらくすると勇凛くんが走ってきた。


 純粋で真っ直ぐな勇凛くん。

 眩しい。


「七海さん大丈夫ですか?あの人に何かされたんですか?」


「ううん。違うの。実は──」


 私は勇凛くんに全部話した。


「……今から本社行きます」


 勇凛くんが呟いた。

 その表情は怒りに染まっている。


「待って。それだとあの人の思う壺だよ」


「こんなやり方はあまりにも酷すぎます。俺だけならまだしも……」


「お兄さんは私が邪魔なんだよ。だから私に仕掛けてきたんだよ」


「それが卑劣なんです」


 勇凛くんの拳は爪が食い込むくらい強く握られている。


「勇凛くん。私、認めさせたいの。私自身の力で。弱音吐いちゃったけど、でもそれは諦めたくないからなの」


 勇凛くんは困っている。


「じゃあ七海さんが耐えるだけなんですか……?」


 胸が痛む。

 夫婦で支え合おうって私も言ってるのに。


「……耐える。でも、無理そうだったらまた相談する。私はまだ頑張りたい」


 勇凛くんは俯いた。


「何もできなくて不甲斐ないです……」


「そんなことないよ。私、今まで生きてきた中で、こんなに誰かのために頑張ろうって思えたのが初めてなんだ」


 勇凛くんの手を握った。


「勇凛くんとずっと一緒にいたいから」


 勇凛くんは手をゆっくり握り返してくれた。

 穏やかな笑顔に少し戻った。


「家まで送ります」


 勇凛くんは納得していないかもしれない。

 でも私は自分ができることを精一杯やりたい。


 そう思った。


 ◇


 二人で月が照らす夜道を歩く。

 会話はなかった。

 でも手はしっかり握っていた。


 あっという間に自宅に着いてしまう。

 もっと一緒にいたい。


「勇凛くん、やっぱり一緒に住もうよ。ここで」


 そう言うと、勇凛くんは俯いた。


「実は……俺の新しく住むところはもう用意されてるみたいです」


「え……?」


 じゃあ一緒に住めないの……?

 やっと夫婦として前に進めると思ったのに。


「そうなんだ……」


 そうやって私たちを物理的に離そうとしてくるんだ。

 本当に腹が立つ。


「でも、用意されただけです。俺がどこにいるかは俺の自由です」


「うん」


 その言葉に安心した。


「でも、今の状況で二人で暮らすのが少し不安になってます」


「……どうして?」


「自分もそうですけど、七海さんにも被害があるので、精神的に全く余裕がないです」


 私はそれでも大丈夫だけど……。

 勇凛くんはまだ学生。

 会社で仕事をすることに慣れるまでは大変だと思う。

 私を思いやる余裕なんてきっとない。

 ここは自分の気持ちを抑えた方がいい。


「わかった!じゃあ、勇凛くんの心の準備ができるまで待つ!」


 勇凛くんの表情が柔らかくなった。


「ありがとうございます」


 勇凛くんが私を抱きしめてくれた。


「……七海さん」


「うん」


「いいですか?今日……」


 それが何を意味しているかわかった。


「いいよ」


 私もそうしたかった。

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