10 時空のアモルファス、その名前
そのアモルファスの体はくすんだ灰色をしていた。視線はどこか落ち着かなくてぼくを見ようとしていなかった。
「だいたいボク、何のスキルも持ってないよ? 臆病だし、のろまだし、好き嫌い多いし……」
自己評価が低いな。のけものにされていじけているのかもしれない。それに好き嫌いって何だ。カロリーバーの味のことか?
「それでもボクを選んでくれる?」
(▼はい いいえ)
大丈夫、ここから大逆転があるのをぼくは知っているからね。
「本当に! うれ……ふ、ふーん、じゃあボクにかっこいい名前をつけてよ! それが気に入ったら一緒についていってあげてもいいよ」
ここにきてまさかのツンデレか。まあかわいいから許すけど。
そしてぼくはこの子に名前をつけてあげた。
「ジャスパー、それがボクの名前なの? ジャスパー……いいね、気に入ったよ!」
その言葉と同時にジャスパーの体が輝き出す。灰色の鱗が剥がれ落ちてその下から白い大理石を思わせる鱗が姿をあらわす。そして鱗の輝きは角度によって様々に色の変化を見せる。
「すごい、こんなになるなんて信じられないや! ありがとう、トキヲ。これからよろしくね!」
そう言ってジャスパーはうれしそうに辺りを飛び回った。
そして朝に目をさますと、ぼくのおなかの上で眠っていたジャスパーも目をさました。ぼくを見てあいさつをするように「きゅるる?」と鳴いた。ああ、もう喋らないのか。
おはよう、ジャスパー。こちらこそよろしく頼むよ。