プロローグ 冬の聖戦
伝え聞くところによるとその年の冬は寒かったらしい。
とある会場にて熱い戦いが勃発しようとしていた。
ある人は冬の陣という。
またある人は天王山という。
あまりの戦いの激しさにテルモピュライの戦いとも喩えられる。
そこは人の悲喜こもごもが集まる場所。
だからこそ変なエネルギーでも生まれたのだろうと思われた。
(後に単に1人の術者が狙った物だと判明したのだが。)
「懐かしき我が故郷!!」その男はその穴から出てくるなりそういった。
「この空気かわってねえ!!」
その男はみるからに高貴な衣装を着ていた。
「陛下、ここがあなた様が言っておられた世界ですか?」
近くにいた女がいう。
「ああ。ここはコミケって言ってな。お前が好きな男同士が絡む本もあるんだ。」
「そ、それはそれは・・・・。」
明らかに女は動揺したようである。
微妙に目も輝いていた。
彼ら集団は明らかにおかしな格好をしていた。
しかし、目立つことはなかった。
なぜならコスプレした似たような集団が、彼らの回りに山ほどいたからである。
「お前らも武器の使用は厳禁。封印の魔法しておくぞ。」
その男は他の剣をもった男たちに命じると魔法をかけた。
これで剣を抜けなくするのである。
警察の職質対応でもあるのだが、そこまで言うつもりはなかった。
「我々は国交を結びにきたのだからな。」
「しかし陛下、あなた様が御自ら来られなくても。」
「俺自身が来たかっただけの話だ。・・・・かつての故郷にな。」
妙にはしゃいでるような感じの、その陛下とか言われてる男はれっきとした皇帝である。
ただし、異世界の。
「お前らちょっとそこで待ってろ。」そう言い残すと男は案内所に行った。
「すみません、今日は何年ですか?」
皇帝であってもかつて日本人だったクセは直らなかったようである。
「え?」案内嬢はコミケなのだから分かるだろと思いながらも、社会人としての当然の行為をする。
「201X年ですけど・・・?」
「え?」男は意外そうな顔をした。
「・・・そうですか。わかりました。ありがとう。」
男はクビをかしげながら部下の所にもどった。
「どうなさいました?」
「・・・・・こっちの俺が死んでから数年しか経ってない。」
大ポラレス皇国、第211代皇帝ベレトラル=パセル=ポラレス。
彼は元日本人の転生者だった。