1話
春休みに書き始めた物が完成したので投稿します。
夜は嫌いだ。
理由は単純で、死ぬからだ。
「……は?」
目の前にいたそれは、人の形をしていなかった。
暗い路地裏。コンビニ帰り。袋の中には安いパンとエナドリ。
どこにでもある、どうでもいい帰り道。
なのに、目の前にはどうでもよくないものがいた。
影みたいに揺れてるくせに、やけに輪郭だけははっきりしている。
顔があるはずの場所には、何もない。
ただ、こっちを見ている気配だけがあった。
「……これ、夢か?」
とりあえず言ってみる。
現実逃避は大事だ。
次の瞬間、首が飛んだ。
「――――あ」
痛みが来るより先に、視界が反転した。
地面が近い。いや、俺が落ちてるのか。
ああ、これ、死んだな。
最近わかるようになってきた。
死ぬときって、こんな感じだ。
目を開ける。
「……はぁ」
見慣れた天井。自分の部屋。
スマホを見ると、時刻は夜の8時ちょい前。
コンビニに行く前の時間だ。
「またかよ……」
ベッドから体を起こす。
首を触る。ちゃんと繋がってる。
でも、さっきの感覚は残ってる。
冷たくて、あっさりしてて、どうでもいい感じの死。
「……今回もアウト、と」
慣れって怖い。
普通ならもっと取り乱すべきなんだろうけど、もうそんな気力もない。
原因は分かってる。
あの変なのだ。
最近、夜になると出る。
俺以外には見えてないっぽい。
で、だいたい死ぬ。
「行くか……」
どうせ行かないとまた同じになる。
この巻き戻りは、回避しない限り何回でも同じ死に方をさせてくる。
ジャケットを羽織って外に出る。
夜の空気は、少しだけ冷たい。
同じ道。同じ路地。
さっき死んだ場所。
「……いるよな」
いた。さっきと同じ位置にそれがいる。
「はいはい、どうも」
軽く手を振る。
相手は何も反応しない。
まあ、そりゃそうか。
「今回はちょっと工夫するか」
前回は真正面から近づいたのが悪い。
なら、横から――
足音。
「っ……?」
振り向く。
そこには、制服姿の女がいた。
黒髪、無表情気味。
どっかで見たことある気がする。
同じ学校のやつだ。
「……下がって」
短く、それだけ言った。
手には、見たことのない形の武器。
刀、みたいな何か。
「いや、それ――」
言い終わる前に、女はそれに突っ込んだ。
速い。普通じゃない。
一瞬で距離を詰めて、斬る。
けど、
「……っ!?」
止まった。刃が、通ってない。
影みたいな体に、引っかかってる。
「やば――」
言った瞬間、それが動いた。
女の首に、黒い腕みたいなものが伸びる。
間に合わない。
これ、見たことある流れだ。
「……あー、はいはい」
気づいたら、体が動いてた。
女を突き飛ばす。代わりに、俺が前に出る。
「また俺かよ」
黒い何かが、俺を貫いた。
今度は腹。鈍い痛み。内臓がぐちゃってなる感じ。
「……ほんと、雑だな」
意識が遠のく。
視界の端で、女がこっちを見てた。
驚いた顔。そりゃそうだ。
いきなり出てきたやつが、勝手に死ぬんだから。
「……じゃ、後よろしく」
「……はぁ」
また、目が覚める。
時間は少し巻き戻ってる。
「……3回目か」
ため息をつく。
めんどくさいでも、今ので分かった。
あいつ、普通の攻撃効かない。
それと――
「……あの女、巻き込まれるな」
これは確定。
「……最悪」
頭を掻く。
関わりたくなかったんだけどな。こういうの。
でも放っとくと、多分また死ぬ。
あいつが。
「……行くしかねぇか」
どうせ俺は死んでも戻る。
なら――使うしかない。
夜は嫌いだ。
死ぬからじゃない。
死ぬのが、当たり前になってるからだ。
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