10 認める料理
日本「ん?今の声って何?」
フランス「我々のご先祖様……」
日本「○ッピーかな?」
イタリア「ローマ帝国だ……」
台湾「て、帝国?」
フランス「これまでの料理勝負は」
イタリア「ご先祖様が認める料理を探す為の試験だったのだ」
中国「知らないアル」
旭日「認める料理ですか?」
フランス「そう、食べ物で釣らないと」
イタリア「現役時代の様に色々やらかしかねない……」
中国「キリスト殺したアル」
台湾「おおぅ」
フランス「ローマ帝国の始まりは、紀元前からだし戦わないと負ける世界なので……」
旭日「認める料理は、探し出せたんでしょうか?」
イタリア「いや、元々どんな料理を出しても認めないだろう……」
台湾「……では、どうするのでしょうか?」
フランス「それでも、優勝した日本に掛けるしかない……」
日本「帝国か……黒歴史だな……」
◇◇◇
フランスとイタリアが段取りを付けて、出した料理をローマ帝国が認めるかどうか審査する事になった。
そして、その当日……
◆調理開始◆
台湾「日本は、バリバリの板前の恰好ですが何を出すんでしょうか?」
中国「魚住アルか?」
旭日「研いで浸水しておいた米を炊き始めましたので、和食かと思われます」
台湾「一品、一食分、コースのどれでしょうか?」
日本「うーん、一品だけど一食分かな」
旭日「全く見当が、付きません」
台湾「日本が、魚を捌き始めました」
旭日「魚は、様々な種類が用意されていますね」
台湾「大中小と大きさが全く違います」
旭日「青魚ばかりでなく、鯛や鮃の様な白身や赤身の魚もあって色取取です」
台湾「切った形を揃えているのでしょうか?」
旭日「柵にしたり、三枚おろしや五枚おろしにしていますね」
台湾「ピンセットの様な物も使っていますが」
旭日「骨抜きと言う専用の道具です」
台湾「なるほど、小骨を取るわけですね」
旭日「はい、柵にもしているので刺身を引きそうです」
台湾「刺身を引くと言うのは?」
旭日「刺身には専用の刺身包丁を使うのですが、細長く薄い刃の包丁です」
「持ち手に近い刃元を魚に当て、包丁を手前に引きながら切ります」
「奥に押したり上から断絶したりせず、手前に引いて切る為に刺身を引くといいます」
台湾「なるほど」
旭日「ちなみに、刺身包丁は複数種類があり、関東は蛸引き包丁という刃先がカットされたのを使ったりします」
台湾「関東だけですか?」
旭日「江戸っ子は喧嘩っ早いので、刃傷沙汰になり難くする為という説もあります」
台湾「あれま」
◇◇◇
台湾「日本は、魚だけでなく野菜を用意し始めました」
旭日「大根や胡瓜や大葉こと青紫蘇、生姜もありますね」
「刺身のつまや薬味にもなります」
台湾「インベンドリから鍋を取り出しました」
旭日「これは、干瓢や椎茸の旨煮ですね」
台湾「ということは?」
旭日「巻き寿司の可能性がありますね」
◇◇◇
台湾「先程おろした魚を、刺身に引き始めました」
旭日「刺身の場合、大きく2つに分かれます」
台湾「それは、何でしょう?」
旭日「鮮度が良いのと熟成させる方法の2つです」
台湾「ほう」
旭日「生で食べるので鮮度が良いのは勿論ですが、肉のエイジングの様に熟成させて旨味を増やします」
台湾「ならば全て熟成でも良いのでは?」
旭日「はい、お寿司屋さんでは行っている所が多いです」
「まあ、青魚や白身や赤身、食べ方によって熟成と言いますか塩や酢に馴染ませる程度の短い時間のも多いですがね」
台湾「なるほど」
旭日「しかし、旨味成分となるイノシン酸が多くなれば美味しくなるという訳でも無いんです」
台湾「え?そうなんですか?」
旭日「はい、椎茸でも傘が開ききって成長し旨味成分が多い物よりも、傘の巻きが強いどんこの方が食べると美味しいという意見が多いです」
台湾「それは、何故でしょう?」
旭日「食感の差です」
台湾「食感?」
旭日「海外だとテクスチャーと言いますが、日本だと歯触り・歯応え・口当たり・舌触り・喉越し・口溶け等の様々な言い方があります」
台湾「なるほど」
旭日「熟成の刺身だと柔らかくなりすぎて、触感が悪くなるという意見もあります」
「握り寿司だとシャリに載せるので、それほど気になりませんが刺身で食べる際は……」
台湾「デロンてしますね」
旭日「九州とかは甘めの醤油で旨味成分を足し、然程、熟成させずに食べる事が多いです」
台湾「ふむふむ」
日本「その辺の好みは個人によるので、食べ比べとして熟成させたのも用意した」とインベンドリから刺身を取り出す。
台湾「おお」
日本「更にドン!」と色々な調理済の食材を取り出す。
旭日「出す料理は、若しや?」
日本「そう、手巻き寿司」
台湾「何と、一番日本ならではの料理である寿司」
旭日「それを家庭でやる場合は、巻き寿司・稲荷寿司・ちらし寿司と共に身近な寿司である手巻き寿司で来ました」
台湾「普通の寿司は、自宅でやらないんですか?」
旭日「日本だと自宅で握り寿司を作る事は、稀ですね」
「買ったり、食べに行った方が早いので」
台湾「ああ」
フランス「しかし、そんな家庭料理で大丈夫なのか?」
イタリア「奇跡が起きるのを願うしかない……」
◆実食◆
「わしがローマの命令権が及ぶ範囲 ローマ帝国である!!」
「以上!!」とローマ帝国が、ド迫力の挨拶。
日本「異世界料理対決ルールブックを読み込んだ結果、料理の配膳は別の人でも問題ない事が分かりました」
中国「日本 きさま このブック よみ込んでいるなッ!アル」
台湾「はい?」
日本「なので、この方に配膳して頂く事にしました」と扉があく。
そこには、若く小さな女の子が居た。
フランス「あの子は、若しや……」
イタリア「若しや……」
フランス&イタリア「EUちゃんッ!」
台湾「あーっと、配膳するのはEUちゃんという、まだ小さい女の子です!」
中国「なにそれ?アル」
旭日「EUこと『European Union』は、1993年生まれですので……」
「欧州旗としては1955年生まれでですが、まあ何にせよ若いですね」
中国「なら我も、1949年生まれだからピチピチアル!」
旭日「欧州機は青地に12の黄色い星、五星紅旗は赤地に5の黄色い星……だけと聞くと似ていますが……」
EUちゃんは、手を洗いタオルで水気を拭いた後、手巻き寿司を作り始める。
台湾「EUちゃんは、板海苔の上に酢飯を盛って平らにしています」
旭日「日本が、先程まで焙っていた板海苔ですね」
「確認しました所、EUちゃんは手巻き寿司を作る為に日本と特訓をしたそうです」
台湾「日本が用意した数々の具材を使って、手巻き寿司が完成しました」
旭日「それを、ローマ帝国に手渡す様ですね」
ローマ帝国の座っている椅子が、少し離れた所にある為、両手で手巻き寿司を持ったEUちゃんが転んでしまった、どうしよう。
台湾「ですが、あーっとEUちゃんが転んでしまいましたッ!」
EUちゃん「ふええ」
旭日「EUちゃんに怪我は無いようですが、手巻き寿司は床に落ちてしまいました……」
台湾「EUちゃんが、目にいっぱいの涙を溜めながら再度作り始めました……」おしぼりで手を拭き、作り始める健気なEUちゃん……
◇◇◇
台湾「『EUちゃんの手作り手巻き寿司』が完成しました」
中国「手作り手巻き寿司? なにそれアル?」
旭日「前の手巻き寿司より、更に良くなっていますね」
ローマ帝国の所まで慎重に歩み、出来た手巻き寿司を手渡そうとするEUちゃん。
困惑しているローマ帝国は、なかなか受け取らない。
そこへ、EUちゃんが出て来た扉が再度開いた。
台湾「ん?誰か出て来ましたよ」
旭日「2人居ますね」
フランス「あ、あの方々は……」
台湾「知っているのか フランス⁉」
フランス「うゐ」
イタリア「そう、あの方々は…」
フランス「東ローマ帝国と」
イタリア「西ローマ帝国の」
フランス&イタリア「御二方だッ!」
台湾「……となりますと」
旭日「ローマ帝国が分裂……もとい、直系のお子さん達になりますね」
台湾「お二人とも成人した女性の様です」
旭日「ナーロッパで御馴染みの中世ヨーロッパに当たる御二方です」
台湾「いつも、お世話になっております」
EUちゃんに歩み寄り、左右の横に立つ二人。
東&西ローマ帝国「父さん、あなたの子孫にあたる玄孫の娘よ」
台湾「そうなんですか?」
旭日「それ以降かも?ですが、言い方が一般的では無いので確実に子孫という意味でしょう」
中国「夜叉猿の娘アルか?」
ローマ帝国「ま、孫娘?」と動揺しながらも手巻き寿司を受け取る。
EUちゃん「味付きなので、そのまま丸かじりできるよ」といいつつインベンドリから3つの手巻き寿司を取り出し東&西ローマ帝国にも渡して自分でも手に持つ。
台湾「味付きとは?」
旭日「醤油をつけ過ぎて塩分過多にならない様に、色々と合わせた醤油をスプレーやジュレにして既に味付けしてある様です」
台湾「なるほど、初めてだと付け過ぎや付けなさ過ぎに陥りますしね」
東&西ローマ帝国「父さん、孫娘が一生懸命作ってくれたのよ。一緒に食べましょう」
EUちゃん「いただきます」と言い、東&西ローマ帝国の2人と食べ始める。
わなわなと震えているローマ帝国。
EUちゃん「おじいちゃん、EUが作ったの食べてくれないのかなぁ……」と言い目を潤ませる。
ハッとするローマ帝国。
ローマ帝国「お、おじいちゃんか……」と手巻き寿司を食べる。
EUちゃん「どう、おじいちゃん。おいしい?」
ローマ帝国「ああ、美味しいよ」と目に光る物が流れて来る。
台湾「……という事は?」
旭日「この料理を認めると言う事でしょうか?」
ローマ帝国が、実況解説席をちらり、フランス&イタリアをちらり、東&西ローマ帝国をちらりと見てから、EUちゃんに向かって微笑みながら「嗚呼、認める大満足だ」と宣言。
台湾「あーっと、ローマ帝国がこの料理を認めました」
ローマ帝国は、最初から渡されていたお茶を飲んだ後……
EUちゃん「おじいちゃん、一緒につくろう」と手を引いてテーブルに近寄る。
EUちゃんとローマ帝国と東&西ローマ帝国の四名が、手巻き寿司の具材が揃ったテーブルに移動。
EUちゃん「まず、これで手を拭いて」と冷たいおしぼりを渡す。
食べる前に、熱いおしぼりを渡されていたが、今度は手の温度で具材が悪くならない様に配慮している。
和気藹々と、手巻き寿司と作ったり食べたり食べさせたり始めている。
西ローマ帝国「フランスとイタリア、あなた達も来なさい」
怖ず怖ずと近寄る二人。
旭日「フランスとイタリアは、西ローマ帝国の直系ですしね」
台湾「なるほど、かーちゃん系統ですね」
旭日「しかしですね」
台湾「はい?」
旭日「『EUちゃんの手作り手巻き寿司』となっていますが……」
日本「それで問題は無い」
「私の作った料理に対する評価でなく、ローマ帝国が認める料理かが評価なので」
「実際、私が最後まで作って出しても評価は得られなかっただろう」
台湾「それは、そうでしょうね」
旭日「日本が調理している時は、食べる気どころか、審査する気すらなかったですしね」
日本「日本だと『おふくろの味』と言うように、家族や身近な人が作ってくれた物は掛け替えがない」
台湾「それは、分かります」
旭日「料理は愛情!ですね」
お茶を飲みながら、こくりと頷く日本。
日本「しかしまあ、あの場で『不味い認めん』とは言えんよな」
「配膳云々とかは、ブラフだしw」
中国「汚い、日本汚いアル」
台湾「まあ、今のローマ帝国はデレデレで凄い喜んでますし」
旭日「絶対認めないマンを相手するには、これしかないでしょうね」
日本「料理自体、具材の種類も質も量も凄く頑張って揃えたので超大変だった……」
EUちゃん「日本さん達も、こっちに来て一緒にたべよう」とのお誘いで全員で食べる事になった。
◇◇◇
フランスやイタリアや中国が、追加で料理を作ったり
3日後?に繕って復活してたイタリア帝国が、本場のマンマの味を披露したりと「ローマ帝国が認める料理の大会」は和やかに幕を閉じたのであった。
日本「勝ったッ!第一部完」




