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第173話 全てを刈り取る鎌


降り注ぐ雨のように天井の沼から人形が生まれ落ち、黒き大海を目指しゆっくりと進んでいく。


「ど、どうすんだクロノス様?! このままじゃエーテルが全部奪われちまうぞ?!」


「この数が相手では防ぎようがありませんっ!!」


アレクトとメガイラはクロノスを庇いつつ周囲の人形を蹴散らす。


【最後まで諦めない姿勢は大変立派ですが、この世には諦めてしまった方が楽になれる事もありますよ】


「へっ!! 笑わせんじゃねぇ!! こんなところで諦めたらペルさんに顔向けできねぇ!!」


「その通りです! 私達は倒れるわけにはいかないのです!!」


アレクトは視界の端で、岩肌に打ち付ける黒波を捉える。


「くそっ!! 水位の減りが早い! マジで全部吸い取られるぞ!」


クロノスは二人の前に立ち大鎌を大地に突き刺した。


「後は俺に任せておけ」


「クロノス様・・・?」


「急に何言ってんだ?! その体じゃ無理だって!」


クロノスは降り注ぐ人形達を見上げる。


「フッ。だからこそ俺がやる」


メガイラは目を見開き口元に手を当てる。


「まさか・・・ ご自身の命を投げ出すつもりではありませんよね?」


「おい嘘だろ?! ゼウスの奴を倒すんじゃなかったのかよ?!」


クロノスは静かに微笑む。


「無論ただで死ぬつもりは毛頭ないが、その役目は俺ではない。俺は星の声に呼ばれ、こうして復活しただけだ。全てはニケを導くために」


「で、ですが一体どうやって・・・」


「こいつを使う」


クロノスは大鎌を掲げ回転させる。


黒き大海の水位がみるみる減少していく。


人形達の歩みが止まる様子はなく、ぽつぽつと天井から降り注ぐ。


「あまり時間はないな。二人は何とかネメシスと人形の動きを抑えてくれ」


「そ、そんな事言われても! 本当に大丈夫なのか?! それにペルさんだって!!」


「少なくともこれ以上エーテルを奪われることは無くなるはずだ。後は頼んだぞ」


クロノスは感覚を頼りに黒海へ駆け出す。


【この期に及んで何をしようと言うのです】


タユゲテは高速でクロノスに迫る。


「オラァ!!!」


アレクトは悪魔の右腕に全力を込めた一撃を放つ。


【させません】


高音を響かせ無数の斬撃がアレクトを襲う。


「うわぁっ!!」


全身を切り刻まれその場に倒れる。


【何やら必死ですね。ここで止めを刺しておいた方がよさそうです】


倒れるアレクトに鋭い一閃を放つ。


「やぁっ!!」


その瞬間、背後からメガイラの鋭い右脚が打ち下ろされる。


【くっ!!】


振り向きざまに両手剣を薙ぎ払い激しく衝突する。


「あぁっ!!」


力負けしたメガイラは大きく吹き飛ばされた。


「二人とも、恩に着る」


クロノスは大海の前で大鎌を振りかぶった。


「さあ。お前の本領を発揮する時だ。≪死の大鎌(アダマス)≫」


クロノスが呟くと、大鎌は真っ赤に輝きだし巨神族の紋様が鎌の周囲を螺旋状に浮かび上がる。


真っ赤に染まり上がった大鎌を大海に思い切り刺し込む。


高濃度に圧縮されたエーテルが、徐々に赤色に染まっていき勢いよく大鎌に吸収されていく。


【消えてください】


起き上がるメガイラの眼前に両手剣を振りかぶったタユゲテが迫る。


「させねぇ!!」


上空から凄まじい速さでアレクトが急降下する。


【しつこいですね。無駄です】


アレクトの動きを利用し両手剣で衝撃を逃がし、そのままメガイラめがけて吹き飛ばす。


タユゲテは両手剣を水平に構える。


【一度の顕現で二度も使うのはネメシスの為にも避けたかったのですが、致し方ありませんね】


【二重奏・・・】


タユゲテは急激なエーテルの凝縮反応に気付く。


振り返ると、螺旋状の光を称える真っ赤な大鎌を携えたクロノスの姿があった。


二本の長い深い赤色の角と背中の羽。


金色の瞳も鮮やかな紅赤色に変わっていた。


全身に悪寒が走る。


その堂々たる佇まいは、死神そのものだった。


【な、何なのですか・・・ その姿は・・・】


タユゲテの頬に一筋の汗が滴り落ちる。


「≪死の大鎌(アダマス)≫は、一度発動すればこの世のすべてのエーテルを刈り取る死の大鎌。俺の中に残る闇の力を応用し、刈り取った大海のエーテルを全てこの鎌に集約した。大量の人形も含めてな」


【くっ!! 五重奏・(えん)


タユゲテの周囲に四本の光の剣が出現する。


クロノスは真っ赤な大鎌を軽く一振りする。


【え・・・?】


そよいだ風がタユゲテの頬を優しく撫でる。


同時に四本の光の剣は一瞬で弾け飛んだ。


バラバラになったエーテルは凄まじい速さで大鎌に吸収されていく。


【こちらも全力で挑まねばなりませんね】


タユゲテは祈るように両手剣を目の前に立て目を閉じる。


【六重奏・高雅(こうが)


タユゲテの周りに弧を描くように金青色の羽が六枚出現する。


半分ずつ上下に分かれ、三枚は複雑な動きで舞い、もう三枚は地面に潜り大地を割り進む。


大地を抉る光景とは裏腹に、幾重にも重なり合った音色は美しく奏でられクロノスに迫る。


クロノスは目にも留まらぬ速さで大鎌を薙ぐ。


真赤な一閃が走る。


「『朽ち果てる世界(アポトーシス)』」


あまりの速さに大気に亀裂が入り、大きな裂け目が出現しタユゲテの放った攻撃が、割れた大地ごと瞬く間に吸収されていく。


沈黙。


瞬きした瞬間だった。


真っ赤なまばゆい閃光と共に放出された膨大なエーテルに、周囲の建物や岩、木々、あらゆるものが粉々に砕け散っていく。


眼前に迫るその光景に、タユゲテはただ立ち尽くすしかなかった。


【あぁぁっ!!!】


真っ赤な衝撃波をまともに受けたタユゲテはしぼむ風船の如く飛ばされる。


「うわぁー!!」


アレクトとメガイラも、その凄まじい衝撃に耐えられず大きく飛ばされた。


クロノスは残像を残し瞬時に横たわるタユゲテの前に立つ。


「触覚がなくとも、視覚がなくとも、流れるエーテルを感じ取れば居場所を把握する事は可能だ。勝負あったようだな」


「うぅ・・・」


顕現を維持する事が出来なくなったタユゲテは姿を消し、元のネメシスに戻っていた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


ご意見等あれば感想も頂ければ幸いです!

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