23 もしかしなくても、そういうことですよね?
ライルに言われて、自分の行動を改めて思い起こしてみた。
出会い頭にセレンのことを観察していたことは覚えている。その後、馬車の中でも、ルル様を口説いたりしないか警戒してジロジロ見ていたかもしれない。その延長で馬車を降りてからもルル様との間に割り込んでいた。
時計塔の天辺では抱き着いてしまったけど、あれだけは事故だから仕方ない。それでも、
「うん、確かに私はいろいろとやらかしている」
「何か?」
馬車で私の隣に座っていたトリスタンが、私から話しかけられたと思って反応したようだ。
「なんでもありません。あ、そういえば、トリスタンさんも国境警備に従事されていたことがあるんですか」
「いえ、私はこちらにいたことはありません」
「でも、あの町のことは詳しかったですよね?」
「ああそれは……」
トリスタンにしては珍しく、何かを言いかけて口ごもる。
「単純に何度か訪れたことがあるからですよ」
歯切れが悪いから何か隠しているんだと思うけど、人に言えないような理由なら無理に聞き出そうとは思わない。
「そうですか」
その後はあまり話もせず、自分の阿呆さ加減を反省していた。
黙っているから、馬車に一般人がいない時は、モニカが近くに座っていたルル様に聖女のことをいろいろ質問しているのが耳に入る。彼女はこれからのことを事前に知っておきたいんだろう。
そんなモニカを見つめているセレン。そのセレンを、私と同じように警戒して監視しているイヴ。ふたりの行動も気になったけど、またライルに勘違いされるのも嫌だから、放っておくことにした。
そんな感じで何時間か過ごしているうちに、馬車は聖都に到着する。
「今回はありがとうございました。おかげで助かりましたわ」
「こちらこそルル様たちをお守りできて光栄でした。これを機にできれば専属に選ばれたいと思っております」
代表してグラントがルル様に挨拶をした。この寄せ集めのメンバーは今回限りだけど、この中には、現在選考中のルル様の専属の聖騎士に選ばれる人もいるかもしれない。
今回の旅も考慮されるだろうから、グラントは可能性が高いと思う。
「わたくしも、皆さまとまた、ご一緒できたら嬉しく思いますわ」
「ありがとうございました」
わたしも四人に向かって頭を下げて感謝の気持ちを告げる。
ここで聖騎士とは別れるけど、ルル様はまだ、モニカとイヴを関係者に紹介したり、ふたりの今後について決めなければいけないことがたくさんあった。
本当は関係部署にふたりを引き渡してしまえば、それで終わりだと思うんだけど、優しいルル様は保護者として、最後まで責任を持つつもりなんだと思う。をたとえそれが、聖女の仕事の管轄外だとしてもだ。
「では、モニカさんとイヴさんはわたくしについてきてくださいね」
「「はい」」
私も三人と一緒に大聖堂の裏手にある、私たちの居住地へ行くため歩き始める。その時に、何気なく後ろを振り返ってみると、聖騎士の四人はまだそこから動かず、こちらを見つめていた。
私に気がついたライルが軽く手を振る。
「なんだろなあ」
セレンの行動も空気が読めなくてどうかと思ったけど、ライルは逆に何をしようとしていたのかまったく読めなかった。だから、あの軽さは性格なんだと思っておくことにする。
モニカたちの今後が決まって、久しぶりに部屋に戻ったのは夜もかなり更けていた。だから、残念なことに今日は大司教様にお土産を渡すことができなかった。
それでも、次の日会いに行けばいい。そう思っていたのに、翌朝、なぜか私はルル様に連れられて、ある貴族の屋敷の前に一緒に立っていた。
「ここって、もしかして」
「伯爵様の頭痛が治らないのですって」
それはもしや、イヴの父親が雇われていたという、あの伯爵のこと?




