28 先代の皇帝
あんたは何をやったんだ……?
どうやらロイヤルヴァイオレットたちの抗争を生み出した、その原因でもある先代の皇帝は、何かやらかしていたらしい。
ファーガス皇帝と違って、こいつは本当に阿呆なんだ。
ってすごく不敬なんだけど、目の前にいるファーガス皇帝たちの父親の瞳の色はレモン色だからしかたない。
皇帝やってたんだから、もともとは皇帝色の紫だったはずだよね?
しかも、聖女のルル様が謁見するって知っているのにブリジットを侍らしている状態だし。これを見た瞬間、前の時代はそうとう大変だったんだろうなと同情してしまった。
だからファーガス皇帝は若くして代替わりを急いだんだろう。もしかしたら、教皇様がそう仕向けたのかもしれないけど。
「父上に紹介してやるからローザも会っておけ。聖女になった時のことを考えれば、権力者と顔見知りになっておいて損はないだろう」
そう言われて連れてこられたんだけど、もうこの人に権力ないじゃん。
そう思って呆れていたら、ルル様とファーガス皇帝の視線を感じた。
二人とも楽しそうに見えるんだけど? また表に感情が出ちゃっていたのか? もしかしたら、私のこれを見るためにわざわざ連れてきたんじゃないの?
ルル様とファーガス皇帝、なんでそんなところが似てるんだか……。
ちなみに今はいつもの自分の身体だ。ファーガス皇帝の残念そうな、それでいて面白そうな視線に、私が耐えられそうにないから、ファーガス皇帝と会わなければいけない時は入れ替わらないことにしてもらった。
「ローザとやら、ちこうよれ」
「は!? 何言ってんのよ」
いま言葉を発したのは私じゃない。先代の横にべったりとくっついているブリジットだから。
「父上、ローザはいずれ聖女になる身ですから、神を敵に回すことになりますよ」
「わ、儂は……最近」
「最近?」
「そ、そう、最近目が見えづらくてな、ローザとやらの顔がよく見えなかったから、そばで確認しようと思っただけだ。そ、それを二人して何を騒いでおる」
ブリジットとファーガス皇帝に責められた先代は、しどろもどろになりながら目も泳いでいた。
それを見て「釘を刺したからこれでいい」と、こそっとこぼしたファーガス皇帝。
私からしたらお爺ちゃんなのに、それでもお声が掛かるのか? まさかまだロイヤルヴァイオレットが増えているんじゃないよね? すごく怖いんですけど。
「最初にお主のことを傾国と言ったのを覚えているか」
この爺、やばすぎるって思っていたら、ファーガス皇帝が小さな声で話し掛けてきた。
「はい」
「お主、自分では気がついていないようだが、かなり目を引くのだ」
胸か? またしても胸なのか?
その後、先代のいる離れの宮から王宮へと戻ってくる際にファーガス皇帝がまた驚くべき話を教えてくれた。
「あれはルルにも手を出そうとしてな、神の怒りにふれたのだ」
「そのころルル様は八歳じゃないですか」
ロイヤルヴァイオレットたちが命を懸けて争っていた時に、すごいな先代。
しかもその時のルル様はロイヤルヴァイオレットの一員だったはずで、もしかしたら、自分の子どもかもしれないのに? でも流石にそれは違うってわかっていたからだよね?
「自分の父親ながら困ったものだ。そのことは神だけではなく、もちろん儂も許しておらんから、一生あの宮からは出さんつもりだ」
その方が絶対にいいと思う。
あんなの野放しにしたら、第二次ロイヤルヴァイオレット抗争が勃発してしまうかもしれない。恐るべしウォークガン帝国……。
「これからマルセルも交えてマルセルの処遇と今後の話をすることになっておるのだが、ルルたちも一緒にどうだ」
「時間はありますから大丈夫ですわ。わたくしもマルセル様にお返事しなければいけないことがございますし」
私も顛末まで知っておきたいからルル様についていくつもりだ。
ファーガス皇帝が向かった部屋に私たちも続けて入る。
そこには牢から出されたマルセルと、そのそばでコーデリアも待っていた。




