第10話|最終話 「どこでもいい」では、もう決めない
――私は、自分の感覚で選ぶ
就活をしていると、
ふとした瞬間に、不安が顔を出す。
――条件、上げすぎているのかな。
そんなとき、電話は鳴った。
地域の公的機関の担当者だった。
いつもまめに連絡をくれる人だ。
「貴方なら、すぐ決まると思っているんです」
その言葉に、少しだけ心が揺れる。
けれど、続いた話は――少し違った。
「二ヶ月後に、55歳以上対象の面接会があるんです」
「その場で面接して、採用まで決まる可能性もあります」
まだ企業も決まっていない段階で、
参加を勧められる。
――二ヶ月、決まらない前提?
心のどこかで、小さく引っかかった。
私は、落ち着いて答えた。
「参加企業が分からないので、今は判断できません。
分かってから検討させてください」
電話の向こうで、少し間があった。
そして、こう言われた。
「就活が長くなると、皆さん目がこえてきて、
妥協できなくなるんです」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥に、違和感が広がった。
――それは、悪いことなのだろうか。
さらに、興味のない仕事を勧められる。
そのとき、はっきりと感じた。
ここは、合う場所を探すところではない。
どこかに入れることを、優先している。
電話を切ったあと、
しばらく、動けなかった。
その夜、
ふと、友人からの話を思い出した。
紹介された職場に入り、
そして、辞めたという話。
一年で、四人。
――それだけで、十分だった。
私は、静かに思った。
これは、特別な話じゃない。
でも――
もし、私が
「どこでもいい」と決めていたら。
同じ場所に立っていたかもしれない。
そのとき、ようやく分かった。
私は、仕事を探しているんじゃない。
自分が壊れない場所を、探しているのだと。
誰かに勧められたから。
条件がいいから。
近いから。
それだけで選んだ場所は、
どこかで無理が出る。
だからこそ、私は選ぶ。
遠回りでもいい。
時間がかかってもいい。
それでも、私はもう
「どこでもいい」とは言わない。
納得して働ける場所を見つけるまで。
――この先も、自分で。
完
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
就活の話ではありますが、
本当は
「どこで働くか」よりも、
「どう選ぶか」を書いていた気がします。
まだ答えは出ていません。
でも、
自分で選ぶということだけは、
もう手放さないと思います。
もしこの物語のどこかが、
あなたの背中を少しでも軽くできていたら、
とても嬉しいです。
この先の話は――
もう少し先で。




