表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第1話 戸隠学園

 

 君か代も我かよのすゑも久方のあまくたります神そまもらん



 風は凪いでいた。

 僕、風見宙飛(かざみそらと)戸隠(とがくし)学園の正門前で、小さく息を吐く。

 これから始まる高校生活も、このように平穏であればと願うが、そんな甘い考えは自分でも信じられなかった。


 長野の山奥にひっそりと佇む、この戸隠学園は、表向きは防衛大学附属学校の一つである。

 しかしその実態は、忍の養成機関として戦国時代に設立された戸隠塾を前身に持ち、通常の高等教育に加えて、忍術の訓練も密かに行うという特殊な場所だ。



 退屈な入学式と普通の(だと思われる)授業が終わり、午後からは忍術の授業が始まった。

 初日の授業は、己の性質に応じた忍術――固有属性忍術の出力訓練である。

 焦茶色の髪を後ろで一つに結んだ、蛇のような吊り目の少女、勿朽流華(くちなりゅうか)

 飴色の癖毛に、犬のような垂れ目の少年、真神雷哉(まがみらいや)

 僕はこの二人の同級生と班を組むことになった。


「じゃあ、行くよ」

 何故か流れで被験体となった僕に、勿朽が感情の乏しい声と共に鮮烈な水流を繰り出す。それは僕を容赦なくずぶ濡れにする。


「次は、ぼくの番だね」

 続いて真神がその手から申し訳なさそうに電撃を放ち、僕は感電させられる。



 そして僕が試される番となる。

 被験体となった真神へ意趣返しをしたい気持ちはあった。

 僕はゆっくり息を吸い込み、静かに手を掲げ、眼を瞑った。

 その時、心の奥から這い寄るような暴風を幻視する。


(このかぜを制御できる程に、僕は強く無い)

 結局、僕の術は真神の髪を少し巻き上げるのに留まった。


「?」

 術の結果だと認識されるかも怪しい程のそよ風に、彼は怪訝そうな顔をする。


 途端、僕の顔が熱くなる。遠くで見ていた教師の表情、勿朽の冷たい視線が胸を抉る。


(まあ、取り返しのつかない事になるよりはましか……あの頃みたいに)

 悔しさと情けなさが入り混じる中で、僕はそう自分を慰める。


 自らの内に吹き荒れるこの風を、いつか制御できるのか。僕は、そんなことを想っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ