表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼き叡智の魔導書 ~エロゲの嫁キャラたちに転生した悪友どもがいる限り、俺がヒロインと結ばれるのは難しい~  作者: 二上圭@じたこよ発売中
6 内ゲバ合戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/70

48 原作を凌ぐ最強の力

「魔法を使うとか容赦ないわね」


「所詮は仮の肉体だ。容赦をしてやるつもりはない。――さて、下がっていろ鈴木。客が来たようだ」


 うわっと顔をしかめる鈴木を横目に、岩場の上に目を向ける。


 そこに人影はない。ただしその向こうからやってくるのはわかっている。


 黒き黎明に魔力の制限などない。索敵範囲は佐藤と同じかそれ以上。


 スタートした時点から、俺たちはここにいるぞとばかりに、こちらは常に探知魔法を放ち続けていた。向こうもそれに気づき、こちらの居場所はすぐにわかったはずだ。


 外面上、俺たちは台覧戦最強チームである。小細工など既に諦めていたのか、いっそ清々しいほどに、正面からやってきた。


 田中の髪を掴み上げ、膝立ちにさせたところへその腹部を蹴り上げた。


 それが現れたのはほぼ同時だった。


 田中をぶつけ吹き飛ばそうとしたが、難なく受け止められた。


 仮にも幼い頃から戦う術を学んできた魔導師。このくらいの攻撃は簡単に防がれるか。


 だが思いもよらぬ先制攻撃に動揺しているようだ。


「お、おまえたち……仲間じゃなかったのか?」


「そのカスは端から仲間ではない、ただの数合わせだ。そいつには腹をいたぶる以外、使い道などない」


 向こうの問答がおかしくて、つい鼻で笑ってしまった。


 彼らは仲間同士で顔を見合わせる。


 敵なのだからそのまま殺せばいいものを、丁寧に田中を横たわせる。


 一戦目の相手チーム三人。蒼グリの登場人物は、立ち絵もない端役まで網羅しているが、彼らの名に覚えはなかった。


 学園生ABCの名もなきモブといったところか。


「カノン・リーゼンフェルト。俺たちは――」


 改めて佇まいを直す彼らは、なにかを宣誓しようと口を開いた。それに待ったをかけるように手のひらを見せ静止した。


「前口上も自己紹介も結構だ。これから行われるのは争いでも、戦いでも、試合でもない。争いの中で振るわれる黒き黎明の、初となる試験運転にすぎん。俺はここから一切動かん。好きにかかってくるといい」


 プライドを傷つけてしまったのか、三人一様顔が真っ赤だ。


 モブたちは目を剥いた次の瞬間、互いの顔を見合わせすぐに散った。


 いくら俺がこの世界を愛しているとはいえ、足元に這っている蟻にまで注意は払えない。つまりそのくらい、彼らはどうでもいいモブだということだ。


 それでもあのモブたちこそが、俺が初めて魔法でこの手を下す実験台。名くらいは後で見直し、覚えてみるのも悪くない。


 事実、彼らからもたらされる光景は、とても素晴らしいものだった。


 この身を取り囲むよう激しく燃え上がる炎柱。


 散弾のように襲ってくる鋭き氷柱。


 雲なき晴天から降り注ぐ雷撃。


 矢継早に次々と打ち出されるそれらは、まるでイルミネーションのように彩色を放つ。さながらクリスマスツリーにでもなったかのようだ。


 そういうわけだから、全てそれらはこの身に届いていない。


 黒き黎明によって得られる、暴力的なまでの魔力量。それを雑に障壁へと変換するだけで、全てが全て打ち消している。


 仮にも相手は台覧戦に臨んだ、シエルの中でも優秀な学園生。仮の肉体とはいえ、そんな彼らが本気で自分の命を狙ってきている。


 命のやり取りなどとは無縁な、ちょっと前までただの一般人だった。そんな俺が、初めて驚異に身を投げ出しているというのに、恐れも慄きも憂いもない。


「なるほど……これが俺TUEEEE系というものか。実にいい気分だ」


 胸の内を支配するのは万能感だ。


 痛みや苦しみへの不安などない。


 このような力をポンと与えられ、思うがままに我を通し続ければ、イキってると嘲笑われるのにも納得がいく。例えそれを意識せずとも、それほどまでに力の格差というものは我欲を増長させるのだ。


 新しい玩具を手に入れた子供みたいに、この死闘で色々と試してみたい。そう驕り高ぶっていた。


 今の俺に与えられているのは、カノンという最高の魔導師としての器だけではない。黒の賢者が師であり味方であり、そして保護者としてついている。


 ソフィアルートでは黒の賢者はカノンを見放し、試験体であったソフィアへとその身を移す。そしてその身体を扱い、勇者としての力を振るうラスボスへと至るのだ。


 ただし、どれだけソフィアが優秀であっても、魔導師としての素質はカノンには遠く及ばない。


 もし黒の賢者がカノンの身体を手にしていたら、どれほどの力を発揮したのかと、散々考察されてきた。


 カノンは我と意思が強い。


 黒の賢者に心を育てられながらも、全てを彼女に差し出すような真似はしない。一時的とはいえ身体を渡すような真似は、それこそしない。二度と帰ってこないかもしれないという、恐れと疑いを抱いたからだ。


 だが、俺にそんな畏怖も疑念もまるでない。


 俺たちの間には、固く結ばれた信頼関係があるのだ。


 彼女を信じている。なにかあればすぐにでもこの身体を明け渡し、助けを乞うのを厭わない。


 こうしている今でも二割ほど支配権を明け渡し、フォローしてもらっている。それこそ俺の身を守るためなら、瞬時に全ての支配権を奪い対処できるように。


 今の俺は、原作のカノンすら凌ぐ力を手にしていた。痛みへの恐怖と覚悟と忍耐こそ足りないが、もしそれを克服されれば、名実共に蒼グリ最強キャラとなるわけだ。


 そういう意味ではこの第一戦目。


 モブたちが繰り出してくる魔法は、祝福の花火のようにも見えてきた。


 水煙が上がる。


 砂煙が上がる。


 黒煙が上がる。


 煙に乗じてなにかしようとあがいているようだが、全てが無駄だ。黒の賢者に任せている高度な探知魔法が、その姿を立体的に捉えている。


 一分ほど、そんな彼らに好きなようにやらせてみたが、いつまでも立っているだけではつまらない。


 そろそろこちらから仕掛けてみるかと、散々驕り高ぶりながら、指を鳴らそうとしたそのときだった。


「な……ッ!?」


 一瞬の内に、懐に踏み込んでくるその影に慄いた。


 直感があった。


 交差するように振り下ろされるその二対の刃が、この身を切り裂かんとする未来を。あれほど魔法を防いできた障壁ごと、この生命を断ち切るだろうと。


 結局のところ俺は戦いの素人であり、戦いの中に身を置いたことなど一つもない。カノンの経験を引き出せようと、その精神性までは引き出せない。


 いざ窮地に陥れば、身体を硬直させされるがまま。


 だからこうしてこの身が無事なのは、過保護なまでの黒の賢者のおかげであった。


 空手であったはずの手に握られる黒剣。


 かつて魔神を討ち取った、神剣シュバルツズィークが、その二対の刃をすんでのところで止めていた。


 この場を一切動かないと誓ったはずが、気づけば大きく後退しいてた。


 踏みとどまろうと力を入れたこの足が、一メートルほどの轍を作っているようだ。


 煙が晴れる。


 眼前にいるのは、先程まで苦悶の表情を浮かべていたはずの顔。殴りやすい腹部をしたそれと今、二対の刃を持って対峙していた。


「どういうつもりだ、田中?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺を止めてきたオタク青年の話。そのまま隣人にオタクへ染められた話。そんな彼が死んだ話。(仮)
一巻完結ものの新作で、女子高生に蒼グリをやらせたりする話です。
某キャラも出てきますので、こちらのほうも応援頂きたく願います。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ