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空気(ぼく)たちの町においで  作者: うえぽん
96章 夏は始める季節かもね。
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807 あんがい良い街なのかもね。5/22

5月22日 木曜(夏、西は毎日がうららかな季節)

こういう季節なら人が争うことなく生活出来る・・とはいかない。

誰も彼も争うの大好きなんだよねえ。

そういう気持ちを発散させたらって思ったんだけど、そうはいかないみたい。

 僕の故郷の人達はかつて住んでいたときと態度が変わらない。僕だけ別次元にいるような感覚がきっとイヤだった。

 好きでもキライでもなくて、そもそも興味がない時どうなるかって知ってる?

 何かに集中していた時の反対で・・チラリと見た途端にフィルターをして認識から排除するみたい。それが時々先入観で猫が来たと思ってエサを置くとかだった。

 かつては僕をすごく意識していたキゾク達はコロシヤを雇って襲わせるのをずっとしてた。狙われるのはイヤな事のはずだけど、僕にはウレシイ事だったのかも。

 ちょっとした策謀をして街の悪い原因を無くして、臭さや渦巻く悪意から解放。

 ついでに退屈を無くした。その一瞬だけは僕がいて故郷になったって思った。長くは続かなかったけどね。


 僕は巫女(みこ)で、能力が高くて、みんなに強く知られていると名前が付く二つ名みたいなのがある。それが「空気な巫女」だそうで良く知っているはずなのに意識から消すって、ヒドイいじめだよ。

 傲慢(ごうまん)で自分が正しいと決めつけて、最善なんだから当然みんなが従うって考えるし、最近は心理学知識も得て民衆を誘導してる。

 アチコチに行く場所が出来たけど長居しても(けむ)たがられるだけだからプランと資材を置いて実行はよろしくってする。

 結果だけ総取りしてウハウハ(じゃないのもあるけど)で、着実に所有地を確保している。これで産業を(おこ)して価値を上げれば塩漬け資産ようやく価値を出す。

 すぐ投資に回す僕のやり方だと現金があんまり獲得出来ないから、見せかけだけでも(もう)かっているようにみせないといけない。

 興行としてスポーツ大会は優秀で、勝つためには僕らからいっぱいボールとかラケットとかネットや専門書を買わないといけないし、汗を吸収するとか快適なユニフォームのオーダーも(うけたま)っておりますしてる。

 前の大会ではサンプルのそのままとか、着替えなくて汗臭いとか、試合用に揃えたら、全く同じとかがいてチーム名とかを手書きで描いたのが汗で(にじ)んで何じゃこらってなってた。番号はセットで入っているのを縫い付ければだけど、試合していると段々と汚くなっていくんだよ。


 染めとかガラ抜きっていうのは東の技術で、素材に合わせた染料も開発した。

 今までのは平織りシャツな服で汗をあまり吸わないし、それを重ねるだけだから汗をかかないような生活をみんながしてる。

 でも汗でペッタリっていうのが選手の普通だったみたいで、スポーツ用の服をサンプルに付けたけど特注はなくて、(つる)しをお金のある国がチーム分1セットだけ買うくらいだった。

 けど砂の国で僕ら関係が快適していたからこぞって買ったってワケ。

 僕らのは当然特注ユニフォームでカッコイイし、刺繍されているから汗で(にじ)むことなんかない。色ダブりを考えて2色あるし、ずっとそれだけじゃなくて着替え分もちゃんとある。

 制汗剤とか打撲(だぼく)を手当するクスリとか簡単に傷治療とかだって大事だし、これは運動するときだけじゃなくて、生活にも入り込みつつある。

 汗を吸い込んでくれるタオルや中着ってもう手放せないでしょ。


 街はスポーツ大会をするために迎える人達の設備を造っているし、あとよろしくした上下水管理とか堆肥製造事業もある。道のデコには賞金を掛けて競わせたり、とりあえず用意したお仕事を価値あるものに変えていったりね。

 長い充電期間が終わった人達は海綿に水が勢いよく吸い込まれるようにキラキラとしている。

 スポーツトレーナーという新しい資格は僕の考える倫理観を持って、ゲームルールは当然だし、心のケアや医療のこともある程度知ってないといけない。

 官吏と簿記しか興味がない聖国の中に数人変わりダネ(変人)がいた。

 コーチ達の理不尽な練習にストップを掛けたり是正する権限を持っていて、アレコレ要求しているから給金は高め。

 同じようにコーチにも要求している事はあって、主に戦術や育成方法に気持ちの持って行き方が大事にしてる。

 周りのコーチやトレーナーと争うこともあるけど「選手が長く現役でいる」ためには勝つ満足感は必要だし、負けたときに納得して次の燃料にできることはもちろん大事なこと。自分達のためにもね。

 前の時は素人丸出しなのに警戒して強い布陣でみんな来るから、はっきりいってボロ負けだった。

 その反省の気持ちもあるしコーチを登録制にしてトレーナーを資格化した事で全体の意欲は上がったみたい。カッコカリとかカッコ暫定とかがみんな付いている。

 他試験のついでに取ったって人はポロポロいて、そういう人達の活躍する場面はないんだろう。理解のある国は多くない。

 他の国は何のために資格や免許を設定したのかをエライ人達は分かっていなくて活かしてくれないから僕らの誘いにあっさり乗ってしまう。

 僕は根性を求めない心の強さや基礎体力、潜在能力に注目してトレーニングメニューを作っている。

 身体を(いじ)めまくって何となく筋肉を(きた)えていたり、極限状態で根性を連呼してて、自主練を強要して夜とか朝に来ないってイジメでうさ晴らしっていうのを否定している。

 メニューは時間外の練習はコラ〜だし、時間あるなら学べってしてる。

 おバカじゃ戦術は理解してくれないし引退した後の生活はどうするの。


 前回最弱だった聖国はみんなから勝ち星扱いになっていて警戒なんかされていないし、公開練習も基礎ばかりだけどユニークで楽しそうばかり。だいたいの人は雰囲気に目を取られて身体つきが変わっていることに気が付かない。

 徹底的に身体を種目に合わせてチューンするよう指示したし、最新サプリも優先(実験?)投入したり、プロテインの味向上に協力してもらってる。

 精神修行にって肝試(きもだめ)しとかをしたり、坐禅(ざぜん)してパシ〜ンとか早押しクイズとかして「どこがっ」な感じするけど色んな事をする。

 きっとそれは気持ちのトレーニングになっていて、効果とか検証していないけど僕がそんな気がした時はそうなる事多いよ。

 修行とか修練は(つら)いとか同じことの繰り返しが良いことになっているけど、それを楽しめる人はそんなにいないんだから、楽しめる工夫をして集中時間を増やした方がきっと良い。観戦や街見物だけじゃなく遊びも準備して待ち構えているよ。


 祖国のはずだけど長くいたってだけ。たぶん戸籍はここにはないし、あっても抹消されているだろう。いつまでたっても僕は自分に名前を付けられないのは呼ばれることが想像できないからだと思う。

 色んな呼び方をされるけれど、いつまでもではないことは知ってる。

 この地から捨てられたはずなのに盟主のような顔をして、あれこれと指図(さしず)して通貨変更とか何かする時にプレゼンをするけど、相談はしていない。

 今まで役人がいたことも知らなかったし、何の権力も実績もないはずのキゾクに従うって愚行をおかしていた。その結果、聖国は臭くなって人材が流出した。

 排水の悪化は何でも河に投棄したのが原因で詰まってきたなら撤去すれば良いのにイエスマンしかいなかったみたいで、難しい試験に受かるような賢い人達なのに考えるのを停止していたんだよ。

 だからかもしれない。追放した巫女の言いなりになっても指示書がただのご挨拶みたいのでもその通り疑問を持たないでしばらくは・・やってた。


 クサくなくなって深呼吸が出来るようになって隅々にまでキレイな酸素が届くようになったら僕をやっぱり無視する。そうはさせないよって意識させることを積み上げて各地に大使館を造らせるために派遣した。

 それは情報収集の意味合いもあって、やたら多かった国や地域を統廃合して再編をスポーツ予選で候補を戦わせて仲良く出来そうかをみたの。

 延々とするはずだった予選をエリアで同チームにして試合数を激減。この組み合わせがつまり統合の相手。

 双方に良い選手がいて一緒になったら結構手強いチームが出来るってことで、基準は半分以上の種目に選手を出せるようにまとめた。

 しばらくやってみて合わないとかあったら組み替えをして国替えなんかもする。

 僕が土着うんぬんに配慮することはないんだから強制的に動いてもらうつもり。


 大国から連合王国だからって6つのとこから選手を出して来るんだけど、前回はその中でトレードを勝手にして、都合のよくニュースのネタになった。

 連合王国のそれぞれの王様や女王は中心となっている地域の親戚や子ども達で住んでもいないのに(つら)の皮が厚いよねえ。

 実はカタチの上だけの連合でとっくに統一されている一つの国というのは誰もが知っている事実で前回そのルールが通ったんだからって(連邦の)構成国からも出来るだけチームを出してもらった。

 東のあの国みたいにそれぞれで自治をしているのとは違うし、もう一つの大国は完全に地方を見捨てていたよね。それで厄介(やっかい)もの扱いだったから切り分けて国というカタチにまとめたけど、スポーツ大会には前も今回も選手は出してこない。

 ここには里の時の関係者がいっぱいいるみたいだけど覚えていないしコンタクトもしてこなかったからどうでもいいんだろう。


 スポーツしようぜに決まりも制限も掛けなくて最初は自由にさせていた。そして可能性に気が付いた人達が熱心にするようになって入門書や技術書を読み始める。

 有閑(ゆうかん)な人達が働くことを偉そうに(嬉しそうに)語り出す頃にはダラダラの遊びに飽きて充実したくなる。

 本気モードだと相手が簡単に返せないと怒られるって事で同じように慣れた人達のようにスパンスパンしたいしバシ〜ンしたくなるし、ちょこっとして、あっと言わせるのは楽しい。だけどそれは相手も同じだから出来ない。

 じゃあ制限(決まり)を作って、その枠内であれば思いっきりが出来る。

 そういうのを最初に思う人は少ないけどいて、マニュアル通りにして早く上達していく。そのうちに技術書にまで手を出してスパ〜ンスパ〜ンしだすと自分達も楽しいし見ている人達も良いなって思う。

 そうなる頃にはみんながゲームになって、遊びっていうのもそれに準じるように変わってくるものっていう変化が起きる。

 すごく上手い人、教えるのが好きな人が出てきて、分かってくると見ているのも楽しい。もしもしって声が掛かるのもその頃で、その人達には選手やコーチってお仕事が付いた。

 それでいきなり連れて行かれた初めての旅行は砂の街で初の国際大会とかで、街では圧倒的一番だったし、あっさり勝つ姿まで想像してた。

 それなのにコテンパン。良かったのは序盤だけで、ほぼ全力してもついていく体力はなかった。遊びの延長にあったスポーツでは運動を頑張ってきた時間や真剣度が足りないと思い知った。

 聖女の存在が知られていたから対戦相手は最強の布陣にされたという不運もある。

 勇者のスパイクは恐ろしかったし、蹴った球を受けて吹っ飛んだりした。


 その生け(にえ)があったせいで南方地域は勝ち上がったり、小国のいくつかは勝ちを拾った。

 聖国は設備が充実していて暇人(ひまじん)が多かったから全種目に出たけれど、全て1回戦で敗退したし、主催で注目されていたからゲーム内容は詳しく報じられている。

 急いで作った国旗は白だから「白旗がいっぱい立った」と揶揄(やゆ)されたし、序盤で息絶え絶えで棄権もあった。

 スタートは早かったし体制も整えたし、何より設備とかユニフォーム、用具類とか、あらゆるものが充実していたんだけど、強者というのはいなかった。

 ちょっと前に元勇者が大暴れしたんだけど、今は元気なだけの農民だしね。

 負けて帰って来た人達は凱旋(がいせん)のようにイキイキと晴れやかに帰ってきたんだって。

 すごく楽しかったし街が日々成長していく姿、活気のある人々や他の国々とのノラゲーム交流、あとスッキリするお酒、ビールがみんなに大人気で実は美味しかった白ワインとかブルスト(肉詰め)が大好きになった。

 入れ替わり不正や罰金、何より良いところがなかった交流試合を先行していた大国とかはうなだれて(いたのは選手ではないけど)、選手達や活躍した国々ばかりでみんな笑顔。それをそのまま持って帰って、次に向けてがんばろう気分だったって。


 国ごとに違うのは当然だけど(おおむ)ね好感触だったみたい。

 今まで近隣で足球とカゴ球の試合をしていた国は最初、ファールになっちゃう競技スタイルに混乱していたけど流石(さすが)合わせて来てた。

 不正暴露は多かれ少なかれどこでもあったし、この機会に(うみ)を吐き出そうとしたのは矜持(きょうじ)ではなく、追い落としのチャンスとかだったのは知らないふり。

 ただ去年秋に聖国圏から脱退したとこは良いことに変えられなかったみたい。

 北の国はよく分かっていない付き合い離脱かもで、大国の方はファールの処分に抵抗したアレコレが街ニュースになって、地元では古い事まで掘り下げられて大臣宅やそのつながりの貴族宅が襲撃を受けた。

 その後も入れ替わりが見つかったりね。決勝リーグ枠を増やして残れるように気を遣ったりしたんだけど、有力選手が出場停止になって無理な夜練で故障者が続出という散々な状況で自滅って感じ。

 それともあっちかなあ。いっぱいありすぎて分かんないね。


 もちろん聖国圏にいなくても出場は出来る。

 そうじゃないと世界大会じゃあないし、僕らのチームや関連のところからは出られないことになっちゃうよ。

 前回の評判ぶりや出場したことの高揚感、砂の街の復興ぶりがすごくて、そこが壁になっていた世界経済に動きが出来ている。見えないものや実感まであって大規模イベントは効果がとても良い。

 その勢いを聖国でも(おこ)そうとしていてね。これまでのことと繋げて一気に盛り上げるつもり。

 通貨は前回の配布からかなり経っていて、次の更新を考えた時にお金が重くて邪魔だったなって。

 元々次は無料配布するつもりはなくて支援も周りで何とかしろにしたから、オゼゼを払っても使いたいものにした。

 でもそれって(みずか)(かせ)がないといけないってことでもある。

 だから変えるよってしたんだけど、通貨っていうのは技術の集大成であるべきだよなあって思いつくのを突っ込んでみた。

 元々色々したかったんだけど文化はまだまだだし通貨を見たらやりたくなってという期待・・ううん、ただやりたかっただけ。建前は大事。

 追加分は生産体制も追いついてかなり高度なものになったんだけど、鬼さん達でもそれに追いついてないの。超ミラクルだもの。

 カミ製造とかお酒とか新素材とかにこの通貨ってことで、技術の到達点が(はる)か向こうっていうののオンパレード。子ども達にもハム造りさせているし基礎の技術習得も単元が増えている。勉強はおとなも喜んでしてくれる。


 聖国の製品のほとんどを造っていて、いくつかを点在する鬼さん村に技術移転というのがたぶん行われている。

 鬼さん達って入れ替わりするから段々と平準化していくんだけど、技術が他の文化や種族に出会ったり、思いつきで化学変化をして一段上がるとみんながそれを目指すし習得を協力する。

 誰もが落ちこぼれることなく最上の人達ばかりになるというステキな人達。

 聖国に来れば技術を学べるって事はないんだけど、研究資料の大部分はここで得たものだし大いに研究して僕と同じことをすればいいよ。

 結局は街の全てが与えられたものなんだから、楽しくいっぱいがんばって良い街にしていってねって他人事(ひとごと)みたいにする。無償提供はしていないし意識して立ち上がらないと僕の使用人みたいになっちゃうんだよ。

正式に廃棄ししたツケみたいなのがべっとりあって、勝手しているけど

ボクはここの所属じゃあない。かといって他にもない。

過去に住民が出て行った戸籍が残っていれば、それを伝えた技術は

提供したものということも出来るから伝えてやったと偉そうにできちゃう。

さすがに対価は無理だけど貸し借りっていうのはかなり大事なことなんだよ。

まあそれもあって街中の大使館は全部遠慮ってことにしたのは考えすぎかもね。

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