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空気(ぼく)たちの町においで  作者: うえぽん
95章 夏だからやる気になったのかもね。
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798 これって何の日?4/21

4月21日 土曜(旧暦初夏、とても良い季節だよね)

みんなはイベントってどんな風に思っているんだろうね。

僕は必要な事って位置づけをしてかなり大切に考えているんだけど

そこの人達にとってはそれほどでもないみたい。

面倒だろうけど過去を持つのは大事な事だから何年かは付き合ってね。

 久し振りにイベントがあるって聞いた。

 前もその前もそれはあったけど記念日っていうのがよく分からない。

 夏のお祭りは暑いからパ〜ッとしようよっていうのはあるし、特別な涼しい服が毎年もらえるから好き。今の服も毎年もらえてステキなんだけど普段着にもするから、ちょうど良いにしてるとオシャレしなさいって怒られる。

 去年の春、急にいなくなった子達が帰ってきて、学校のある街に行ってたんだっていうの。

 あの子に「オクスリを学びに行こう」って言われて、知っていてくれたって舞い上がっていたから誰にも言っていないしメモも残していなかったとかってズルイ。

 いなくなった全員がそうだったんだけど、後で医師、薬師、裁縫や経理、美容師、細工とかを学びに行ったって聞いた。

 前から勉強留学があることは知っていて、勉強したいことの希望は聞かれていたけど、手を挙げるほどではなかったって何も希望しなかった自分を含めてそう。

 いなくなった子に仲良しがいて探したし、騒いでいる人達が(さら)われたんじゃないかって心配してた。その後のお知らせには「拉致(らち)しちゃった」ってあったけど、あの子が気持ちを無視したりして連れ去るってことはしないって知ってる。

 他の子だけどウキウキと大きなバッグを持っていたって証言もあって私達の他はあんまり騒いでいなかったな。


 (こよみ)っていうものがあって毎日に数字が付いている。今までもあったらしいけど庶民にはお知らせしてくれないし、知ってどうなるってものでもない。

 だけどここでは、それに沿ってケイカクというのがあって、前は無かったお休みが繰り返しある。

 でもここだけってことみたいで、グラグラの後に炊き出しした時に交代でお休みをしたんだけど、街の人達にはそういうのはないし、今もないらしい。

 店っていうのは冬に休むってだけ。農家もそうだし寒いからお休みになる。

 それが5日働いて2日お休みになっていて休みすぎじゃあないのって思うんだけど、外の農村にコンチハしたりお買い物したり運動したりがあって案外忙しい。


 ここに集められた時には私はいなくて農村でよろしくってされたから、始まりの頃はちょっと知らない。

 最初はパッツン髪をみんながしてて同じ服で男の子も女の子も誰も区別が付かないっていわれたりした。

 村に置かれたのが「料理」ってことで家族のゴハン係だったんだけど、村でお世話するのがムサイ大人達だった。

 ずっとイライラしているのをゴハンで(いたわ)るってトコが今までと変わらない。

 今までいたところも大人はよくイライラしていたから、そういうのを(なだ)めるのが私の役割だったんだけどね。

 まあみんなゴハンすれば穏やかになるし、親たちと違って子どもに乱暴することはなくて優しい。ヒマそうだから「手伝って」して村の畑仕事や修理なんかをしてもらうんだけど、これはアノ子に言われたから。

 今までゴハン作ったり家事をするだけで後はボーッとしてたんだけど、お願いっていうのをすればウレシイ顔で大人達が動き出すから一緒にしたりもする。

 村の人達はムサ過ぎて怖がっているから代わりに伝えたりもしてた。


 暑いある日に地面がグラグラして、村の家が全部壊れた。

 前以(まえもっ)て言われてた通りに助けてあげてをして積まれていた材木を組み立てて、あっという間に前よりも立派(だしステキ)で快適になった。

 それで収穫を持って街に行くと炊き出しをしているからって一緒する。

 同じように声かけをしても、村とは違ってノロノロとしている。

 決して手伝いはしないし押し付けのようなことは言わないって言われたとおり。

 実際子どもじゃ、何かされたら怖いし、無理だしね。

 人が見つかってからは熱心にしてくれているのは違う意味(拾いもの探し)もあるだろうけど、それだけじゃなく片付けに動いたのは炊き出ししてたからかな。


 片付けた山に人のカタチがいくつもみえた。そこに村で()んだお花を置く。

 火が上がってパチパチと燃え上がる。そういう山がいくつもあった。

 みんなのように手を合わせて安らかを願うっていうのは、アノ子がしてたから。

 ここいらの流儀では、みんなが号泣(のフリ)をするはずなんだけど誰もがつまらなそうにしてて火が消えたら砂を掛けて散ってしまった。

 あれって悲しんでいるんじゃなかったんだ。まあワザとらしかったしね。


 みんなが同じ格好で髪型っていうのは安全のためらしくて、誰って分かると付きまとわれたりするっていうのは感じる。

 少し怖い感じの人がいて、それは普通って傍目(はため)ではみえるだろうね。

 特定されないように化粧をしてホクロとかも隠すってことで髪が長いままでいたい子はズラをしてっていうのを本気でチェックするようになった。何か怖い。

 だから依存されないように、あたし達の負担にならないようにって、やるのはひと月だけって言われてだけど、(つら)いのは冬って思ってがんばったんだよ。

 ガンバレって言い続けて、冬をしっかり越えて良かったねって春にお仕事をする気持ちがムクムクするといいなって願いながらね。


 暖かくなって今日があの日だよって、お花を渡されて祭壇に乗せてねって。

 それを用意した子はいなくて泣いている子達に少しジンとしたってだけ。

 ウソで泣き叫ぶようなことをしないのが余計に胸に何かがある。

 最近盗賊村のことをポツポツ話すようになったんだけど、それがそんなに良いところには思えないんだよね。勝手に美化しているのかそれぞれの村がもっとヒドいのかって事までは言ってくれない。

 売られちゃうってことがどういうことかがピンと来ていないせいだろう。

 中には自分から売り込んだって子もいてたくましい。


 ずっと村にいて村づくりって工事とか農作業をして、街の近くにあっただけの寒村だったのが賑やかで最新のカッコよくてキレイな村に変わっている。

 冬中、鬼さんから技術を指導されて、ムサかった人達は()せぎすだった身体もごはんいっぱい食べてカッコ良く鍛えられた。今日で終わりって時は悲しかった。

 何人かが村娘とロマンス、お出かけが終わったら帰って来るって出て行った。


 街のクーデターはアッサリでさらに進軍して、あっという間に決着を付けてそれぞれ生まれた場所に帰って行ったって。

 それぞれは身に付けた技術を活かして畑する予定で、約束通り帰って来た人達とケッコンして村を大きくしていこうとか熱く話したりしてる。

 あたしは連絡係になって街と村を繋ぐ役目。とっても可愛がってもらってここが故郷ってつもり。役に立てるように色んなこと、読み書きや計算だけじゃなくいっぱい学んでにしてる。

 本当の親には売られたも同然でこんなに優しくしてもらったことはなかった。

 教わった農業は育てるっていうのも考えないといけなくて、何かする度に記録するようにって言われてる。

 野菜のタネにも好みがあって、そういう風に土を調整しないといけない。

 大きく育てたり、病気にならないようにってクスリも混ぜたりする。土の湿り気や天気を見てやダメな芽を取ったり、虫を除いたりがとても大変。それを助けるのが工夫ってことで状態をよく見て本の中から対処を見つけて教えたりもしてる。


 鬼さん指導が終わっちゃったのに、家畜育てたいとか言いだしたから厩舎(きゅうしゃ)セットを発注したり育て方マニュアルを何度も読んで、トリから育ててみようにした。

 農家出身の子がいたけど、「残飯やっとけば育つ」って杜撰(ずさん)なやり方だったから、それじゃあナマショクが出来ないからダメって言われた。

 トリは有害な菌を除去したものだから、それを維持するために手洗いは必須だし、作業服は清潔に保たないといけない。環境はフリーだけど、外から入って来られないように窓は細かい金物のアミを張ってる。

 ヒヨコにならないタマゴはゲージでして、なるタマゴは温めてるし、うん○はトイレでしてる。話せばその通りにしてくれるっていうのが今ひとつ分かんない。

 人でも出来ないのがいるのにどうしてって思うよね。すごいってみんな言うよ。


 協力地域の収穫物は全部買い上げで、今は政府が機能していないから税徴収がされない今がチャンスって(あお)っちゃう。

 何もしてくれなかったし商会の方がずっと頼りになる。なのでずっとこのままでイイヨだけど、ちゃんと護るになるんだったらって、期待できるのかなあ。

 あたし達のトコって、とっくに忍者さん達がいなくなって、大人は職人と弱々なのしかいないんだから暴力には(あらが)えない。それで臆病をして元気に隠れている。

 いずれオモテに出るために、そういうのは必要っていうのは何となく分かる。

 農村とか山の方って、ずっとウラ扱いだったし、協力してくれた村は追い詰められて意欲がなかったからウンともイヤもなかった。

 それを良い事に兵士を突っ込んでキレイに直したり、作業をお手伝いしたりして「良くなる」ってことをみせた。

 それで誤解して全面的好意を向けられたから、兵士達はポーズじゃなく本気で取り組んで、トゲトゲだった気持ちが収まっていった。

 そうすると未来って話を聞いてくれて、アタシがつっかえつっかえで読み上げた「やること」を全面的に村人を巻き込んでしてくれた。

 子どもだし読むのが怪しいのになんでなんだけど、忍者だって人が「ひと怖い」というものもなんなんだろうね。


 炊き出しを延長して春までしたのはココに兵士がいるって安心感だったみたい。

 もう爆発しそうだからってアノ子がゴ〜にして、じゃあ炊き出しも止めようねは正解で、いなくなったら急に怖くなった。

 大丈夫って変な自信はバックのチカラだったんだねって。

 それでも人心操作は計画の通り内側向きに働いていて、春から知らんぷりで中央で店を出した大人たちがヘイトを引き受けることになった。

 それでビクビク生活することもなく、イラッシャイマセの準備とか工房で修行させてねとか楽しくやっていたんだよ。

 兵士が減ってもヤル気いっぱいで村がキレイになって余裕があるから拡大をしてて自然と今まで通り村を担当してる。

 分かってくるとコメやムギの品種がすごくある。どれを選べば良いのか、どういう土を作ったら良いのかだけじゃなく、他の野菜の時期や順番がパズルみたい。

 農村組で相談しているんだけど、村の人達の依存がすごいのが嬉しいからもっとがんばろうねって交代で学校に行くことにした。共通語をがんばらなきゃって。

 少しずつ生産して、秋にドカンとコメの収穫があって街にコッソリ流して高評価を得たりした。

 拠点の人は多くないから大半は他の街に売る。新鮮野菜でゴハンが美味しい。

 自信を持ってムギを植えて、野菜のとこは緑肥にする。

 来年もっとステキな土になってねって。


 行く行くって準備していたのに、まだ誰も行かない。

 そうしたら春休みとかでいなくなった(学校に行ってた)のが帰って来た。学びはもちろん、たのしい授業がいっぱいだし、遊ぶところもあって、パートをして旅行にも行ったし、イベントがしょっちゅうあるんだって。

 もっとイベントは積極的に楽しまないと・・なんて言ってる。

 そういえば春には花の咲く木がある。それで花見って屋台を出してイラッシャマセするっていうから便乗した。中央部は怖いし木が無いから農村でする。

 みんな待ってましたな感じで飲み食いしてくれて、ちょっとお小遣いになって、またしてくれなんていわれて嬉しいな。

 さあ帰るって時にすごく希望者が出ちゃって、これじゃあ拠点運営が出来なくなるからクジで抽選になって、きゃあきゃあ出かけていった。いいなあ。


 もう子どもちゃんは集めてないので、人材は増えないことになっている。

 田舎は中央の人達にノルマされているし、もう人買いはやってこない。大人はしっかり働かないと達成出来ない量に調整されて手一杯で家事を子どもがするって役割分担らしいし、ヒドい待遇って分かったらあたしらが黙っていないよ。

 不定期に里帰りして生活をチェックしていて、お金のおみやげはしない。日帰りで軽いお菓子程度かな。子どもを抜かれたら生活が成り立たないんだから見限られないように優しくするよね。

===


 定例化っていうのは大事。いつでも行き来出来るとはいっても「いつ」がないと踏み出せないものらしい。

 夏にもお休みがあって冬にもあったはずだけど、イベントのお手伝いをみんなでした。復興するにはハラペコはだめ。政府がまだ稼働していないのに支援だけすると良くない期待をされてしまってがんばろうにならない。そういう意味でかけっこは面白かった。

 めんどくさいした人には「あ〜げない」できるし。食べるためって運動をして、それが結構気持ちよかったってなって、毎回ゴハンのためなのか分からないけど楽しそうにしているのは知っていて、それを嬉しそうに見ている人達もいる。

 好評だったって聞いたから隣町の人達を送り込んで「たまや〜!」もしたし、サカナ飾りやわっしょいもしたはず。

 季節をしっかり意識して、思いっきり楽しむ事は大事なことになって、(こよみ)をみてまだかな〜ってするの。


 今日の日を(いた)むだけじゃあなく楽しい日にして、いつか忘れてしまうだろうけど、やっぱり何かを用意して季節を楽しめば良いと思う。

 だから「復興の日」ってしたの。いつかすり替えてもいいんだよ。

この時期には何かして欲しいし、討伐の日はいつか忘れていくべきもの。

今は(いた)むことが必要だし、再始動するためのスターターは必要だもの。

なんで政府を倒そうと思ったって気持ちをしばらく忘れないでね。

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