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空気(ぼく)たちの町においで  作者: うえぽん
95章 夏だからやる気になったのかもね。
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795 街造りはちょっと不穏かも。*4/9

4月9日 月曜(初夏、彼の地は緑いっぱいになったよ)

捨てられの土地を楽しいに変えていったのは仕方ないだっただろう。

厳しい現実が夢想との妥協点を探っていくことになった。

生きるためっていうのはとってもいい逃げだったし、

それがいつの間にか活きることになったというよくある話。

 学校とか子どもの成長のために必要な教育とかが高尚(こうしょう)な目的ではないことを知って()らしめるために捕獲ゲームをしているみたいだから近づかない。

 時々、悪意じゃないよく分からない感情が良いものと期待して近づいてみたけれど便利な使用人が欲しかっただけだし、村運営を盛り立てようという気持ちはないのに「働け」ってなっていたからでニッコリは義務の延長にあっただけ。

 面倒な村からは出たかったってことだろう。行き来が交通システム依存なのが変わらなくても地続(じつづ)きの方がいいってこと。

 元々、面白い方について来ただけで里と同じだったからイヤになった。

 じゃあ仕事はどうかなにしたら、僕からのお仕事をする人としない人がいる。

 お仕事を続けてくれるのを好意とまた勘違いして、お誕生日おめでとうして失望されたオバカでノーテンキな子どもが僕。


 商会の契約はもう毎年更新じゃなくて村の人達との社員契約も村という事業体ではなく、街に住むようになったから終了してる。

 個々が自由(個人事業者)ということにして仕事を選べるようにした。

 それぞれにお仕事のオファーをしてるけど、アイドル枠は半年前くらいにブッキングされていて調整を忍者な人達がしている。今は練習の方が多い。

 成り行きで向いているからって仕事を決められて努力させられているの。学校にも行けって忙しいよねって、お仕事の方を減らして学校を優先してる。

 もう街ではそんなに公演する必要は無いというのが実質の理由だけど、夏からは外国に行く予定なのでギッチリ前倒しになっていて大変なんだけどね。

 アイドルって選択肢は能力で僕が決めて選べなかったんだけど、無理はしていないし色んな事が出来て自尊心を満たしてくれる良い仕事だったみたい。

 まだ始めたばかりだし、どっちかを選ぶ必要はないよって固〜いお仕事と兼業する子が去年二人出てる。他の子も続けてくれると助かるよ。


 スポーツ大会の日程は子ども達の予定に合わせて後ろにずらしていて、暑い時期にお休みとりましょうってオススメキャンペーンをしてる。

 聖国では来年から長めのお休みを季節ごとに導入するよってアピールの予定。

 今年はホスト国になる効果で秋も冬も引き続き人員不足を予想しているから、イベント効果で、もう少し人が増えないと無理。

 街一個しかない国は歴史があって(作ったばかりの)美しい建物やステキな路地やお店がアチコチにある。

 そこかしこにあった廃墟は時間経過の汚しを入れつつ再建中で、構図や組み合わせを計算した全地域が観光スポットになっていて、数日では見きれないし何度も来たいになることは確実だもの。

 それに通年花が絶えることはないし、花だけじゃなく色の扱いでもステキに魅せることはできるよ。


 古い場所にありがちな狭い、快適じゃない、設備が足りないというのも解決しているというのは、古く見せているだけで全部が新造だからね。

 今は全体の2割くらいだけど、メイン部分を大会までに完成させて10年くらいで全体の5割を建て替えって計画。住居とか各路地はお仕事ネタなので僕はインフラと設計だけね。

 その頃までには郊外の整備も終わって、長期滞在しないと楽しめないくらいだから何度も足を運ぶってことになるんだよ。


 そのためには気軽で早く快適に来られないといけないから交通をなんとかする。

 春の試験で合格してスカウトしたのが各地にいて、仮想馬車の練習を今してるところなんだけど馬車関連だけではないの。

 賢い人なら応用が効くからってことで、とりあえず全員試してもらって行きの本数を増やす。帰りは数日置きで良いんだから連結したり、回収を鬼さんにお願いしたりもできる。

 最新のは床が今までのよりずっと低くて重心が高くないからコロコロ横転はしなくて、乗り降りの時にはさらに車高を下げて乗りやすい。だけど天井までは低くてコック帽だとつかえちゃうから帽子は取って乗ってだし、噴水ヘアもたぶんムリ。

 車高が高いのは風の影響を受けるから良くないんだけど、オプションで天井を高くするパーツは用意してる。

 もちろんさらに改良したワイヤー入りゴムで空気の入りでクッションしてて、車輪の構造でそれ自体も衝撃を吸収して不快な微振動を消してくれる。

 事故の多い危険な雨の時の走破力を発揮出来るように研究したのは探検を意識しているからでもあるんだよ。


 でも探検用、ううん仮想馬車とか車や自動車のはタイヤ自体が駆動してて、馬車とは全然違うから売り物のとは見かけも違うんだけど、それを開発したノウハウで構造を検討して転倒を防止するようには造ってみた。

 ずっと馬車を造っていた時には固定観念というものがあって、車軸の上に板バネをして(人が乗る)箱を置くって構造だった。

 探検用の車を造っているときに高速の安定性とか(ねじ)れ剛性や運転のし易さで考えたときに発想を固定しないようにした。新しいものなのに過去に(とら)われてはダメだよね。

 動力なんだから車輪を太くしたし、(わだち)に引っかからないように凸凹(でこぼこ)から逃れられるようにってした。動物を観察して引っかかりを付けたり、雨除けの溝を付けてそのパターンを考えたりが楽しかった。

 それで前後に車軸を広げて重心を下げて、形状もエレガントにして緩衝機能を持たせてみたら、とってもステキで部品点数も減ったから価格を下げたりね。

 集中大量生産なのでいつも在庫があるわけではないし、仕上げはパネルだったりカミだから工期も掛からない。荷車とかだと組み立てもしていなくてパーツでやってきて仕上げは無垢材のままにしとくのも良いけど、ヌリヌリを推奨してる。


 これで市場を駆逐するかと思うでしょう。でもそんなことは起きないの。いくら鬼さんがスゴくても一時だけの集中生産だと世界相手では数が足りない。

 しょせん知っている人達が少ないってことで、金額に価値基準を持っているお金持ちや見栄っ張りは今まで通り旧式のオーダメイドを買う。

 実物を見て、乗れば違いはわかるんだけど高い買い物なのに自分で買い物する人は少ないというのが普通みたいで、見て試すような人達が僕らの顧客になるだけ。

 メンテフリーとは言えないけど故障や調整も少なくて済む。買ってくれるような人だとムリはする分、大事にしてくれるから長持ちもする。

 旧来のも長持ちだろうけど、揺れが凄いし、すぐコロンするから歩く速度かちょっと速いくらいで休み休みだし飼葉や水も要る。揺れは少しずつダメージになるから出先メンテは欠かせない。

 僕らのもそういうのはあるって想定で、交換したり調整する技術・・というほどでもないけど知識は要る。それで賢い人達じゃないとダメなんだよね。免許を取ってもらうんだから。


 今年からは馬車免許がないと販売しない。そういうめんどくさいことやモノより値段どうのがうるさいので余計に街中では売れない。色々と見せて試したり、どうしてをして納得して買ってもらいたい。

 お買い物は楽しいものなんだから迷うくらいないと面白くはないんだし、人任せで良いにするのを相手にはしないってことで、僕が別な村を最初から造った意味がこれからジワジワと分かってくる。

 全ての聖国圏の国や地域に僕の街を造るつもりで用地は確保済みなんだけど、さらに積み増しをしてる。

 やっぱり周囲は緑で隔絶ムードを出したいからというのや少なくとも新鮮野菜は自給自足にしたいし、それぞれを緑と花でいっぱいに出来ないというのなら自分ですればいいの。顔色を(うかが)うっていうのは僕にはやっぱりムリ。

 説得作業は僕には遠いことだし、ごちゃごちゃ言うから花畑の維持はしてない。

 イメージ的には聖国の飛び地って感じ。街中の大使館用地を返して新規購入したから治外法権って無茶振りはいわないけど、メインの建物の芝生は重要な意味を持つってことで、政府関係者や軍部とか国に雇われている人達は許可なく侵入はできないことになってる。

 まあそれでそういう人達は試験は受けられなかったって理由が使えて、受けないことにしたみたい。ちゃんとイイヨする人が立っていたんだけどね。

 そういう人達はお鼻が高いし、すでに仕事がある衛兵とか役人達に資格についての関心はなかったみたい。


 聖国では資格を取ることで給金アップというのは常識なので、当然役人はより上級認定試験を受けたし受けられそうなのは休みを取ってでも受験するはずだけど、従来のしか受けてくれなかった。

 市民達も最低限働けばいいにしているのは少しだけで、総受験ウィークだったんだよ。その結果、聖国では人的コストが跳ね上がったんだけど、誰が何を出来るって分かることはプラスでしかないし、今はイケイケのターンなんだから、すごく良くて、きっともっと良く変わっていくんだよ。

 人材を活かすのが僕らや聖国なんだけど、外から来た資格を取れるほど優秀な人達が受ける試験はたいていは一つだけではない。

 出来る人に押し付けがちなのは(気付いてないだろうけど)良くあることで、何でもできちゃう人があちこちから「辞めま〜す」したらどうなるかな。

 良い人は友釣りもして、僕らはまあゴソッと人材を集めることができるし、きっとその人も優秀ってこと。

 何も全員が特別な人でなくてもいいの。仲良く出来るとか努力できるとかコツコツやれる才能も大事で必要だもの。

 ある診療所や会社では若手がゴッソリ辞めたりする。その後に代理人って人が来て不当労働の慰謝料や不払い賃金とか言ってきて支払いに応じればそれで終わり。

 いくつかは追い返されるんだけど衛兵やら役人が来て「証拠の差し押さえ」って全部の書類や物品を持っていったからお仕事が停止。その間に支払い期日で督促の人は来るし事情聴取という楽しくないお泊まりして、ポロッと言っちゃって取引先も逮捕者が出たり、建物も差し押さえられたりでボロボロ。

 顛末(てんまつ)がニュース誌に面白おかしく書かれて、ちょっとした有名人になる。


 どこどこの会社で不正取引があって価格を吊り上げてた。こっちの会社では不当差別があって酷使していた人達が辞めたってトコで止めて(しぼ)って支払わせたってことまでは書かない。払えばいいってもんじゃないしね。

 ○○病院の院長や副院長、こっちのは首席医師は去年試験に落ちたって書いてあって実際の診療をしていたのは数年いた、いつまでも新人待遇の人達。

 医師になるのは世襲で貴族、教育機関も研究機関もないから、誰かに弟子入りして学ぶしかない。ようやく入ってみれば、医師や薬師というのが貴族にならないとなれないというもので、そういうのはお金持ちと妙齢な女性の時しか現れなくて、10年くらい勤めていた人が詳しく診て診断をしている。

 診断のことはその人達、後は医術や薬学の本やカルテをみて覚える。最近次々と新しい本が出て、自分用に購入したりしている。


 先輩達は「あいつらは名前ばかりで何も出来ない」「いやらしい」っていう。

 事実、診療は先輩らと(いつまでも新人の)自分達がしてる。

 診断結果を聞いて、ただ相づちをしているだけというのはすぐに分かった。なのに称号がある(何もしていない)方だけしかみない貴族達。実際の診療をしている人は違うのにタイトルしか目に入らないようだった。

 庶民には称号が付いている人達は滅多に来ない。来る時はお金持ちだったり、美人だったりするときくらい。向こうもそれは分かっている。

 意味のない行為は時間のムダだし、いやらしい行為を止めるのは面倒なので、若さもあって自分達はそれを態度に出してしまう。

 益を得るにはガマンだそうだけど若さがそれを許さない。そのうち段々とやって来なくなってせいせいしている。


 自分達でも買える最近の本を見て「部屋をとにかくキレイにする」「濃いお酒で拭き上げる」「手を洗う」「うがいをする」そして「応対をやさしく」を実践。

 意欲を失った助手や先生サマや貴族連中に()びてる先輩達とは違うって、いつまでも新人な自分達はそれをして、とにかく誠実にした。

 いつのまにか担当分けになって、通ってくる庶民達には評判が良かった。

 ある程度できるようになって、それ以上は参考にもならない過去の遺物より、最近の安価な本の方が身になる。

 資格が取れるという話が耳に入って、参考書や想定問題集というものも売られるようになって、夜や少ない休日に猛勉強をした。

 それは実際にも活きて診療の効果が高まっていることをみんなで感じていた。


 旅行ってことでみんなで聖国に行って受験をして何かしら取れた。

 アレもコレもやらされていて、ソコソコ出来ていたから1年ギッチリ協力して勉強して医師や薬師、経理や馬車の免許まで揃えた人もいる。

 先ずは数を揃えたいこともあって、現状の医療や経理程度で応用問題は少なくしてあって、だから去年の結果(ゼロ)が不本意だった。

 内容のレベルは上げたけど今年は次々合格する人達がでて、各国での認定試験も悪くない結果だった。

 これは僕が予想した合格率に近くて、去年が異常だったんだろう。

 本来なら、ここでしっかりした場所でのケンシュウとしたいところだけど、聖国では病気にならないから接骨院くらいしかないの。でも世の中は医療が不足(高額という意味でも)している。

 他の国々は自称ばかりだし、本来の意味での手当くらいの知識しかないのが高収入を得られる仕事だった。古い国ではその対策として医師や薬師という家をつくって知識や技術を継承させたはず。

 とりあえずそこに知識が集まれば、実力のあるのが出てくる・・予定だったんだけど、ただ段階化して相続される称号と実際に行うナナシ達という図式で、ちっとも医療が進歩しない。

 それが分かって過去を尊重するという気持ちはもうないの。


 やって来た人達や受験してくれた人達から選抜して新しい街やスタッフを自前で作ろうとしてる。

 元々基礎を与える仕組みがないんだから、いきなり難易度の高い試験に受かる様な人はそういう環境にいたんだろう。

 受かっていない人でも期待出来そうな人達をスカウトして、地元では(しがらみ)ありそうなので、僕の新しい村とかで開業させるつもり。

 実地に勝る修練はないってことで、なんちゃって医師だよ薬師だよとか経理・事務ができる気がするっていうのは駆逐したい。

 イイヒトを選別して良い街を作為的に作る。そうすれば良い仕事もできるってことで大家(おおや)でわがままな僕が強制的に事後選別もしていくという実験をね。するの。

 キラワレモノだし、そういうこともするだろうって認識は都合良いんだよ。

悪い評判を逆手にとって、お好みな人達だけにしていく。

近くにはみんなの憧れの(これから古都になる)首都がある。

才能を集めて自ら成長する街にしていきたい。

それに資格試験は都合良かったし、理由にもなった。

人集めって大変なんだよね。

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