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空気(ぼく)たちの町においで  作者: うえぽん
10章 秋になりました。
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071 おかえりごはん。*

海に人魚さん達いるかなあは、期待。

保護じゃなくて町を作ろうは、歓喜。

捨てられるのは、悲しいけど、予感。

僕を捨てた、アノ国のことを思い出す。


今日もありがと。

 弾む音が鳴った後に

「もうじき町が見えま〜す。降りる準備をしてくださ〜い」

 あの子の明るい声が流れてくる。

「大成功だよ。おみやげもいっぱいあるよ。人魚さんの町作ったよ。

 海キレイだったよ。笑って帰ろう・・・よ」


 そうかって、今頃。そう言えばって気がつく事が多い。心配するならス〜ちゃんのはずなのに、ずっと湖の人魚さん達のことを気にしていて、役目を与えたり、手伝いを頼んだりしていた。何度も一緒に帰ろうって言ってるのを聞いていたなあって。

 思えば、居なくなった勇者とその仲間は最初から(あきら)めているようだったし、小鬼ちゃんが見かけなくなって心配した人に「もう少し」というのは聞いていた。

 気になっていることや心配ごとでモヤモヤはしても、しばらくすると忘れていくのに、あの子は忘れていない。行動を起こすときはいつも急で驚くけど、後で聞くと気持ちが変わってから、すぐだってみんなが言う。本当に良く見ているなって感心した、はずなのに。その人達にとっては大変なことだけど、忘れていたモヤモヤがあったなあ、なんて。その程度。

 あの子は分かってた。人魚さん達の居場所が私たちの町になっていないってこと。もちろん、湖には無い。あの場所は家ではなかったから。どんな家でも楽しさや未来への希望を感じるものだけど、ただ食べて寝るだけのものの他が全く無いって感じだった。見つけたとき「遅い」なんて感情があって、不思議で誰にも言っていないけど、今なら分かる。人任せなのに人のせいにするところが勇者の取り巻き達みたいだとも。


 あの子は、私たちを守ろうとする。あんなに弱いのに。


 みんながウツウツとした雰囲気を()()らしながら、ノソノソと出てくると、お姉さんに「笑いなさい」って言われる。「私たちは希望なんだから」ってホッペをぎゅーっと挟まれる。見るとお姉さん達の中にホッペが赤くなっている人も。

「お疲れさまぁ」

 弾む声を聞いて、思わず抱きしめていた。目が真っ赤で涙で、ぐしょぐしょになっていたあの子がいたから。私たちのモヤモヤは怒っていたからだけど、この子は自分の頑張りが足りなかったって泣いている、自分が悪いって、また。

 前に「マイナスの防御だから」って言っていたのを思い出した。弱すぎて、反対に相手が謝るって話。じゃあやっぱり笑うしかない。周りもそう思ったようで、くらいモヤモヤは何処(どこ)かに吹き飛んでいった。


 手伝うって言うのをお断りして湖に1人で来た。奥の方の、海と辛さが同じ所。船の底を開いて、生きたままご一緒してもらった魚を開放する。海藻たちも置く。貝とかは狙って置いてみた。なんて、ほとんど妖精さんにお願いしてやってもらった。本当は人魚さん達とやりたかったこと。道具のえさ箱を設置して完成。網で仕切ったりはしない。海の魚が川に来ないように、塩が薄まる手前には来ない。行き来できる魚もいるので来てくれるのを楽しみにする。ふう、お買い物終了って小さい声で。

 ぼくの心配はよく当たる。何でもハイハイ言う人魚さん達の意識が町に無くて心配だったけど、やっぱりだった。仲間とも思われてないなあとも。かといって新しい町でもどうかなあと思う。ウチの町では人魚さん達は特別だし、嫌な顔もしないで従順なのが勇者のこともあって、凄く良いって言われてる。そうは言っても、やっぱり住みたいところに住むのが一番?なのかなあ。

 干からびていたから助けなきゃって町に来てもらったけど、迷惑だったかも知れない。海に連れて行ったのも、僕達にとっては、ス〜ちゃんがいるから必要の無いことだったけど、仲間になって家族を目指すなら明らかにしなきゃいけないって思った。だけど・・・

 大きな声でいっぱい泣いた。帰り道ずっと涙が止まらなかったけど、船のコントロールが忙しかった。静かな湖にポツンといて、思いっきり泣いて泣いて、帰り道ずっと考えていたことをやるって決めた。


 食堂に戻ってきて、お姉さん達に今日のメニューを説明する。持って来たおみやげ食材を切って洗って、なべにセットして、出汁だし入れるだけって、後でメンも使うのって言う。お役御免だって、ほっとしていたお留守番達に「がんばってねぇ」って言ってる。残りは仕舞(しま)っておくね。


 収穫は明日ね。市場イベントは月の日に早めるよって、お日様のお休みは、みんなで海に行くのって言うと、お姉さん達は悲しそうな顔をちょっとして「わかった」って言ってくれた。

 その後、採石場に言って予定変更のお知らせをする。人魚の町の話はもうみんな知っているらしく大喜びだった。なぜか銀が僕をぎゅっとする。


 食材棟にお知らせに行くとにらまれる。海行きが食材探しというのを知ってるからだと思うけど、作るのは人魚さん達って、人魚さんの町に行く話をすると大喜びだった。人魚さん達には、ちょっと先触れをして、ヒレ待ちをお願いしておこう。

 商材棟に行くと、いきなりみんなにぎゅっとされる、ムキムキにまで。イタタでぱかんとされている。なんでっていうと「泣きすぎて目が()れてる。全部聞いてるから」べ〜姉に言われてしまった。もう平気って言って、予定変更のお知らせ、じゃないお願いをする。変更で大変になるのはここなんだけど、コラ〜じゃなくて、いたわれてしまった。


 畑では、人魚さん達の町の話はまだ来ていなくて、変更の事を説明する。何か察してくれたみたいで、理由は聞かないでくれた。明日の収穫も大丈夫、お酒は大丈夫じゃないけど何とかするって言ってくれる。人魚さん達の町はステキだよ、楽しみにしてねって、お(いとま)した。お城でも噂はまだだった。小鬼ちゃんに目の事を言われそうになったので慌てて飛び出したよ。


 食堂に帰って来ると、イベント変更や明日の収穫のこと、お休みに人魚さん達の町に行くことが掲示されている。あの後、すぐに作ってくれたらしい。

 調理室では準備が終わっていて、調理の道具をテーブルに置いて、その上に鍋を置いてもらうようにお願いして、僕も運ぼうと持ってプルプルしているのを見て「いいから」って言われてしまった。


 大変そうな収穫があるけど、その後の人魚さん達の町行きが楽しみらしく、上機嫌な人が集まってくる。

 今日のは、テーブルで調理したいなあと思っていたのをやるの。海のものがいっぱいの海鮮のお鍋。あの海の街と違ってちゃんと出汁を引いた水炊き鍋。スープは盛られるものだから直接自分で取るというのは初めてだし、料理しない人が多いから、目の前というのも新鮮なこと。いや海鮮に掛けたわけじゃなく。


 テーブルの人数が揃ったところから、鍋のスイッチを入れていく。早くに来ていたテーブルから美味しい匂いが、ただよってくる。「もう良いよ」と言われてフタが開けられると、濃厚な香りがぶわっとくる。目に付くのは赤い棒?の変やつ。白いところを食べると言われて恐る恐るくわえてみる「ん〜〜めぇ!」と声を上げる。どれもウマイという。自然とノドが鳴る。そして、次々にフタが開けられて、鍋に突入する人達を見て戦ってるみたいなんて思って、料理の本に「鍋は戦場」って書いてあることを思い出す。本当だって思った。僕はこの後のためにお腹半分で止めておくの。


 どうせ追加を言われると思って、食材の追加分も見積もってある。シメのために、食事休憩中のお留守番隊が追加を入れに行く。ちゃんと何度も言ってるのにスープを飲みすぎて足りなくなっているところにカニの殻から取ったスープを少し足して回る。濃厚になってるから出汁を引いただけのじゃ薄く感じるかなって。

 お姉さん達から合図が出て、メンが投入される。待ってました! 何度言ってもスープを飲んじゃうところに足される。溶き卵を入れて、またフタを閉める。メンのお代わりは無いの、オマケ。

 魚介の濃厚出汁のメンが美味しい。メンのことは何度も言っていたのに、すっかり忘れていて「ムリ〜」とか言ってるのが結構いるけど、お腹パンパンでも何故(なぜ)か食べられるから大丈夫。別腹(べつばら)?に入れてね。


 人魚さん達は・・・楽しんでくれてる。でも、ここが家だっていうのは何年経っても思わないと思う。生まれ育った湖で思わないのにムリ。海の人魚さん達はここから出ていった人達じゃないかって気がする。

 だから居場所って思うかもというのは心配していて、そうなったなあ。でもね、安全な湖を出なかった人魚さんが厳しくって危険がいっぱいの海で生活してきた人達に付いていけるとは思わない。

 行き帰り調べていたけど、海よりずっと安全な河に人魚さんはいなかった。数も多かったでしょ。生きる力が凄い。だから救済じゃなくて、町を作ってもらった。かなり無茶なんだけど、上手くいくって思ってる。

 僕が悲しいって思ったのは、湖の人魚さん達みんなの将来が、楽しくなるって想像できないことなの。

 無視されるのは、いつものことだし、それで悲しいとは思わないよ。


 湖の人魚さん達は、とっても頼られていた。それで大丈夫って思っちゃった? でもたった7日分の違いなの。あっという間に埋まっちゃう。

 マズいなって思ったから、帰るよね?って何度も聞いていたの。たった1人でもいれば、これからどうしようが考えられるんだけど。ゼロに何を掛けてもゼロ。

 せめて思い出をって。お鍋って、家族のごはんって感じがするかな。思い出が残って欲しいなあって。湖の人魚さん達は僕と一緒の時はゴロゴロしているし。なぜか海も僕の町になってるから、お仕事を作ることは出来るんだけど、言われたことしかしない人が何がしたいなんて分からない。

 でも勇者もどき達とは違って、言われたことなら出来てるから良いのかな。狭い世界でループしてるんじゃ楽しくないと思うんだけど、出てこないし入らせてもくれない。


 なんか僕を心配してくれて、たくさん集まっている人達に気持ちを説明したの。大きな魚をさばきながらね。「解体ショーだよ」なんて笑いながら。黒いの付けて食べてね。塩でも美味しい、辛くするのもあるよって言いながら。でも大きいから残りは仕舞って、また明日。注文で獲ってもらった大きな魚は、知識で書いてあるより、ずっと美味しいね。もうじき、これに合うお酒が出来るからお楽しみに。


 明日の収穫は、やっぱり大変なんだけど、田植えの時みたいにイタタで町が止まっちゃう事は無いように考えたからたぶん。ゆ〜姉が夏の時みたいに上手く割り振ってくれるはず。

 ぼくの2つの町のみんなが幸せにって、ぼくはいっぱい願っているよ。

美味しいや楽しいは、幸せな記憶。

僕らが少しでも大切なものになりますように。

悪い気持ちが残りませんように。


では、またね。

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