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好みは人の自由

 アマリーは大きく背伸びをすると、ベッドから起き上がり朝の柔軟を行っていく。


 最近はセバスとの手合わせが過激になっているからか節々に痛みを感じ、アマリーは顔をしかめた。かなり年はいっているはずなのにいつまで経っても負けるばかりでため息が出る。やっと一本取れるようにはなってきたが、まだまだである。


「あのセバスから一本とれるのは、アマリーくらいだよ。」


 そう父からは褒めてもらったが、身内からの評価など甘々に決まっている。


 アマリーは身支度を整えると、父に挨拶を済ませ王城からの迎えの馬車へと足を向けた。


 あのお茶会の日から何度もアマリーはルルドやテイラーと打合せを行い、そしていよいよ今日が出立の日である。


 馬車の扉が開くと、中からハンスが姿を現した。


「アマリー。今日からよろしく頼むよ。では、行こうか。」


「こちらこそよろしくお願い致します。」


 馬車へと乗り込むと、中にはルルドもおり、アマリーはルルドとハンスと向かい合って座ることとなった。


 広めの馬車とはいえ、男性二人に視線を向けられるとなんともいえない居心地の悪さをアマリーは感じた。


 本当ならアマリーも馬に乗って駆けていきたいが令嬢としてそれは駄目だろうと侍女に注意され、うなだれたのであった。


「テイラー様は打ち合わせどおり馬で護衛ですか?」


 ハンスはにこやかに頷いた。


「あぁ。アマリーとは気が合わなさそうだから、丁度良かったな。」


 意地悪な言葉にアマリーは笑みを浮かべた。


「そんな事はございません。お話できなくて残念ですわ。」


「おや、アマリーはテイラーがお好みだったかな?」


 チラチラと視線をルルドに向けながらそう言うハンスの仕草の意図がわからず、アマリーは首を傾げた。


 そして思わずアマリーもハンスの視線につられてルルドを見つめると、ルルドの眉間に深いシワが寄っており一体何があったのだと疑問に思う。


「えぇっと?嫌いではありませんが、、、」


 そう言うとより一層眉間のシワが深くなる。


「ですが、好きではありませんね。」


 すっとシワが消える。


 何だろうかとアマリーは考えてから、そしてハッと思い至った。


 ルルドも、令嬢らの間で絶大な支持を得るハンスを見つめるテイラーの騎士姿が好きなファンクラブに入っているのではないだろうか。


 だから、アマリーにテイラーの話を振るハンスに苛立ったのではないだろうか。


 そうか。


 ルルドにはそんなミーハーな一面があったのかとアマリー吹き出しそうになるのを堪えた。きっと本人は真剣なはず。それを馬鹿には出来ないし、したくはない。好みは人の自由だ。


 その後も、ハンスがアマリーに話を振るたびにルルドの眉間にはシワが寄ったり消えたりと忙しく、アマリーは見ていてとても微笑ましい気持ちになったのであった。








 

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